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魔法使いの弟子になってみる

 

 俺の前でたたずむメイディが言葉を失っている。何故だ? 土下座が原因?

「もう一度言う! 弟子にしてくれ!」

「……ナゼ?」

 かろうじて言葉を口にしたメイディ。何故ってそれは決まっている!

「魔法……魔法を教えて欲しいんだ! 頼む!」

 床に頭をつける。

「……いや」

 断られた! イヤでも結構! すかさずメイディの片足を抱きしめる。

「頼むよ! この通り!」

「や…やめてーーー!! この変態!」

 恐怖にひきつった顔をして叫ぶ。いつも澄ましているメイディが普通にしゃべっているぞ。

 ボグ!! 後頭部を思い切り殴られる!

「痛てぇ!」

「何してんの! このバカ!」

 あまりの痛さに足から手を放し頭を押さえる。いつの間にかムランがいない。

 後ろを向くと荒い息をしているシンシアが拳を握り仁王立ち。お前は関係ないだろ?

「いや、専門家に魔法を教えてもらおうと……」

「あんたにそんな才能ないでしょ! 女の足に抱きついてんじゃないよ!」

 激怒のシンシアと汚物を見る目で俺にメイディが一言。

「……ヘンタイ」

 そう、普通の人なら心折れる事態だろうが今日の俺は一味違う。

「そこを何とか! 試してみないと才能があるかわからないじゃないか!」

 必死に頼み込むと、ため息をついてメイディが鋭い目を向ける。

「……はー。どうして?」

「それは君しか魔法使いを知らないからだ!」

 言い切るとメイディの目が点になっている。

「プッ。アハハハハハハハハ!」

 と、今度は爆笑しはじめた。大丈夫なの? 目でシンシアを見ると困惑しているようだ。

 いつの間にかムランが肩から首へよじ登っている。こいつ……人がピンチの時はすぐ逃げやがった。


 ひとしきり笑ったあと目に溜まった涙を拭くと、しゃがんで俺に目線をあわせるメイディ。

「……いいよ」

「マジ!? ありがとう! 助かる!」

 再び頭を下げるとシンシアが驚きの声を上げる。

「ええ!! メイディ! 軽く考えちゃダメよ! こいつ変態なのよ!?」

 何故この女は俺をさげすむのか? めちゃ嫌われてるよね。

「……一つ」

 真っ直ぐ俺の目を見てメイディが人差し指を立てて呟く。

「……言うことは絶対!」

 メイディの目が鋭くなり威圧する。なんか怖くなってきた。教わる相手を間違えたかも。

「わ、わかった。約束する」

 すっとメイディは立ち上がり何も言わず背を向け出口へ消えていった。

 俺も立ち上がると茫然としているシンシアを見る。

「シンシア。彼女とどこで待ち合わせするか聞くの忘れた」

「あ? そんなの知らないよ! 自分でどうにかしろ!」

 怒りの受付嬢がカウンターに戻っていく。知っていたけどケチだな。


 そんなわけで今は共同浴場へ向かっている。

 途中、ゴミ捨て場らしき所があったので、隠すようにゴブリンの頭を捨てといた。

「おい! 本当に魔法なんか使えるのか?」

 いままで無言だったムランが頭を叩いて存在感をアピールしている。

「お前、俺がピンチの時逃げたろ?」

「あたりまえだろ! なんでお前を助けなきゃいけないんだよ!」

 もうホント、細切れにしてたこ焼きの具にしたい。

「お前がピンチの時は覚えてろよ!」

 凄むが相手が目の前じゃないので効果がない。が、頭をポコポコしてくる。一応は聞こえたようだ。

 さまざまな種族が行き交う大通りを進むと煙を出す煙突が見えてくる。あそこが目的地か。

 やがて建物の前へ着き、中へ入っていく。中では男女別々に別れているようで男のマークと思われる方の扉へ行く。

 扉を開くと番頭さんがカウンターにいて料金を支払って利用する仕組みのようだ。ちなみに女湯は見えない。

 とりあえず料金を聞いて支払うと脱衣所へ向かう。意外に安くブロンズ二枚だった。毎日通いたい値段だ。

 脱衣場はカゴのみでセキュリティー無し。やばい、ここで金をスられたらお終りだ。

 ムランをカゴに置くと何故か恥ずかしそうにしている。

「お前、なにしてんの?」

「ば、バカ! みんな裸じゃねぇか!」

「当たり前だろ。風呂屋なんだから」

 服を脱ぎ始めて気がついた。先に新しい服を買っとけばよかった。帰りに雑貨屋へ寄るか。

「よし。俺は入ってくるから、お前は金を見張っててくれ。じゃあな」

「ええー! 早く帰ってこいよ!」

 そんなムランを無視して風呂場へ直行。いろいろな種族が思い思いに体を洗い、湯船に浸かっている。

 しかし俺は気がついた。皆、パンツをはいていることに。素っ裸なのは俺だけ。

 その辺は気にせずお湯で身体を洗い、湯船に入る。


「はぁ~~」

 声が出た。久々で気持ちが良い。すると先に湯船に浸かっていたマッチョでイケメン風な男が話しかけてくる。

「お前はギルドでシンシアと話してた本人か?」

「ああ、そうだけど」

「俺はガット。同じ冒険者だよろしくな!」

「先輩!? ヨシオです!」

 何故か手を差し出してくるので握手をする。欧米式?

「あのシンシアと話せるなんて尊敬するよヨシオ!」

「話しただけなのに!?」

「おう! わかると思うが、あの辛辣な言いようにくじける男は多いんだ。俺もその一人だ」

 なるほど。わかってきたぞ! だからシンシアのカウンターだけ空いていたのか。どんだけ煽り耐性が無いんだ、ここの人は。

 思い巡らせているとガットはニヤリとする。

「平然と話せるお前を見た俺達はこう囁いたのさ。“勇者が来た”ってな! ワハハハ!」

 笑うガット。全然面白くねぇ。知っていたら並んでないよ。しかし、少し安心した。あの言い方は俺だけじゃないってことに。

「ま、なにかあれば声をかけてくれ、協力するよ。それじゃ、お先! ワハハハ!」

 笑ったままガットは湯船を上がり湯気の中へ消えて行く。やはりパンツをはいていた。

 金が気になるので後を追うように脱衣所に出て自分のカゴに向かう。

 カゴではムランがのんきに寝ている。慌てて金を確認するとちゃんとあった。ホッ。

 ……しかし、こいつは食っちゃ寝ばっかだな。寝息をたてているムランをつかむと肩車して共同浴場を後にした。


 すっかりおなじみの雑貨屋へ入店する。

「こんばんはー」

「お、ヨシオか。そんなにここが好きか?」

 相変わらず鍋の横の顔が答える。

「いや、他の店を知らないだけだ。ところで服とか売ってる?」

「そうだな。昔、試しに仕入れたものならあるかもしれん。服なら市場にいくらでもあるのに」

 ブロガンは立ち上がり奥へ言葉を残して行く。しかたないじゃん、市場ってどこにあるか知らないし。

 結局、服はあったが、着てみると少し大きい感じで裾や袖が余っている。しかたがない、今はこれで我慢だ。

 俺の姿を見たブロガンは感心している。

「おお! 意外に似合うな」

「それ褒めてないから!」

 元々売れずに奥に眠っていたのでお安めで売ってくれた。上下、下着付きでブロンズ一五枚。ラッキー!

 店を出て宿屋に向かう。



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