introduction.
潮騒。
夏の終わりの白い太陽。
コンクリートの浜辺に浮かぶ、小山のような宇宙艦。
外宇宙探査艦、プレジデント・オバマの威容を前に、遥日奏歌は立ち止まっている。
この2週間のあいだに、自分の身の回りでアッと言う間に決まってしまった数々の物事。まるで夢の中の出来事のような、現実味のない…しかし。
視界に拡がる港の光景。先日の戦闘の傷痕がそこかしこに痛々しく残っている。その事実が、ハルカにこれが紛れもない現実であることを認識させる。
「たしかにお母さん、『進路について少しは考えなさい』って言ったけどねえ。」
「帰ってきていきなり、就職決まった!宇宙行ってくる!って。アンタねえ…、もうちょっとこう、加減というか。まあ。奏歌が極端なのは昔からだから、お母さんもう諦めてるけど…。」
大丈夫なの?呆れたような。それでいて、無茶な自分を心配してくれている、「お母さん」の声がハルカの耳元に甦る。
「(大丈夫!…なのかなあ?)」
黒く巨大な宇宙艦を前に。対比としてあまりに頼りない、ごく普通、若干胸の少ない制服女子高生。ハルカの足は先ほどから、その一歩目を踏み出せずにいる。
当たり前であった日常に突如訪れた、非日常。これからはそれが日常となる、未知の世界。迷いを振り払うように、ハルカは左右に首を振る。
「(決めたんだ!!)」
ハルカが俯いていた顔を上げる。迷いが吹っ切れた、とは言い難い。不安と期待、希望と躊躇。その半々の表情を浮かべながら、制服の美少女。遥日奏歌はそれでも、その一歩目を精一杯に踏み出す。
自分を励ますかのように。今朝、家を出るときと同じ言葉を、ハルカはひとり声高に叫んだ。
「大丈夫!行ってきます!」




