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王伝編集官   作者: 卵星店長(代理)
5章 水に流してね

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王伝編集官 38話

 今日の装いはというと。ミントグリーンのワンピース。シンプルながら切り返しの技が冴えて盛り感が詐欺レベル。対して髪型が凝りまくりです。母君とメイさんがこっちがいいとかで意見が白熱。鏡の前でひたすら耐えております。それにしてもきっちり結い上げると大人っぽくなりますね。お化粧はしませんよ。


「まぁ、すべすべ」


「ほんとなめらかですわ」


 セットしてくれたメイドさんたちまで褒めてるのでますます動けないのです。満足げなお二人に見送られて出発しましたって、あれ?メイさん来ないの?不安げな顔の私にエイドリアン様はやさしく微笑み


「さすがに現場に連れてはいけない」


 ですよねぇと曖昧に笑う。そうです、お仕事ですから。気合をいれ顔をきりっと引き締めると、今度は困った顔をされた。


「時間まで観光するのも仕事だろう」


「はい、そうですね」


 本当は落ち着かない。一人だけ楽しんでいるようで。こうして馬車は目的地(その1)へ到着する。そこはカラフルな空間。女の子の好きそうな小物の並ぶお店。花柄な壁紙や華奢なラインの家具で設えられた夢の国。なのにアクセサリーの試着用の鏡の中に映るのは漆黒の騎士。エイドリアン様、背後に立たないでくださいませ。でもそう言えなかったりするので速攻選び終えて、さぁ次、次。


 その後はどこへ行ってもエイドリアン様が視線を独り占めしてくださったので、安心してお買い物は楽しめました。メイさんお勧めガイドブックはとても役に立ちましたよ。ちょっと早いお昼を取るべく来たのは広場に面したカフェ。お天気も良くテラス席でいただくことに。一人席を2つくっつけて向かい合うと注文をして一息。所々視線避けの観葉植物もあり右手を店内、左手を広場。そして目の前にエイドリアン様という配置。ガイドブックによるとこのカフェ、カップルで来る仕様だそうで。ずっと見られていた視線がここにきての最大出力。でも話しかけてくる人はいないですねぇ。もはや気になりませんし。


「疲れたか、ここで時間まで休むといい」


「ありがとうございます、経過はどうです?」


「あぁ、心配ない。もう準備は終わっている」


 通信しながら指示を出していたが、表面上街中の視察だった。足元には小鳥がおこぼれをもらおうとせわしない。日差しは背の高い観葉植物がやさしくさえぎる。頼んだ料理を見目のよいウェイターが運ぶ。ウェイトレスの子たちは店内で隠れて見ていた。目の前に並べられたのはフィッシュフライサンドとチキンミートボールスープ。デザートと飲み物は後で。ここのメニューは女性にやさしい仕様で食べやすいのです。バケットは薄く焼かずにバター。フライに使うパン粉もきめ細かく口当たりがいいです。タルタルソースも柔らかすぎず食べこぼしもしないのです。じーっと見られてもかわいく食べますとも!


「これも食べるか?」


「あ、はい。ではこちらもどーぞ」


 取り皿でエイドリアン様のローストビーフサンドと交換。これもボリュームあるけど交換前提らしく食べやすい。薄切りを丁寧にならべ粒マスタードと少し甘めのソースもワイン風味が合う。スープの具もふわふわで噛むとコンソメほどよくなじんで、ん?


「なんでしょう?」


「いや、見ていて飽きないなと」


「そ、それはどうもです」


 あちらはすでに食べ終わり飲み物もデザートも2人分来ている。別に私が遅いんじゃないし。だれに言い訳するのかと食べるペースは速くなった。デザートと飲み物を前にするとどこかからの声が


「あれしないのかしら」


「そうそう、ここであれよねぇ」


 あれ?ってなんでしょうねと聞くべく意識を前に戻すと、するんと口の中にフォークの冷たさとケーキの味が広がる。食後に重すぎないチョコムース。ビターと酸味とお酒がバランスよくなじみ、間にベリーのムースを挟んで後から香る。酸味の強い木苺をあえて粒感を残してシロップ漬けに、底生地のシュクレと共に最後に口の中でチョコを消していく。お茶を一口飲めば次のケーキの準備も〇。そこで気づく。白いクリームに鎮座する大粒のイチゴがこれ見よがしに半分に切ってずらしてある。ソウイウコトナノネ。


「こちらもドーゾ・・・」


 挑まれた勝負なら受けないと。恐る恐る半分イチゴをつけたケーキを差し出すと、正解だったとばかりに食べてくれました。周囲で声にならない悲鳴が飛んだようです。


 そんなゆったりした時間も終わりに近づき、エイドリアン様は目を伏せどこかと連絡取ってます。最後の一口赤と白の至福を食む。乳脂肪30%のクリームはいい仕事してます。お茶で〆るとほーっとため息。


「楽しんでもらえてようだな」


「はい、ここがどこかも忘れてました」


「それはよかった、さぁ迎えが来たようだ」


 広場に目を向けると、マントで服装は見えないがよく知る人がいた。エイドリアン様は私の手を取りそちらに向かう。彼の前に立たせ、恭しく礼をする。会話が始まるだろうその時


 カーンカーン。 カーンカーン。 カーンカーン。


 時報ではない鐘の音が、硬く重く響く。アラステイ国民は誰でも知っていて、誰もが聞いたことのない音の通告。すなわち外敵の出現。すべてを押し流す命を奪う者。大森林から溢れ出でる魔を纏うものたち。


「さて、予定通り。始めようか」

 ここで5章完となります。6章始まるまでサイドストーリーとして人物紹介します。

おもしろそうな人達ばかりなので迷いますねぇ。

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