intermission.
朝の駅前広場にざわめく人々。通勤ラッシュの時間帯。慌ただしい朝の光景は、遥か未来。宇宙時代の地球においても、遠く離れた氷の惑星・ペンタゴン星においても、変わらず同じものである。異なる点があるとすれば。朝の駅前広場にざわめいているのが眼鏡に背広のサラリーマンではなく、よたよたと歩く人鳥…鳥人たちだということくらいのものだ。
「まったくよぉ…集まんのかね?コレ。」
白い氷に包まれたペンタゴン星にあってなお、必要以上に寒そうなチアガール衣装に身を包み。その健康的なよく日に焼けた褐色の肌を冷気に晒しながら、タツミ・ウシトラゥは広告の1枚に目を落とす。
『暮しゅうしています。』
力強い黒マジックの手書きで書かれた懃太い文字。この広告を書いた人物の人となりをそれだけで余すことなく表現するかのような文面に、タツミは軽い目眩を覚える。
「漢字間違ってるし。てか、『募』より『集』の方が簡単じゃねーか?中途半端な漢字の使い方にバカのリアリティがあって逆に怖いわ。」
ぶつぶつと文句を垂れるタツミ。ふと、自分に向けられている視線に気づいて目を上げる。
「…何だよ?」
不思議そうな顔で自分を見ているハルカ。タツミは直感的に、このド新人の部下がろくでもないことを言い出すのを察している。
「隊長どのって、漢字、読めるのでありますか?」
いかにも意外であると言いたげにハルカは首を傾げて見せる。成る程、褐色の肌に灰色の髪。筋肉の凹凸の激しい引き締まった身体、反して大きく突き出たバスト。スリランカ人のタツミの外見からは、確かにパッと見て漢字の間違いを指摘できそうな要素が何一つとして見当たらない。決して、ハルカが上司であるタツミをバカだと思っていたから出てきた質問ではないのだ。
「祖父が日本人なんだよ。タツミ、って名前もじーちゃんがつけた。日本語なんだろ?タツミ。…ていうか。普通にいつも日本語喋ってんじゃん、私も、シホも、少佐も。」
ハルカの疑問点を把握したタツミは返答しつつ、やれやれといった様子で頭を掻く。その無造作な仕草に生地の少ない衣装が引っ張られ、突き出たバストを大きく歪める。
「あ、いえ。シホさんやイソジニールさんは漢字とか読めても普通というか。隊長どのはなんだか…、けっこう、意外でありました!!」
悪気のまったくない笑顔を向けてくるハルカ。ペンギンやゴリラですら漢字を読んで理解しているオバマ乗員の中にあって、ハルカの脳内のタツミ像は一体どのようなものになっているのか。いろいろと察せられる発言である。
「(時々普通に失礼だよなコイツ。)」
タツミはひきつった笑みを顔に浮かべた。




