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源氏物語ってこんな話だったんだ  作者: 紫月ふゆひ
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桐壺巻~光る君誕生~


『どの帝の御代であったか、多くの女御や更衣がお仕えしていた中に、極めて身分が高いというわけではないが、大変な御寵愛を受けている方がおられた。

 自分こそが帝の御寵愛を得るのだと思っていらした方々は、その方を目障りに思って蔑み妬んでいる。同じような身分や、さらに下の身分の更衣などは、尚更心穏やかではない。

 宮仕えの心労が積み重なったためか、その方は病弱になり、実家に下がることが多くなっていった。帝は一層不憫にお思いになり、誰が非難するのもお構いにならず、世間の語り草にもなるような処遇をなさるのだった。それはもう、公卿や殿上人も不快に思って目を逸らせるほどの、特別扱いである。

 唐の国もこのような事から世が乱れたのだと、次第に世間の声も苦々しいものになり、国を傾ける原因となった楊貴妃にも例えられるようになった。

 とてもいたたまれないことが多くあったのだが、帝の御配慮が類稀なほどであるのを頼みとして、宮仕えを続けていた。

 父の大納言は亡くなっていたが、母の北の方は古風で由緒ある家柄の人だったので、両親とも揃っていて勢いのある家の方々にも大して劣ることなく、様々な儀式を取り行っていた。しかし、しっかりした後見人がいないので、何かあるときは、やはり心細い様子である。』



よく、それほど身分が高くないと訳されていますが、お父さんは大納言です。

正三位相当だから上級貴族なんですよね。

『やむごとなき』は最上級で身分が高いの意味だそうで、『いとやむごとなき(きわ)』だと内親王級の身分の高さじゃないんですかね。

それにしても、お父さんが生きていたら、周囲の扱いも変わったんじゃないかなあ、と思うのですが・・・。



『前世でも御縁が深かったのであろうか。世にまたとなく美しい玉のような男御子までお生まれになった。

 帝は早く御子を見たいと待ち遠しくお思いになって、急いで宮中にお召しになった。御子は、滅多になく美しいお顔立ちである。


 一の皇子は、右大臣の姫である女御がお産みになったので、後見がしっかりしていて、間違いなく<(まうけ)の君>になるべき方だと、皆が大切にお仕えしている。しかし、弟君の美しさには並びようもなく、帝は、第一皇子に対しては相応にお思いになるだけで(第一皇子として大切にするだけで)、弟君の方をこの上もなく大切に思い、お育てになるのだった。


 その方は、初めから並の女官のように直接帝のお傍でお仕えするような身分ではなかった。世間からも尊敬され、高貴な方と思われていたのだが、帝が度を越してお傍に置かれるあまり、自然と軽い身分の人と見えるようになったのだ。管弦の遊びや行事の折には最初に参上させたり、朝まで寝過ごした時はそのままお傍に留め置かれたり、御前を去らないようになさっていたものだ。』



やっぱり。

元々は上級貴族として認識されていたんです。

おきさきたる者、居所にどんと構えているべきで、帝の側近くに常に控えているのは身分の低い女官の役目だったそうです。ところが、帝が片時も離したがらなかった為に、桐壺の更衣が身分の低い人のような感じになってしまったと。そうなると妬みもいや増すというものです。

桐壺の更衣の受難は、大部分帝に原因があるようです。皮肉ですね。愛するが故にその人を苦しめてしまうなんて。



『しかし、御子がお生まれになってからは、帝もご配慮なさって、その方のことを格別にお考えになるので、このままではこの御子が東宮になるのではないかと、第一皇子の母である女御はお疑いになった。

 女御は誰よりも先に入内し、帝が大切にお思いになるのも一通りではなく、皇女たちもいらっしゃるので、この方の意見だけは、煙たいながら無視も出来ないと、帝もお思いになっている。』



あ~、この女御の気持ちも分かりますね。自分のものと思っていた寵愛が、格下の人間に持っていかれてしまったんです。しかも、将来の皇位まで危うくなるなら、妬ましいどころの問題ではないですからね。


ところで、原文に『坊にもようせずはこの御子の居たまふべきなめり』というのが出てきます。

帝が第二皇子を「坊や坊や」と可愛がっているのを、女御が苦々しく見ている場面かと思いましたが、違いました。 

『坊』は『皇太子』のことだったんです。よく使われるのは、『東宮』や『春宮』ですよね。『儲の君』というのも皇太子のことだそうです。皇太子の家政一般を担う組織を『春宮坊』と言いますが、お世話される東宮(春宮)のことを『坊』とも言うようになったそうです。

・・・ちょっと省略しすぎではないですかね。分かりませんでしたよ。



『畏れ多い帝の御庇護を頼りとしているが、その方を(おとし)め粗探しをしようとする方は多い。自身は病弱で頼りない状態であり、なまじ御寵愛があるが故に思い悩んでいる。

 この方の御局は桐壺である。帝が多くの方々の御局を素通りなさって足しげくお通いになるので、他の方々がひどく感情的になるのも道理である。

 その方が帝の御前に参上するときも、あまり頻繁な時は、打橋・渡殿のあちこちにとんでもないことをして、送り迎えをする人の裾が耐え難く見苦しい状態になったこともある。

 また、通らなければならない馬道(めどう)の戸の鍵を閉めてしまい、あちらとこちらで示し合わせて困らせる、というようなことも多くあった。

 なにかにつけて苦しいことばかり増えて思い悩んでいたのを、帝はますます気の毒とお思いになり、後涼殿にいた更衣の部屋を他に移して、その方の控室とされた。追いやられた方の恨みは、尚のこと晴らしようがない。』



打橋は建物をつなぐ取り外し可能な橋のことで、渡殿は渡り廊下ですね。

『あやしきわざ』としか原文には書いてないですが、汚物などをまき散らしたらしいです。確かにそんな中をずりずりと十二単を引きずりながら歩いたら、ひどいことになるでしょうが・・・

それ、後で自分達も困りませんか?臭うし、自分達も使うとこでしょ?

掃除するのは下っ端だからいいんでしょうか?

もし帝の気が変わって、桐壺の更衣に来るように言ったけど、やっぱ自分が彼女のとこに行こ、って思ったらどうしたんでしょ。


それにしても帝・・・そりゃあ、一人だけに入れ込めばそうなりますよ。悪循環ですね。

一夫多妻制も大変です。どの妻も不満を持たないように配慮しなければならないんだから。



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