ここから一歩
読んで頂く皆様へ
中田 アマです。
まだまだ未熟者ですが、今後ともこの作品とともに続けて行きたいと思います!
現在中学生と言うこともあって、掲載予定が多々遅いことがあるかもしれませんが、必ず掲載しますので、暖かくお見守り頂けることを願います!
1、ここから一歩
「お、おっきい…」
最初のイメージはまさにそこ。大きな門に広い敷地。
父はここの若理事長として有名であり、お金持ちや特学での入学しかありえないとも言われている、ここ椎塚高校。
そして、私は今、ここの転入生としてここに初めて門の中に入ろうとしているのだが、今まさに困っていることは「足が動かない」というこの現実であった。
ど、どうしよう…、動かないぞ、足。何故だ何故だ何故だ。足が竦んで震えて今にも倒れそうだ。まるで産まれたての小鹿が頑張って立とうとしているようだった。いや、立ってるけど震えて倒れそうなの。そんな状況で門の前で立っている私は、まさに「変人」と呼んでもおかしくはないだろう。
動けぇ〜、足よぉー!神よ、私に力をー!なんて、厨二病発言を心でしていると誰かが声をかけてくれた。
「お前、大丈夫?」
そう声をかけてくれたのはまさかのイケメン⁈
「わ、え、えっと…、大丈夫?」
「なんでお前が疑問形なの、遅刻すんぞ」
そう言ってイケメン―、彼は行く。
そんくらいわかるっつーの!私だって、行きたいよ…。けど、足が竦んで、震えて、腰が抜けそうで足が動かなくってぇ〜…、それからそれから…!
イケメンは私に気遣ったのかスタスタ歩いてたのを止め、後ろを振り向いて私に聞いた。
「…行かないわけ?」
「え、あ…、気にしないでください」
イケメンよ、私を気にせず去るんだ!さぁ去りたまってくれ…!少しちょっと感情を入れて見ました。
「…?」
彼は不思議そうな顔をして私を持ち上げて担いだ。
「へ…⁈」
「よくわかんねーけど、遅刻しそうな奴放っておけるわけないだろ。俺がそこまで送ってやるよ」
「私、歩けます!歩けますから…!」
嘘です。歩けませんでした。
「今まで歩こうとしなかった奴が?」
ぬっ…、それを言われたら何も言えない…。と言うか、本当のことですね。はい…。
「お前…、名前は?」
「桃野望叶です」
「ふーん。んじゃあ、お前桃だな」
「なんですか、その呼び方は」
失礼な。何ですか、その桃太郎みたいな呼び方は。
「桃は桃だろ。呼ばれたことないの?」
「無いですし桃太郎みたいな呼び方、止めてください!」
「桃太郎なんて言ってない」
「桃太郎を省略するようなあだ名、止めてください!」
「やっぱり、いいな…桃」
え…?なんで、そんな寂しそうな顔するの…?
初対面とは言え、なんか凄くさっきの顔つきとは違うって言うか…。
「えっと、名前…、なんて言うの?」
「霧川琉生」
「そう。琉生かぁ〜。いい名前だな〜」
「そうか?桃、俺は太陽組だけどお前は何組?」
「た、太陽…?」
「うん」
ああ…、そう言えばクラスって数字とか英語とかじゃないんだっけ?
