第七話 セカンドアース計画
「本艦はこれより、小惑星群の周回軌道上へ侵入する。ここで今回の目的である『セカンドアース計画』の内容を再確認する」
現場監督らしき男が作業員達の前で作戦を読み上げる。
「セカンドアース計画とは、火星と木星の間にある小惑星を全て回収し、地球方面へ向けて射出する。地球と火星の間で衝突させ新たな惑星を誕生させるというものだ。本艦はこれより小惑星の回収と射出作業に取り掛かる。宇宙での作業は危険を伴う。各員心してかかるように!」
監督の合図とともに宇宙船から作業用小型艇が次々と発進する。
「ツヨシ=シナガワ スペースシャベル 出ます!!!」
作業員たちは流れてくる小惑星に穴をあけ、『ホーミングユニット』を設置する。あとは地球方面へ向けて少し軌道をずらしてやれば、設置したユニットが自動で地球と火星の間へ向かって小惑星を誘導してくれる。
流れてくる小惑星群は次々と地球方面へ向けて射出されていった。
「監督!!!想定よりはるかに大きな小惑星が接近しています!このままでは数分後に接触します!!!」
「・・・馬鹿な。こんなにでかいヤツがこの空域にあるはずがない!総員退避しろ!」
地球からも母艦からも何度も観測を繰り返していたというのに、現場というのはいつも行ってみないと分からないことが起こる。
「おい!タカシ!退避命令が出ているぞ!急げ!」
「馬鹿野郎!退避なんてする訳ないだろ!もし俺がこのデカブツを処理できたらどうだ?間違いなくお手柄だ!臨時ボーナス間違いなしだろ!」
「違う!命令違反だ!今すぐ退避しなければお前は処罰の対象になるだけだ!余計な事考えてないで引くぞ!!!」
「悪いな、先に帰っててくれ!そうだな、ビールでも冷やしといてくれ!俺のお手柄を祝うためのな」
「おい!馬鹿!行くな!今すぐ戻れ!」
・・・おいおい!なんつうデカさだ。こいつぁホーミングユニット10発は埋め込んでやらないとダメかもなぁ。
「おい!タカシ!帰るぞ!」
「ん?ツヨシか、追ってきたんならしょうがねぇ。お前にも手柄を分けてやるよ。こいつにホーミングユニット10発ぶち込むぞ!」
「よし、思ったより楽勝だったな。さて、それじゃユニットを起動するぞ」
「ん?おい!待て!ユニットの切り離しが終わってないぞ!」
「え?・・・まずぃ・・・うわぁぁぁぁぁぁ」
タカシと呼ばれていた作業員は、ホーミングユニットとスペースシャベルの切り離しが完了していないままユニットを起動させたため、小惑星と共に地球へ向かって引きずられ始めた。
「おい!冷静になれ!まだ間に合う!ユニットを切り離せ!!!」
『ツヨシ=シナガワ作業員、直ちに退避せよ。命令違反は厳罰ですよ』
母艦から通信があった。
「待ってください!事故です!仲間が地球へ向かって流されています!救出してから戻ります!」
『命令違反は認められません。退避してください。』
「だから!戻れないって言ってんだろ!!!」
『ツヨシ!私だ』
「監督?命令違反をしてすいません。すぐ戻るんで少しだけ待ってください」
『駄目だ、残念だが、スペースシャベルではホーミングユニットの機動力には追い付けない。・・・残念だが』
「そ、そんなぁ・・・ タカシィィィィィィ!!!!!」
・・・というところで目が覚める。
はぁ、はぁ、夢か・・・。
剛君は宇宙のことを考えながら眠ったため、ちょっとSFな夢を見ていたみたいだね。
夢でよかったね。