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エピローグ

 

 まるで祝うかのような青空の下、空中に浮かんでいる円盤の前でメイディたちと相対している。

 成り行き上、突然のお別れになってしまった。

 マルイドに近づく。

「いままでありがとう。ずいぶん助けられたよ」

「まったく、いつも突然だな。少しは心の準備をさせろ! だが楽しかったよ。元気でな!」

 お互い笑顔で握手を交わす。マルイドには戦い方やこの世界の常識など、いろいろ教えてもらった。

 世話になりっぱなしでお礼の言葉が陳腐なものしか出てこないが、非常に感謝している。

 そしてジェルドの前へ行く。

「それじゃあ、お別れだ。無理させた所もあるけど、ジェルドがいてくれたからここまでこれたよ。ありがとう」

「短い間でしたが、私が変わるきっかけを作ってくれました。こちらこそありがとう! お元気で!」

 デカいジェルドの手と握手をする。サラサラしてるな。

 その観察眼にはずいぶんと助けられた。できれば最後まで鍛えたかった。


 最後にモジモジしているメイディの前に出る。

「師匠…あのさ」

「……何?」

 メイディが下を向いていた顔を上げる。

「一緒に行かないか?」

 すると目を見開いて注目し、固まっている。

 しばし時が止まった後、目を伏せる。

「……無理。できない」

「そうか、残念。師匠も行きたいかと思ってたよ。……メイディと出会えて良かった。いままでありがとう」

 握手をしようとすると抱きつかれたので背中をさする。

 いろいろありずぎて言葉じゃ足りないな……さようなら師匠。

 そっと離れるとメイディは下を向いたまま。恥ずかしいのか?

 ムランとシンシアもそれぞれお別れの挨拶をすると、円盤の前へと戻る。


 再び三人を見るとマイルドは口の端を上げ、ジェルドはしんみりしている。メイディは下を向いたままだ。

「じゃあ、お別れだ! 元気でな!」

 笑顔で手を振ってると、ムランが睨んでくる。

「聞いてないよ! なんでシンシアも一緒に行くんだよ!」

「悪い! 言いそびれてた。いいだろ? 一人増えるぐらい」

「あいにくこの機体は二人が定員なんだよ!」

 怒ってるムランが無茶苦茶言ってくる。

「アホか! さっきまで五人で乗ってたろ! いいだろ!?」

「ごめんねムランちゃん。私がついてきて」

 憤慨しているムランにシンシアが申し訳なさそうに謝る。

「なんで決めてんだよアンポンタン! オレは反対なんだよ!」

「どうしてよ! あ! わかった。嫉妬してんでしょ?」

 激おこムランにシンシアが挑発してきた。ああ、ダメな流れだ。

「ま、待て二人とも。話し合おう! な?」

「「うっさい!!」」

 二人同時に睨まれる! 怖いよ!


「お前らいい加減にしろ!!」

 マルイドが怒鳴ってきた!

 慌てて皆、顔を向ける。

「いいから、とっとと行け! ムードもへったくれもない!」

 怒りのマルイドが急き立てるので、慌ててムランとシンシアの手を取って円盤へ向かう。

「最後まですまない! じゃあな!」

 チラリと後ろを向き三人に叫ぶ。

「ああ! 早く行け! アホ共が!」

 マルイドが叫び返すが顔が笑ってるよ。

 円盤の下に行くと中へと吸い込まれる。

 白い空間に戻るとムランが円盤を起動しスクリーンが映し出される。

 そこには手を上げているマルイドとジェルド、上を向いているメイディが映し出される。


「しょうがない。あきらめてないけど、出発するよ」

 スクリーンを操作していたムランが振り返る。

「ありがと! ムランちゃん!」

「わかったからやめろ~!」

 笑顔のシンシアがムランを抱きしめるが、いやがるムラン。

 そんな二人を抱きしめ空に向かって指をさす!

「よし! 行こう!」

「目指すは我がイプシロン星へ!」

 ムランも笑顔で指し示す!

 シンシアも笑顔だ。

 スクリーンには空を加速してく風景が映し出されている。

 やがて成層圏を抜けて宇宙へと飛び出す。

 果てしない暗い空間を高速で走ると星々がラインとなって流れている。


 願わくば無事に地球に帰れることを祈るのみ。

 ふと別れた三人を思い出す。あの星の仲間はずっと元気でいて欲しい。それが願いだ。

 今はこの二人と過ごすことを考えよう。

 誰も先の事はわからないから。


 □  □


 空に向かって小さくなっていく物体を見つめる。

 やがて見えなくなっても青い空を眺めていた。

「メイディ……これでよかったのか?」

 頃合いを見たマルイドが背後から声をかけてくる。

「……大丈夫」

 上空を見続け視線をそらさずに答える。どうしても顔を落とせない。

「まあ、いいか。俺たちはそこにいるから、気が済んだら声をかけてくれ。行くぞ! ジェルド!」

「待ってくれ。私は足が遅いんだ」

 マルイドの声に慌ててジェルドが付き従い、この場を離れて行く。

「……ありがとう」

 遠ざかるマルイドの背にお礼を言う。彼の肩が少し上がった気がした。


 すでに涙が頬を伝っていて顔を上げている意味がない。

 顔を下に向けるとしずくが地面に落ち、乾いた土に次々と染みこんで色をつけていく。

 私の頭には去って行った三人の思い出が鮮やかに蘇っている。

 初めて会ったあの日から、いつか別れる事になるとは思っていたが、こんな形なんて。

 もう一度、何も無い空を見上げる。


 さようなら、私の大好きな人たち────……


 □


 ヨシオ達が星に帰って一ヶ月。

 騒がしかった日々は去り、やっと私も今の暮らしに馴染(なじ)んできた。

 ギルドへ行き、新しい受付嬢とやり取りする。エアルちゃんは相変わらず人気なので並ぶのにためらわれ、遠慮した。

 夜はよく二人で集まってアンジェロの店で飲んでいる。

 シンシア──親友は今でも元気だろうか? ムランと仲良くしているだろうか?


