王伝編集官 白紙の創伝 ①
空を覆いつくすは万を超える異形の存在。絶望と言えば立っていられないだろう。振り返り共に過ごした者達に希望と名付ければ涙が止まらなくなるだろう。そんな名前は今は必要ない。信じるという言葉もいらない。互いに見つめ合い頷く。それだけでいい。皆が武器を手に、8つの色彩が異なる大いなる味方は咆哮を上げる。それを合図に最前列の人物は武器を掲げ確信を伴う宣誓を告げる。
「明日を得るために!」
遡るのはほんの一呼吸なのか、それとも何度も花が散るのを見送った年月か。木々は若く生き物は生気に満ちていた。誰もがその先を疑わずに過ごせていた。森は明るく彼らを迎えた。
「彼の方はお発ちになられましたか?」
「いえ まもなくでしょう」
「リダさま そろそろお戻りください。 お腹の御子に障りましょう」
「ええ わかりました」
名残り惜し気に立ち去る。その場にはたくさんの花が供えられていた。豊かな森に似合わない巨大な穴。
その大きさは湖ほどもあり、その深さは底が見えない。それでも大切な方との繋がりなので穴の淵に石碑を置いた。それが記録の始まり。
時は過ぎ、幼子がようやく立ち歩きできた頃、兆しが表れた。大地が震えだし、大気は恐怖を運んできた。何も見えない穴の底から空を目指し現れたのは漆黒の塊。目を凝らせばそれがおびただしい数の生き物だとわかる。動くという1点のみでしか納得できないが、それらは今まで見たこともない姿だった。手をだらりと下げ、人と似た形はしてるが直視していると寒気がしてくる。なによりその目は友好的とはまったく思えない。事前に知らされ準備ができていても対峙したくない。幼子を抱いた女性は不安な顔で告げる。
「どうか・・どうか皆様無事に戻ってください。レミオス、皆を頼みます。」
「それが私の使命です。どうか我らに任せてお下がりください」
「そうそう 俺らに任せてくださいって。なぁ レミオス。 お いらっしゃったぞ」
「ええ レスター 待ってますよ。」
レスターが視た先には小さな点。それが四方から大穴に向かっている。近づくにつれそれらは異なる色をした巨大な生き物だったとわかる。それが8体、大穴を取り囲むように陣取った。穴から出てきた者と違い見ているだけで力が湧く。生命の頂点たる竜の姿に、ふさわしい影響力に。すべての不安はこの場から消えた。皆を守るには十分だった。
そしてすべてが終わった後で彼の方は悲しむ。このことを伝える者が必要だと・・
大地は深く傷つき、彼の方は持てる全ての力を穴に注ぐ。穴を囲むように高い山ができ穴は水で満たされた。そして穴は銀色に輝く大樹に塞がれた。このときの影響で穴のあった地は大陸から切り離された。島になったその地は後にアトラドスという名で呼ばれる。
---時代も場所も変わり
未だ人の手の入ってない景色が広がる。岩山の上でマントを被った一人の青年がつぶやく。
「生命の繁栄が戦いのみでしか証明できないとは絶対に言わせない。」
力強いその声は風の音に溶け、誰の耳にも届かない。それでも確かにラディの声は伝わる。ラディもその事を知っている、その瞳には満足感が見えた。
これは本来別の話として書くべきなのですが、今の文章力では気力がもちそうにないです。
これだけ書くのに倍以上消耗したのです。ということで混ぜるのは時々です。