父が理事長がやってるとは言え、行ったのは今日が初めてだった。
そういりゃ、文化祭とか体育祭も部活があったし行けなかったな…。
「私も確か太陽だっけなぁ…」
「ふーん、転入生なんだ。つか、自分のクラスくらい覚えとけよな」
「うん、色々と混乱してるの…!んまぁ…。寮に住まないといけないんだけどね…」
「へー、俺も寮住み」
「そうなんだ〜、んじゃ、一緒だね!」
「そもそも、ここ寮住みの奴がほとんどだろ」
玄関まで入ると琉生は私を下ろしてくれた。
「お前、こっち?」
「うん、職員室に寄らなきゃいけないからね!」
「そう。んじゃ、後でな」
「うん…!」
私と琉生はそう言ってお互い反対方向を歩いて行った。
「うわぁ〜、噂通り可愛い〜!」
「小井谷先生、覇者がないで下さい」
二人の若い先生は職員室前で待っていた。
「は!ごめんなさい…!副担任の小井谷恋奏です」
「担任の福野優馬。君が桃野理事長の娘さんだってことは俺と副担の小井谷だけ知ってる。こう見えても理事長には信用されてるから、安心して。俺も小井谷先生も君が理事長の娘さんだってことは誰にも話さないから」
は、はあ…。いきなりのことでまだ、全然頭の中に内容が入っていなかった。
可愛らしくって綺麗で美人。そして何よりあのスタイル。胸が強調され、お腹のラインが綺麗に凹んだ副担任の小井谷恋奏先生と背がすらっとしててツンとした眼鏡に隠れたイケメン、すなわち隠れイケメン属の福野優馬先生。先生まで美女美男なんだなぁ…。
「ここの説明をするね!」
「はい」
小井谷先生の説明によるとここは寮住みの子がほとんどでまあ、成績がずば抜けて良い子か、セレブ達がよく来る学校。一人一つ必ず役割である、委員会か部活を入らなくてはならないらしい。それがここのルールらしい。
「先生、おはようございます!」
うわ、人気者。次々と女子や男子達におはようと囲まれてる。既に見えていない状況。て言うか、完全に一人取り残されてる…。
「おはよ!」
「はよ…」
小井谷先生の笑顔は優しそうで輝いてて思わず誰もがあの顔をみたいと挨拶してしまうだろう。福野先生は、なんていうかおはようと返されたら思わず嬉しくなってしまうような挨拶である。
朝のホームルームが始まると私の紹介がいきなり始まった。
「今日、転入生が来た」
周りはざわざわしてる。そりゃ、そうだ。だってここは特別高。頭がずば抜けて良いか、もしくはセレブ、裕福すぎる家庭に育ったかってみんなは噂をしているだろう。じ、自己紹介…やっぱり無理…!
「転入生の桃―…いない…」
「桃野さん?」
私は太陽組を出て星組、月組、空組、光組、虹組を通り越して私は屋上へ直行した。
「…はあはあ…」
「あ、桃じゃん」
「はあ、はあ…琉生…っ!」
「息切らせて何しに来たの、ていうか自己紹介は?」
「こ、怖くって逃げ出して来ちゃった…」
「ふーん…、俺には威勢良かったくせに?」
「琉生は別だよ!…琉生こそなんでそんな所にいるの?」
「俺?俺はーー…、めんどくさくて?」
「めんどくさい?」
少し何かに戸惑ってた気がしたけど、本当なのかな。
「そ、授業なんて受けなくても俺は点数取れる」
「…凄いんだねー…」
「だろ」
「でも、駄目だよ!授業は受けないと!」
琉生はびっくりした顔で言ったのだった。いやびっくりと言うより、何かに目を光らせていたって言うか凄く何かを思い出したような顔をしていた。
「…お前どんだけ優等生なわけ?生徒会の奴と似てるな…」
「優等生じゃないけど、」
いや、本当。優等生発言してるかもですが、真面目に優等生じゃないんですよ。本当、いつも先生の話聞いてなかったし。正直授業受けるの面倒だった。
「あいつに似てるな…」
「え?あいつ…?」
「……なんでもない…」
「とにかく、当たり前のことを当たり前に言ってるだけ!」
「ホームルームを抜け出してきたお前に言われても説得力無い」
「…ですよね…」
だよね…、私も抜け出した一人だし。はあ…ってなんで笑ってるの⁈
琉生は凄く堪えてるように言った。
「ごめん、ごめん。ハハっ…、もう駄目だぁー。だってすっごい真剣な顔で納得してるからっ…」
「だからってそんなクスクス笑うことないよ!」
「ごめんって。そんな膨れるなって」
琉生は私の頬をつんつんと指してきた。
「私―…、行ってくる」
「そうか」
「琉生のおかげで何だか緊張が解れた。さっきも緊張解れたって思ったんだけどやっぱり怖くて逃げ出して来ちゃったけどもう大丈夫…!」
「なら、行くか」
…え?
