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硝子玉  作者: たくひあい
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俺と彼女が魔王と勇者で生徒会長



――町では在日韓国人、朝鮮人の殺人が起きている。

 そんなニュースを聞きながら、ボクは朝御飯を食べていた。

いつの間にか在日の人たちについての説明に移っている。

昔から残る職業差別により、自由業、または単純労働者が多いらしい。

差別は画面を見る限り結構悲惨なんだなーと特に驚くわけでもなくボクは感じた。



……ボクらともちろん完全に同じでは無いだろうけれど、


その国の血があったって若いとか力がある国の子どもは同じく目をつけられ、単なる年寄りの養分になる場所だ。


近所にすむ、太田さんというおばあさんもせちがらい世の中だとよく言っていた。

韓国に知り合いがいるからと、よく韓国のりをくれる人。韓国の太田食品というところもあるらしいけど……

関係があるだろうか?

まだ聞けていない。



 結局は、若者がよく揶揄して老害とか呼ぶように、昔ながらの大人が古い時代にしがみついてる結果の巻き添えな気がする。


差別はいけませんと習うこどもたち。

けれど、大人は差別してる。これが現代の矛盾なのだろう。


だから若い子たちも、在日の人と同じといかなくとも排除されてるよと、もっと誰かが言えば良いのに……


画面に映った、日本の若者が在日の人を追いかけている絵を見ながら、結局、敵はもっと上だよ、と思った。



予定の時間になり、バタートーストをかじりながらボクは電話をかけた。


「やあ、永久欠番」


ボクが言うと、そいつはケタケタ笑った。


「お前、死んだことになってるよ」


そいつは、その方が都合が良いと笑った。

背後から刺しに行けるし、と。


「背後からって……犯罪はするなよ? クマ」


「今! トリサン! ヤーマエ、テル、ク」


「ん?」


「メリルイッキウルスッセタメイア」



「はぁ」


「ルクイム、メウセテイールス、カアメリキアスウリュステワァフルゥセンデアラッドクルフ」


「……トースト、うまい」

「リカルド、マステユァルクスイ」


「うん」


「五時をしめすだろう、五時を、午後五時をしめす」

「そうなんだ」


「太陽が、太陽が南、せいがくサンド、ナナテンハチ」


「なあ、クマ、おはよう、って言ってよ」


「光が追い付いていません」



「おはよう、クマ」


「シンショ、ショウニュウ、エイレツ、ゲツザン、サンショ、ウ、ヒガシ、ヨリテ、テンヲサシ、シメシ、ソヲカリテ、ミタマニツゲウシ、キンシホイテ、イニテイブシ、クスノネヲ、オトヲモチイテ、トメシ」


クマがなにか唱える間にボクは、二枚目のトーストを焼きに行く。

今日はもう少し話せるだろうか?

とりあえず、太田のおばあさんのくれた韓国のりをトッピングしてみた……

マヨネーズかけたら辛いかな??


「カワノシニテイギョクヲウメ、ギョクガコヘ、カガミヲウチワリソヲナヲムスビテチヲナガシ、ミヤム」



 もちろん、ボクは拒否魔なので、会話を拒否して切っても良かった。

クマは変な部分で精神的に自立してるのか、ちょっと避けたくらいでは騒がない。


携帯が出始めた頃の懐かしい話に、数分後に着信がないとキレるという若者が話題になっていたけれど……


今は、既読スルーで殺人が起きる時代。




「まっ、するけどね」


あほらしい。

自分の存在をちょこっと否定されたくらいで、人を殺めたくなってしまうタイプは恐ろしいから、拒否していい気もする。

「おーい、切るぞー、忘れたのかボクは拒否魔だぞ」


以下、ボクの翻訳。





「おはよ」


……。

意外と、まともな返事が、来た。


「おはようございます」


「最近事件かなんかあったー?」


「別にないかな、あまり。踊君が、愉快な死に方したくらい」


「拒否魔ってなに?」


「拒否したくらいで、根に持つ人が呼んでるワード。面白いから流行らせようと思って」


「あんたも好きねえのねん」

なんだその語尾。








「あ、そうだお前がやりたがってた『天使と偽物』しよう」


 天使と偽物は、今大人気のゲームだった。

昔のもののリメイクだが、それが味があるとかで売れている。


「天使と偽物! やる!」

「じゃあ、あとで病院に行くから」


なんかボクが病院に行くみたいだな……

あれ?あってる?


クマは楽しそうにキャッキャッとはしゃいだ。

ボクは電源をきった。






――ごみを拾い集めていたおじいさんは言いました。


「俺と彼女が、魔王と勇者で生徒会長だった頃の話をしても良いぞ……

なんせじいさんの青春話は非売品だからな」


――おじいさんは言いました。


だから俺と彼女が魔王と勇者で生徒会長 だった話を好きにしても構わないのだ、と。


俺 たちが、ごみにされたみたいに。

これは大きな発見でした。


売ってないが、広く世間に出たから使って良い、は法整備されていないまま。


つまり、売ってなくて潰された疑惑があるものは今のうちなら使い放題だということ。

これを覆すことは、俺たちに頭を下げることです。


『ごみに権利などない』


ただし。有名なごみは、売れる。


鉛筆であっても、名前であっても。権利を販売すれば金になる、それで生計が立てられる、とおじいさんはいいました。



それは、仮想の通貨として、自由に使えるものにされて、世の中につかわれるそうです。

あ。

タイトルは、なんでもいいのです。

これも例え、です。


こういうものが『会話のプロ側』にあるという点をおじいさんは語りました。

 生活にも精神にも責任がとれない以上、フリー素材配布は存分に使わなくてはなりませんから、きっと奪い合いになるのでしょうね。


おじいさんは、箒を手ににっこり微笑みました。


「おいで。おいしい料理を振る舞ってあげよう」



 しかし、彼の口からその武勇伝が語られることは、なかったのでした。






 プロ同士のごみを、使わなかったものこそ、漁れば、解決するのではないか。

ボツ作なんかいっぱいあるだろうし、まだまだ潰されたものがあるはず。

その考えは、今も俺のなかになにかを残しているような気がします。



 俺たちを捨て、俺たちから探す世界のことが一番不思議でなりません。自分たちで探り会えば、苦労もわかちあえるでしょうに。


 どこかの国では、魚を稚魚から捕獲してしまうのでなかなか日本に来ないとありましたが、学校の就職率100パーセントだってそう。


『それ以外』の犠牲が裏にどれだけ居たかは数ではないのですから。



誰だって生きている人、を数えている。



それは、ニュースも世間も教えないこと。


幸運のおかげで、生きている。

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