--- オワリ ---
たくさん泣いて、ようやくすっきりした。
またシドに甘えてしまった。
シドの雰囲気がアレイさんに似ているせいだろうか、とても甘えやすいのは事実だった。
「ありがと、シド。ちょっと落ち着いた」
「いえ、私に出来る事でしたら」
シドはさらりと藍色の髪を揺らした。
心が折れそうになった時、国境を越える時。
シドはずっとおれを助けてくれた。
「シドがいてくれてよかった。ありがとう」
そう言うと、シドは少し驚いたような顔をしたが、すぐ、嬉しそうに笑った。
こうして笑顔を見ると、シドがまだ10代なのだという事を思い出す。
「その言葉だけで、私は救われます。あの時戦場でなにも出来なかった私ですが、少しでも貴方のお役にたてるなら、ただそれだけでいい」
このヒトは本当に、心根の底から騎士なんだな。
そう思うと、自然に笑えた。
「本当にありがとう」
もう一度そう言ってから、おれは立ちあがった。
左手は動く。
痛みは残っているが、何度も悪魔を召喚したことで傷の治りがかなり速い。もう何日もしないうちに傷はふさがってしまうだろう。
「よし」
「お怪我はもういいのですか?」
「うん、おれはもう平気だ。シドは?」
「私もかなり回復しています……動いたら命はない、と主治医に脅されていますから」
「ほんとだよ! シドはすぐ無茶するんだから!」
「貴方にそれを言う資格はありません」
すぱりと切り捨てたシドに、返す言葉がない。
唇を尖らせていると、こんこん、とドアがノックされた。
「はい、どうぞ」
シドが答えると、扉の向こうからヤコブが姿を現した。
その後ろからアウラとルゥナー、そしてモーリ。
「どうだ? 頭は冷えたか?」
ヤコブがにやにやと笑いながら聞いてくる。
「ん、もうだいじょうぶ」
自然に笑い返す事の出来た自分に驚く。
確かに、あのままじゃヤコブの話を冷静に聞く事なんて不可能だっただろう。
「じゃ、作戦会議と行くか」
すでに外は夕日が指している。
「こっからは長くなるぜ、そこの怪我人は大丈夫か?」
「私は大丈夫です」
シドははっきり答えた。
「よし、じゃあ始めるか」
ヤコブがさらりと金髪をかき上げた。
深紅の瞳が夕日を灯して輝いた。
「作戦会議だ」
大丈夫。俺は、俺だけはお前の傍からいなくなったりしない。ずっとここにいる。忘れもしないし、死んだりもしない。隣にいて、一番に助けてやる。もし、お前が嫌がったとしても放さない――何度も彼が繰り返す誓いは決して嘘じゃないことをおれは知っている。
でも、今回だけはおれが会いに行くよ。
嫌がっても離れたくないのは、おれだって一緒なんだから。
真っ白な軍神アレスの居城は、夕日を反射して燃えるように赤く輝いていた。
あの場所に、アレイさんがいる。
いつも自分を盾にして、おれを守ってくれるあのヒトを、今度はおれが迎えに行くよ。
だから、待っていて――
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
まだぜんぜん話終わってませんが……orz
再会は、次章「ASCENDANT PRELUDE -head-」に持ち越しです。
先に-tail-を完結させてから執筆に入るので、始まるのは夏くらいになると思います。
本当に長い話ですが、気が向いたらつきあってやってください(笑
あ、ブログ(http://lostcoin.blog.shinobi.jp/)でキャラの人気投票やってるので、気が向いたらどうぞ。パソコン限定です。
今のところアレイさんが独走状態……orz ナゼダ
8月いっぱいでおしまいにしようと思います。
あまりにもぶっちぎったら、何か考えようかな……汗
ではでは、また次章でお会いしましょうノシ
2010.6.27 早村友裕