王伝編集官 7話
「んまぁ なんてかわいいの!」
「あ ありがとうございます 王妃さま」
「わたくし なんにも不満はありませんが、これを見ちゃったら我慢できませんわ」
サフィのドレスを少女のように目を輝かせてあちこち触っていたが、ちらりと王子2人を見てため息をついた。隣室で着付けを終えて控室で待とうとしたら王妃様も着いてきてしまったのだ。背後には大先輩のアメリアさんがいる。王伝編集部ではいつ王妃様や王女様がご誕生されてもいいように人材は確保してある。気苦労なく重責をこなせるよう侍女スキルも高い。なので公務中でない今は当然放置。仕方なくレイ王子が王妃様の手を取り促す。
「母上 まだ身支度が終わってませんよ」
「あら まぁ大変、それじゃぁ後でね。ところでレイ あなた気になるご令嬢とかいらっしゃらないの?」
・・・そのまま隣室に着いていった。気をそらすのと愚痴を聞くのとを引き受けてくれたのだ。いきなり大勢の前で賛辞を浴びるより王妃様と支度をして慣れてもらおうとのこと。ご苦労様です。これで支度が済むまでしばらく休憩できそうだ。そう思っていたら、ラディはサフィの手を取り部屋の中央まで連れていく。
「少しステップの確認をしようか。ダンスといっても母上の添え物だから1曲でいい」
「気が乗らないなぁ。マナーの授業は仕方なく取っただけなんだし」
「ほらこれでも食べて。終わったら全部食べていいよ。始まったら食べる時間ないから。」
そう言ってメイリアの新作プティフールをサフィの口に収めた。口をもぐもぐとお上品ではないが幸せそうな笑顔になったので問題ない。ダンスとは表情も大事。何も考えなくてもラディが誘導する方に足が勝手についていく。数回くるくる回っただけで終了する。サフィがうきうきと食べだすのをリノは複雑な顔で見つめる。ドレスや他の身に着けているものが気になってしかたないから。
(他の人にはわからなくても僕はラディ王子と「共有」してるから・・あれいいのかなぁ)
今のサフィの全身像はというと。ドレスは表面上王妃様のと同じ機能、魔力を少し通すだけできらきら輝く。デザインは前は膝丈で後ろにいくほど裾が長くなっている。背中は大きなリボンがアクセントになっている。髪型はサイドを編み込みにしふわっとアップにしている。ここまではいい。今日身につけたものはサフィ用に仕立ててあるのでパーティ終了後はサフィのものになる。ラディはこのことを利用して様々な効果を混ぜ込んだのだ。本人に内緒でこっそりと。
(ドレスには全属性攻撃無効化、髪をまとめているリボンには状態異常無効化だし、靴にも浮遊効果かぁ)
その上ペンダントトップがひどい。魔力を通すとロッドになる。完成時に見たが金属製なのにやたら軽い。宝石で飾り立てているが全部本物。ドレス本体以外の素材はラディが全部捕ってきたと言っていた。国庫は使ってなく、加工費も後で作るレプリカを売ることで回収可。どこにも隙がない。
(でも魔法攻撃力+極大って、どこの世界の魔王倒しに行くんだろう。この世界にいないし)
「そのペンダントはね、大きくして振ったら効果音と閃光出るから。舞台の小道具用に宣伝頼むね。」
「へー おもしろいね。ちょっとポーズとかしたらいいのかな」
だれも知らない最終装備が誕生したのでした。
魔〇少女・・気のせいですよ きっと。