ゆいこのトライアングルレッスンJ 〜ひろしのJ〜
『小説家になろうラジオ』より
子供の頃、ひろしとたくみというイケメン二人が塾に迎えに来てくれるという妄想をしていた巽さんに、恋愛小説のような胸キュンの三角関係を味わわせてあげようという企画…にて、投稿したものです。
俺は、たくみとゆいこが並んで歩く、少し後ろをいつも歩いている。
2人が両想いなのは感じとれていたからだ。
2人の手が、触れるか触れないかの距離で、もどかしそうに見える。
でも俺は、ゆいこが幸せならそれでいい。
いつかこんな日が来るんじゃないかって、予想できなかったわけでもない。
きっと、たくみはゆいこを好きになり、ゆいこもたくみを好きになる。
そんなの、初めから分かっていたことだ。
そんなある日。
「はぁ? マフラーを落とした?」
「そう! で、問い合わせしたら、終点の駅で保管されてたのよ! だから、取りに行くの一緒についてきてほしいの!」
「ひろし、ついて行ってやれよ」
「は、何で俺が?」
急に2人の会話に、俺が加えられた。
「そういうのは、なんていうか、ひろしの役目だろ?」
「意味わかんねー」
結局、俺がゆいこに付きそうこととなった。
学校の帰り、電車に乗り込み終点を目指す。
ゆいこは無事にマフラーを受け取ると、嬉しそうに巻いた。
帰りの電車の中、不意に俺の肩にゆいこの髪が触れた。
「ゆいこ?」
よほど疲れていたのだろうか、ゆいこは俺の隣でコクコクと居眠りをはじめた。
まったく、無防備にも程がある。
外はすっかり暗くなっていて、向かいの窓は、ゆいこと俺が寄り添う姿を映し出している。
このまま、永遠に着かなきゃいいのに。
「なんでゆいこの隣は、俺じゃねぇんだよ」
俺は思わず、想いを口に出してしまっていた。
柄でもねぇ。何、嫉妬してんだ、俺。
永遠なんてものはなく、俺達を乗せた電車はもとの場所へと戻ってきた。
「くしゅん」
帰り道、ゆいこがくしゃみをした。
「マフラーの次は、手袋を忘れたのか?」
「うるさいなぁ。今日はマフラーのことで頭がいっぱいだったの!」
俺はゆいこの手を握ると、そのまま自分のポケットの中にしまった。
ゆいこは何も言わなかったが、ポケットの中で、ギュッと握り返すのが分かった。
季節が冬でよかった。俺はそう思った。
ゆいこのJ、たくみのJも、載せていきます。