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第12話 ススキの闇

「ここまでくれば1対1ですね」


 私は槍で男を攻撃し続けて、屋敷の外の森に追いやっている。


「俺の相手はこんな女の子かよ……相手になんねぇだろ」


「私だって戦えます!」


 目の前の男は頭をガシガシ掻きながらため息をつく。

 私の見た目が幼いからってなめてますね? いいでしょう、やってやりますよ。


「やぁぁあああ!」


 私の武器は片手サイズの小さめの槍、その槍を構えて突きかかる。


「なってないなってない。大振りだし隙だらけだし、ハズレだなぁッ!」


「グゥッッ、カハッ」


 あっさりと避けられお腹に膝蹴りをくらってしまう。

 私の体はあっけなく吹き飛び、木にぶつかる。

 痛みを我慢してすぐさま起き上がり、木々に身を隠す。


「まるで弱いものいじめだな。嫌いじゃあないけどな」


 男は周りの木を切り倒しながら徐々に近づいてくる。

 ど、どうしましょうか……。さっきの一撃で体にうまく力も入りませんし、後ろから一撃で決めるしかないですね……。


「どこだぁ~子猫ちゃんやーい。隠れてないで出てきてくれよ~」


 よし、こちらには気づいていないですね……。


「はぁあああああ!」


 後ろから一気に飛び掛かる。

 だが、目の前の男はこちらを見ても驚かない。


「分かりやすすぎて笑いもでねぇよッ!」


 ぐしゃり、と私の顔に肘が突き刺さる。


「きゃああああッ、う、うぅぅ……」


 頭が揺れて視界がぼやけてる……。

 男がゆっくりと近づき、首を掴まれ持ち上げられた。


「こいつ一匹でも捕まえれば他の奴も大人しくなんだろ……。だけど、ちょーっと先にお楽しみといこうかねぇ」


 わ、私に何をするつもりなんですか……。

 服を脱がさないでッ、い、いやぁ。

 抵抗しようにも体に力が入らず、酸素も足りなくなり意識が薄れる。



 ――やっぱ、私がいないと駄目だなぁススキは。



 そう、消えゆく意識の中聞こえたきがした。



   *   *   *   *   *



 いい体してんなぁこの子は。

 他の奴らは俺と違って2対1だし俺が先に楽しむくらいの時間はあるよな。

 破いた服から見えるブラジャーに手をかけ、引きちぎろうとする。


「おい、そこまでにしろ。その薄汚い手で私に触るな」


 意識を失っている女と俺しかいない状況で、俺以外の声が聞こえた。

 そして、ブラジャーに触れていた手が反対側に折れ曲がる。


「ぐぁああっ……。だ、誰だッ! 俺の手を折りやがった奴は誰だァァア!」


 周りを見回す。

 なぜだ……周りには確かに誰もいなかった。だとすると、あの女か? いや、完全に気絶させたはず。


「私だよ、私、さっきあなたにいやらしいぃことをされそうになっていた女の子ですよ」


 馬鹿なッ、なぜお前がそこにいるッ! 今さっきまで俺に馬乗りにされていたはずなのに……ッ。


「ま、まぁそんなことはどうでもいい。起きたのならもう一回気絶させるだけのことッ」


 相手はさっきの弱い女、簡単に倒せるはずだ。はずなのになんだこの違和感は……。

 そしてその違和感が当たるように女の動きは先ほどと比べ物にならなかった。


「よくもあの子を痛めつけてくれたね。あなたは簡単には殺さない。奇怪で不気味で恐ろしい肉塊へと変化させてあげる」


 俺は剣で斬りかかる。訓練しているから隙のない動き、確実なところで傷を付けてゆっくりと……。なんだ? 体の動きが鈍くなって……。


「そろそろだね、それは槍の効果で相手の動きを鈍くするんだよ。今のあなたは動きが遅すぎて私に攻撃をあてることは不可能です」


 なんだと……。くそ、体が思うように動かねぇ。


「ここからは私のお楽しみです。あなたがやろうとしてたこととは違いますよ? それよりもっと楽しくて愉快で面白いことだから期待しててね?」


 なんでこいつはこんなに楽しそうなんだよッ。

 あった時とは違い目の色が金色に変化している。まるで夜の猫の瞳のような金色。


「く、くそがァァァァァアアアア!」


 叫び声で体を無理やり動かし、背中を向けている女に隠し持っていたナイフを投げる。

 あ、当たるッ!


「期待させて悪いけど、残念ですねぇ」


 女の周りが弾け周囲一帯に衝撃波のようなもので木々は折れ地面には亀裂が生まれた。


「いいですねぇその顔、ゾクゾクするよ……。同じことをされて絶望する顔はすごく興奮する」


 こ、こいつさっきとは別人だ。完全に人格が変わってやがるッ。


「く、来るんじゃねぇッ! 俺に近づくなッ!」


 隠し持っているナイフを全て投げる。

 だが、女が角笛を吹くと全てが弾き飛び、その中の数個が俺に跳ね返って突き刺さる。


「ぐぅわぁあッ、何しやがったッ!」


「私の二つ名は『アストルフォ』、この槍は相手を鈍くし、この角笛は周囲一帯を破壊する。この本は全ての魔法を打ち破る魔導書だよ」


 か、敵うわけがねぇ……。二つ名の格が違い過ぎるじゃねぇかよッ。


「本番はこれからですよぉ? まだまだ足りません。もっと私を満足させてください! 『我が二つ名を媒介に、神話よ顕現せよ』」


 女の腕の輝きに目をつむり、再び開くとどこかの街のようなところに世界が変わっている。

 俺の首にはロープが括り付けられ、そのロープの先は見たことのない奇妙な生物の尻尾へと繋がっている。


「あははははっ さぁヒッポグリフちゃん、あの愚か者を引き釣り回しなさい!」


「うぐぅッ、く、首がッしまって息ぐぅあッ……」


 痛い痛い痛い痛い痛い。背中や腕などあちこちの皮が剥がれ、その傷口にさらに小石などが刺さり痛みを増幅する。

 もうやめてくれぇ。痛い、痛い、痛い痛い痛い痛い。


~数十分後~


「あぁ……うう……。あぅあわぁ……」


 もう、どれくらい引き釣り回されただろう。

 痛みは感じず酸素も回ってこない。ふひひ。

 だんだん気分がよくなってきたなぁ。でも目がかすんでよくみえねぇや。 


 朦朧とする意識の中、最後に見たものは、不気味な女が頬を赤くして微笑む姿だった。



「もう終わりなんて、つまらないですね。死んでしまったようですしあの子に体を返してあげるとしましょうか。ふふっ、今日は久しぶりでしたからものすごく楽しめましたっ」


 そして、女の笑い声だけが鳴り響く。

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