最終話 首が長いのはなぜでしょう
この先、人間が宇宙に進出していって、宇宙に町を作るとしたら、そこにはやっぱり道路や橋や下水道が必要で、宇宙には土木の需要があるんじゃないかな。その少し延長上の話、小惑星を集めて星を作るというプロジェクトがあったら、土木作業員の出番なんじゃないかな?もちろん宇宙で作業するための特殊な訓練を積んだ『宇宙土木作業員』だ。
剛君は、スーパーアースへ行くのは難しいけど、近くの火星は寒い。それなら、火星よりちょっとだけ近くに新しい星を作ってみるという作戦を考え付いたんだ。
『無いものは作ればいい』
剛君のお父さんの一言と
友達の案を少しずつ組み合わせて
スペースシャトルで11光年は遠いけど、火星の先までなら行けるかも?
火星は寒いけど火星よりちょっと近ければ寒さも和らぐかも?
地球は動かせないけど小惑星なら動かせるかも?
こうして『セカンドアース計画』は思いついたんだ。
そこで、今日の剛君は、より具体的なことを調べ始めたんだ。
小惑星は何でできているんだろう?地球によく似た星を作れるのかな?
小惑星はどれくらいの大きさなんだろう?本当に持ち帰れるのかな?
小惑星は何個くらいあるんだろう?地球を作るのに足りるのかな?
・・・で、完全に行き詰ってしまった。
「あぁぁぁ・・・」
剛君は科学食堂で頭を抱えていた。
「大丈夫?ソシャゲのガチャが全部外れだったのね。元気出して!カルシウム定食でも食べる?」
お母さんは、ほんの少しだけ心配そうにそう言った。
「いや全然違うよ!カルシウムは食べるけど・・・」
剛君は元気なくそう答えた。
なんと、火星と木星の間に、ものすごくたくさんある小惑星だが、全部集めても月より小さい量しかないことが分かってしまったのだ。
「やっぱ小学生が思いつくようなことでは、地球の未来を救うことなんて、できないのかなぁ」
「そんなことないわよ!どんな偉い学者だって、たくさん失敗してきているのよ。ただ、そこで諦めなかっただけ」
キッチンからカルシウムを炒めながらお母さんが答えた。
元気の出ない剛君へお母さんは、
『失敗ではない。うまくいかない一万通りの方法を発見したのだ』
発明王エジソンの残した名言だ。
「エジソンは一万回失敗しても諦めなかったらしいわよ。あなたはあと何回失敗できる?心配しなくてもタニストロフェウスは逃げたりしない。首をなが~くしてあなたが復活させてくれるのを待っているわよ。おっと、タニストロフェウスの首をこれ以上長くしたら、物理学者に怒られてしまうわね?」
お母さんは笑いながらそう言った。
・・・そうか、タニストロフェウスの首を長くしてしまったのは、もしかしたら僕だったのかもしれないな。
笑う
終
科学が大好きな少年、剛君の物語は、いったんここで終了です。
この作品は、星新一賞の落選作品なので、
文字数制限があったので、ここまでなのですが、
また、何か思いついたら、その時はもう一度 一緒に科学してみたいなぁと思います。
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