「一緒に着いてきてくれるの…?」
琉生は笑顔で言った。
「俺の特等席の屋上で喚かれても困るしな」
「そりゃ、失礼なことしましたね!」
何だよ…。せっかく良い奴だって思ったのに…
「ほら、行くぞ」
琉生は勢い良く私の手首を引っ張った。
福野先生や小井谷先生、何故か生徒のみんなが探してた。何故かって言うか普通、みんなまで探さないじゃん…。
「桃野さーん!」
「桃野ー」
「先生、探してるのってこいつっすか?」
「桃野ー、お前一体どこに行っ―」
「福野先生、そんなに怒んないで下さい。桃…、桃野さんは緊張しすぎてお腹が痛くってトイレがどこかわからなくて俺に訊いてきただけなんですから」
「そうなら、そうと先生にちゃんと言う…!」
いてっ…!先生、チョップ痛いです!これ、暴力です!
「霧川、お前がここに来るなんて珍しいな」
「たまたまっすよ。今日は転校生の噂も耳に入ってましたしね、今から丁度クラスに行く所でしたよ」
「そう言えば、琉生ってなんか委員会とか部活入ってないの?」
「…応援団部の応援長」
「え…!」
「人を応援するのが俺の役目」
「応援長って一番前に立つ…?」
「いや、二番目に目立つの」
応援長かぁ〜…。響きもかっこいいけど琉生に似合いそうだなぁー…。
「おい、桃野も霧川も入れ、さっさと自己紹介しろ」
「はーい」
私は教室で自己紹介をしようとしたが…
「もっ!」
し、しまった、声裏返ったちゃった…!裏返るか?!今のこのタイミングで!みんな可笑しそうに笑ってる。は、恥ずかしい…。
「桃野望叶です。皆さん、こんな私ですが仲良くして頂けると嬉しいです!」
ホームルームは無事終わった。琉生のおかげだな…。
「桃野さん!」
みんな私を囲んで集まってきた。
「俺、佐賀野優だ。佐賀野って呼んでくれよ!宜しくな、望叶。」
「新坂瞳依!宜しく、望叶!」
「私、神木真美亜ね!宜しく!望叶!」
この三人が私の仲が良い三人だ。
「望叶、委員会か部活かなんかやんのか?」
「んー…、三人は何をやってるの?」
「俺は弓道部」
「佐賀野って俺とか言ってるけどこいつ、付き合ってるんだよ!」
「べ、別にお前には関係ねーだろ。俺って言ったほうが言いやすいんだよ!それに瞳依だって狙ってる奴いるだろ?」
「でも、佐賀野と瑠衣のラブラブっぷりは誰がどう見てても恥ずかしい」
真美亜はにやにやしてそう言った。
「そ、それは―…」
「ゆーうーちゃーん」
「お、おい…!いきなり抱きつくなよ…!」
「ね、言った通りっしょ?」
た、確かに…、真美亜が言った通り凄いラブラブっぷり。
「ラブラブだね、羨ましいくらいに」
「あ、転入生の望叶ちゃんだっけ?」
「はい…」
「俺、信田瑠衣優ちゃんの彼氏。そーいりゃ、琉生ちんから聞いてるよー。あだ名、桃なんだってね〜?俺も桃って呼ぼっかな〜」
「…桃?」
三人はその言葉を聞いた瞬間、苦笑していた。
「も、桃ね〜…、ははは…、でも望叶は望叶じゃんねぇ?」
め、瞳依…?なんだかさっきとは様子が違う…?
歪な空気が流れこむ中、真美亜は頑張って空気を変えようとしていた。
「そう、桃か〜、良いあだ名だね……⁉︎」
「瑠衣、望叶って呼べよ!」
…なんで、そんなにみんな焦ってるんだろう…。
何か隠していることでもあるのかな?いや、何かを必死で隠そうとしてる。
「ねえ」
「あー!そう言えば望叶!望叶って寮部屋なんだっけ?」
「え、ああうん…」
「そっか!なら、うちらと近くじゃんね!」
「おー!」
…なんか今、わざと話逸らしたよね…?
私はこの時は何も知らなかった。桃と言う存在がみんなの中でどんな存在だったか、そして、桃って人が私も知ってる人物だなんて―…
読んで頂いた皆さん。いかがでしたでしょうか?
まだまだこの先も予想外の展開の幕開けなので、
是非とも皆さん、お目に通して頂ければ光栄です!
未熟者ですが、今後とも、『椎塚高校〜イケメンすぎて困ってます〜』をよろしくお願いします!