一話
太陽が照らすことを拒絶した呪われた幽霊城、そんな所に住む者がいるわけがない、いたとしてもそれは人ではないと言われるほど人を寄せ付けない城には、一人の吸血鬼が暮らしていた。
最低限人に関わりたくないのか、あまり外に出ず、出てきたと思ったら食料を買い込んで引きこもっている、そんな人物だった。
城の近くにある町の住人は、そんな吸血鬼の様子に恐れることもなく、むしろ心配している人が多い
何故ならこの吸血鬼は、人間に吸血行為を行なわないからだ
吸血鬼が吸血しない、なんとおかしい話だろう
実はこの吸血鬼は人を襲う行為をあまり好まない平和主義者なのだ、吸血鬼に話しかけた肉屋の人曰く「自分の店の肉の血を飲んでいると吸血鬼が言った」らしい
中々信じられない話だが、襲われたという話が一つも出ない、いつしか吸血鬼が悪いやつではないと噂が広まり、吸血鬼が町に現れると、自分の孫や子供のような扱いをしてしまう者が増えた。
理由は、吸血鬼の見た目が10代ほどの容姿の上に特有のとてつもなく白い肌でひ弱に見えてしまい、気にかかるとのことだった。
こんなにも平和な町に恵まれた吸血鬼だが、あまり興味を持っていなかった。
町人が優しくても、吸血鬼の行動は特に変わらずそのまま静かな日々が続いていたのだが、それは突然起こった。
「バケモノめ、退治してやる!」
町へ訪れた冒険者や事情を知らないヴァンパイアハンターが吸血鬼を退治しに来たのだ
町人が洗脳されていると思い込み、話を聞かずに殺しにくる冒険者達に吸血鬼は、悲しげな表情をして死へと葬り去り、そしてますます引きこもるようになってしまった。
それから数ヶか経ち、とてつもなく大きな音が聞こえて来たので吸血鬼はまたハンターか、と思い、外に向かった。
表へ出ると、遠い場所にとてつもなく大きな穴が出来上がっており、吸血鬼は何かの罠かと思いながらも近づき、穴の中を覗き込む
すると、何やら金色の何かから白と黒色の天使の翼のようなものが生えていた。
よくよく見てみると、それは人だったらしく、吸血鬼は警戒しながらも側へ向かう