変えたいなら
三、変えたいから
「ふーくーのーせーんせいっ!」
「…何ですか、その呼び方は」
「えー?良いじゃん。んじゃあ、福野っち!」
「余計におかしくなったじゃないですか。先生じゃ無くなってます!ていうか、本当に理事長の娘何ですか!」
「ヘヘヘ…、そう見たい☆テヘッ」
「まあ、理事長の真面目じゃない部分に嘸かし似てますね」
「でしょ、でしょ〜!よく言われるんだ〜」
「褒めてるわけないだろ」
そう言って私の頬を引っ張った。
「いひゃいでふ…(痛いです)」
「調子に乗るからだ。少しは反省しろよな」
「…ふくにょちあんがいつっきょみうみゃいふんですにぇ(福野っち案外ツッコミ上手いんですねぇ)」
「何だって?もう一度言ってみろ」
…福野っち、案外ツッコミ上手!佐賀野に負けてない…!って言おうとしたんだけど、福野っちが笑った顔が悪魔以上に怖い笑で私の頬を引っ張ってくるので言うのは心の中だけにした。
ていうか、もう引っ張っているってよりもちぎられてるようにしか感じないのですが…。
「それでなんの用ですか、こんな夜遅くに」
「ヘヘヘ…」
「大体、こんな夜遅くに何なんですか、俺を男だってこと忘れてませんか。大体貴方、こんな夜遅くに男性の部屋に入ってですね…、もし誰かにバレたらどうするんです?責任は取っていただけるんですかね?」
…以外と話が長い…。もー…、そんなにぶちぶち言わなくたって良いじゃん!
「せーんせいっ、それよりお話のことなんですけどー」
「何ですか、無理な話は聞けませんからね」
「んじゃ、こうしよっ!福野先生と私は契約を結ぶって言うの!」
「…」
「何ですか?その顔は…」
何とももう見苦しいですって如何にも言ってるようなその顔。もう点の目でしか見てませんよね?
「それで、契約とはどのようなことでしょう?」
「私、みんなを私色に染めるって決めたんです!みんなはまだ私のことを信用していない人が多いけど…それでも決めたんです!」
「…それで君は俺になんの契約を申し入れたい」
「私がお願いしたいことは二つです桃華ちゃんのこととみんなのプロフィール、言わいる関係性が知りたいです」
「…それを知って君はどうする。真似でもするのか」
「…いいえ。先生、ここにはくせが強い人も多数いると思います。そう言う人とも私は向き合いたいです」
「…お前の気持ちは良く分かった。…それで、俺がその契約に乗ってのメリットはなんだ」
「…知りたいですか…?」
私はにやっとした。
「…何ですか、その怪しく気持ち悪い顔は…」
私は小声で先生の耳元で言った。
「知ってるんですよ、私。友達から聞いちゃったんですけど、福野先生って小井谷先生のことが好きなんですよね?」
「な、何を言っているんだ!」
「これは友達が見てしまった本当の話です。もう少し、キスなら見られない所でやった方が良いですよ♡しかもディープキスなんてなかなかやるじゃないですか♡」
先生しばらく固まっていた。
「あ、あれには訳がある。…な、なるほど…。それはお前とその友達以外にはバレてないってことですね?」
「もっちろんです♡」
「…バラさないと約束してくれるなら良いだろ。それと、毎朝やってる窓拭きと床ふきをやるならな!」
「…やっぱ、バラそうっかな…」
「…バラすのは勝手だが、桃華の資料と話は聞けないな…!そりゃー、残念。残念!」
「…ッチ…」
思わず舌打ちをしてしまうほど、先生の言い方に腹を立てた。
この先生、性格変わったな。なんて言うか、私を見る目、下僕を見るような目。私は舌打ちをした。もう少し負い詰めれば予定通りの契約が成立だがまあ、良いか。これ以上推して本当に教えて貰えなくなるのは困るのでここは一つ窓拭きと床ふきをやってやろうじゃないの…!
「良いですよ、それじゃあ契約成立ですね」
「ああ」
私と先生は握手を交わした。
「契約の交わしに電話番号交換しましょ!」
「は?さっき握手を交わしたでしょう、生徒と先生の深い関わりはあまり良くないでしょう?」
「先生ったら発想が大胆っ♡」
「いやいやいや!発想がおかしいのそっちでしょう!おい、やらしいぞ」
「だーかーらー、やらしいことなんてしないんだし、良いじゃん!ね?」
「んまあ…」
「それに、福野先生には小井谷先生がいるもんね〜?」
「確かに、電話番号入れておいた方が直接会わなくて済みますしね。良いでしょう。それと、小井谷先生の話は置いてください」
「やったー!」
私は先生と契約を交わし、福野優馬先生の電話番号を手に入れたのであった。
「それで、窓拭き床ふきの件ですが、五時に食堂へ」
「ご、五時…ですか…?」
「はい、そうです。俺もやってることでしたのでできますよ」
「生徒と先生は違うから!」
「明日の放課後。食堂で待ってますよ」
「はーい」
なんか、丸く納められた気がするけど、良いや!
『ピピピピッピピピピッ』
『カチャ』と時計のアラームを止めると私は毛布の中でもじもじしていた。
「なんで…、こんな…時間…に…、アラーム…セット…して…ある…の…?」
セットする時間を間違えたのか。そう思ってまた毛布の温もりへと戻る。一度起きようとしたがやっぱりこの温もりから離れられない〜!
…なんでアラームセットしたんだっけ?振り返って二分、私は一気にガバッと起きた。
「や、やばいじゃん…!」
焦って制服を着てカバンも持って食堂へと急いだ。
「…おばさーん!遅れてごめんなさい〜!」
「二十秒ほど遅刻だわ」
細かっ!二十秒遅刻ってどんだけせっかちなのこのおば様!
「大丈夫よ、まだ遅刻してないわ!さあ、急いで!」
「はい!」
あら、優しい綺麗な食堂のおば様がいた〜!
着替えて行くとそこには掃除道具とでっかい窓と広ーい床が私を待っていた。
「こ、これ…全部、私、一人…?」
「そうよ。あんたが一人でこの食堂の窓と床を綺麗にするの。それがあんたの仕事」
なぬー⁉︎え、そんなこと聞いてないっすよ?
一人?嘘?だよ…ね?この大きな窓を八枚とこんなに広ーい床を?私…一人?
「さっさとやんないと終わらないわよ」
「桃野さん、今まで福野先生がやってていきなりやることになっちゃったけど、頑張って!」
く、くそ〜!これもイメージアップだと思って頑張ろ〜…。…くそ…。涙が出てくる…!
一時間半後…。ふう…、やっと終わった〜!って、もうこんな時間?ヤバい…、朝食食べてない!
「桃野さん!朝食用意したから食べて行って!」
「ありがとうございます!皆さん!」
急いで食べて学校へ走る。遅刻だけは避けたい!よーし!廊下…走るか…!