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源氏物語ってこんな話だったんだ  作者: 紫月ふゆひ
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帚木巻~雨夜の品定め・左馬頭の語り①~


『「成り上がったとしても、元が相応しい家柄でない者は、やはり世間の評価は上級の者とは違います。

また、元は高貴な家柄であっても、時勢に流されて評判が衰えてしまえば、気位は高くてもそれに見合うことが出来ず、見劣りするようになるので、それぞれ中級の身分におくべきでしょう。

 地方のことに関わっている受領(ずりょう)の中にも段階があって、中流の中には、そう悪くない女もいます。

 中途半端な上達部(かんだちめ)より、世の評判も生まれも悪くない非参議の四位連中が、ゆったりと余裕のあるふうに振る舞っているのは、とてもさっぱりしていて良いですよ。

 何不自由なく大切に育てられた娘などが、非難のしようもなく立派に成長することも数多くあるでしょう。そういう娘が宮仕えに出て、思いがけない良縁に恵まれる例なども多いのですよ。」

と言うと、光る君は、

「総じて、豊かであるかどうかということだな。」

と言って笑っている。』



古文て、主語が省略されていることが、かなりあります。なので、どれが誰のセリフか分からなくなることもあります。

冒頭のセリフも、訳によって頭中将だったり左馬頭だったりしました。それに対して誰かが「つまりはお金か。」という感想を言って、中将が「理解できないことを仰る。」と不機嫌になる、という流れになってます。

流れと敬語の使い方から言って、中将が得々と語ったことに対して光る君が茶化したので不機嫌になった、というところかと思います。

ここからは、左馬頭が延々と語るパートに入ります。頭中将も物知り顔に語っていましたが、どうやらこの人はより年長で経験豊富なようです。

ちなみに、馬寮(めりょう)は文字通り馬に関する役所です。各地から献上された馬の飼育と調教に当たり、左と右に分かれていました。左馬寮(さまりょう)のトップが左馬頭で、従五位上(じゅごいのじょう)相当でした。役所名は「さまりょう」なのに、役職名は「ひだりのうまのかみ」。長いので、「さまのかみ」でも良いでしょうか・・・?



『「上級の栄えている家の娘なのに、家の中での立ち居振る舞いが劣っているのは、残念に思われることでしょう。優れていても、それが当たり前と思われて、珍しいと興味を持つことはありません。

 私ごときが及ぶようなところではないので、最上級の身分については、おいておきます。

 世間に知られず、さびしく荒れた<(むぐら)の門>(草深い家)に、思いの外かわいらしい人が閉じ込められているようなのは、この上なく珍しく思うでしょう。予想外なところが、不思議と心が惹かれるのです。

 際立って欠点がないという方面の女性選びには及ばないでしょうが、それはそれなりの女として、捨てがたいものですな。」


(さあ、どうだろうか。上級の家柄でさえ、素晴らしい女は滅多にいないというのに。)

と光る君は思っているようだ。

 わざと衣装を着崩して物に寄りかかっている姿が燈火に映し出されて、たいそう美しい。この君の為には上の上の女を選び出しても、なお足らないように見える。


「通り一遍の仲として付き合っている分には問題なくても、妻として頼みにできる女を選ぶとなると、なかなか決めることができないものですな。

 男だって、朝廷の重鎮となるべき方の中で、本当に器量のある人物を選び出すとなると、難しいものですよ。しかし、どんなに賢くても一人二人で世の中を統治できるわけではないので、融通しあうのです。

 ところが、狭い家の中の主とすべき人となると、不十分では困ることが多くあります。ここが良ければあちらが悪いという具合で、完璧ではなくても女主人が務まるという人は少ないのです。どうせなら、欠点を直そうと頑張る必要がなく、意に適うような相手はいないものか、と選り好みすると、なかなか相手が決められないということでしょう。

 理想通りではなくても、夫婦になった契りだけを捨てがたく思って留まっている男は誠実に見えるし、捨てられないでいる女についても、奥ゆかしい人だろうと推測されるのです。

 しかし、どうでしょうなあ。夫婦間の有様を色々と拝見するにつけて、想像以上に心引かれるという例はありませんね。

 まして若君たちの、最上の人をというお選びには、どれほどの人がお目に適うでしょう。」』



中将くんに比べると、人生経験が長い分、現実的な話になってきました。

恋愛対象と結婚相手の基準は違う、とは現代でも聞く話です。

中将くんの関心は、理想の女とは、であって、夫婦の姿、ではありませんでしたもんね。

もっとも中将くんの正室は、政治的な理由で与えられた人なので、妻として相応しいかどうか考えたことなかったかもしれません。



『「容貌がそこそこ良く、まだ若くて、少しの欠点もないようにと振る舞い、手紙を書いてもおっとりした言葉を選び、墨のつき具合も淡く気がかりに思わせて、もう一度はっきりと逢いたいと待ち遠しく感じさせ、わずかに声を聞く程度に言い寄っても、かぼそい声で言葉少ないのが、たいそうよく欠点を隠すものですよ。

 物柔らかで女らしいと思って付き合ったら、度を越えて情愛に傾くので、調子を合わせると色っぽく振る舞う。

 これを女の難しさの第一とすべきでしょう。」』



ここは現代語訳の読解が難しいとこでした。

何の話か分かりますか?

か弱そうで守ってあげたい!と思ったら実は演技していただけ、ということもあるよ。という話だと私は理解しました。

これはいつの時代にもありそうです。



『「何よりも疎かにできない夫の世話については、過度に情緒の方面に進まなくても良かろうと思えますが、かといって実用的な方向に偏って、美しくつくろうこともしない主婦が、ひたすら所帯じみた世話ばかりしているのも。

 朝夕の出勤や帰宅の時、公私にかかわらず、他人の挙動や見聞きしたことを、理解してくれそうな妻と語り合いたいものですよ。つい微笑んだり涙ぐんだり、あるいは無性に腹が立ち、自分ひとりでは思案に余ることなどが多いのですが、理解のない妻には話す甲斐もなく、ついそっぽを向いてしまいます。」』



現代で言うならば、オシャレや趣味にばかり時間を費やしているのもなんだけど、全く洒落っ気もなく身なりも構わず所帯じみた感じになっているのもちょっとね。てことですね。

自分のことを後回しにして家族の世話を焼いている女性陣がブチ切れそうな意見です。

まあ、これは貴族の話。裁縫くらいはするけれど、掃除洗濯炊事も育児も使用人がやります。監督はしなければならないけれど、しっかりお化粧をして髪の手入れをしてゆったり微笑むくらいは出来るんです、きっと。

後半は、現代なら妻側の不満として聞こえてきそうな意見ですね。



『「ただひたすらに子供っぽく柔和な人を、あれこれ欠点を直したなら、妻としないではいられないでしょう。頼りなくても、直し甲斐のあることでしょう。

 まあ、一緒にいる間は、欠点があっても可愛らしいと許すことも出来ます。ですが、離れたところにいて、しかるべき用事を頼んだ時や、その時々にすべき仕事について、自分で決めることができず、深いところまで思慮が至らないのはとても残念で、そのような欠点があるのはやはり不都合でしょう。

 いつもはよそよそしく、好きになれない女が、何かの折に人前に出ると見映えするというようなことも、ありますからねえ。」

など、隙のない論客も、結論を決めかねてたいそう嘆く。』



・・・何言ってんでしょう?

守ってあげたい彼女は、妻としては頼りないと、そこはなんとなく分かるけど。

直し甲斐があると言ったり、やっぱり困ると言ったり。

勝手に嘆いててもらいましょう。



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