 彼らと別れた後、町へと戻った私たちはギルドマスターへ報告した。

 突然受付から消えたシンシアは、ヨシオと駆け落ちしてこの町を去ったと。

 ムランもヨシオたちに同行しているのも付け加えて。

 そんな作り話しをギルドマスターは楽しそうに笑いながら聞いていた。

 ひょっとすると真実を知っていたのかもしれない。

 彼はシンシアのたった一人の肉親なのだから。


 私のパーティーはヨシオたち抜きでなんとかやっている。

 魔法のバリエーションが増えた事で状況に合わせて対処できるようになった。

 マルイドは囮やけん制で貢献してくれて、ジェルドは頑張って剣を振るえるようになった。

 王都から帰ってきたマイは、ヨシオたちがいなくなった事に憤慨していたが、私のパーティーに加入してくれた。

 文句を言いながらも私を補佐してくれるので助かっている。

 でも、時々、あの無茶苦茶な突進で魔物を蹴散らす幻を見てしまう。


 やはり最後にこの想いを伝えれば良かった……。

 彼らがいなくなったあと、一言伝えられなかった事に後悔した。

 シンシア……こんなに胸が苦しいなんて、でもあなたを裏切れない。

 時々、ふとしたはずみに涙があふれてくる。こんなことなら私も一緒に行けば良かった。

 未知の世界が怖かったのだ。シンシアの勇気が私にもあれば──


 ベッドに腰掛け窓の外を眺める──

 今日も星が綺麗だ。あれ以来、夜になると空に顔を向け、星を見るのが癖になってしまった。

 バカな私だ。また戻ってくることを期待しているなんて。



……──コン、コン、コン、コン。

 静かな夜、突然ドアが叩かれる。

 誰? こんな時間に。

 そっと立ち上がるとなるべく音を立てないように動き、杖をつかみノブに手をかけ──

 素早くドアを開く!


「!!」

 そこには、とてもよく知った顔ぶれが揃っていた。


「よう! 師匠。元気だったか? すまないけど話しがあるんだ」

「久しぶり。夜遅くにごめんなさい」

「ホント、ゴメン。事情があってさ」

 ヨシオ……シンシア……ムラン……どうして?

 気がつくとシンシアを抱きしめていた。彼女も背中に手を回している。

「……な、ん、で」

 もう無理だ、言葉にならない。涙があふれる。

「また会えて私も嬉しい。でも話しを聞いて欲しいの。いい?」

 シンシアの優しい声が再び聞けて嬉しい。涙を指で拭いうなずく。


 部屋の中へ皆を入れ、テーブルに着く。

 シンシアと一緒にお茶の用意をする。隣に立つ彼女の存在が温かく、心が落ち着く。


 湯気のあがるカップを手にヨシオが口を開いた。

「お別れした後で調子がいいかもしれないけど、しばらくこの世界にいる事になった」

「は!?」

 唖然とする。何を言っているの?

「実はオレの星に行ったら追い出されて、チキュウの位置もわかないからこの星へ戻って来たんだ」

 ムランが苦笑いで説明する横でヨシオがうなずく。ええ!?

「な……んで?」

「いや、コイツが大きくなったからさ、本国で受け入れてくれなかったんだ。最初小さかったろ? 星の連中もあのサイズだったんだ。しかも、俺やシンシアがいたし」

 私が呆然としていると先に続ける。

「で、乗ってきた宇宙船の燃料が残り少ないのと、ちょっとした情報を仕入れたんでここに来た」

 言い終わるとヨシオはカップのお茶を一口飲む。頭が混乱する。受け入れられないって何だ?

「いきなりでゴメンね。私も最初はよく分からなかったの。でもあなたの協力が必要なの」

 シンシアが私の手をにぎって優しく語る。ヨシオを見るとうなずいている。

 私が必要?


「一緒に旅に出ないかメイディ? この世界のドコかに地球に帰れるヒントがあるかもしれないんだ」

 ヨシオがすまなそうに私を見る。そんなの答えは決まっている。

「…わかった。行く」

「ありがとう! さすが師匠! 後はマルイドとジェルドか。他は…マイはどうだろ? コイツがビビリだからこの先どうしようかと思っててさ」

「なんだとアンポンタン! オレはビビリじゃねぇ! あとコイツってなんだ!」

 ほっとしたヨシオがアホな事をいってムランを怒らす。段々言い合いになってきた。

 ああ、この感じ……とても懐かしい! あの頃が蘇る。

「ホントゴメンね、こいつらうるさくて。ドコでもこうなの。お陰で二人っきりがなかなかなくて」

 隣に座るシンシアがあきれ顔で言うとムランがこちらをキッとして向く。

「当たり前だろ! オレがパートナーなんだから!」

「いや、お前は彼女じゃないだろ! 少しは譲れよ!」

「あたしはヨシオの人生のパートナーなんです! ムランちゃんは仕事のパートナーなの!」

 ああ、ヨシオが反論し、シンシアも参戦するとまた思い出すが、前よりもヒドくなってる。

 私そっちのけで三人が言い合っている光景が目の前で繰り広げられている。

 その表情にはどこか楽しげな雰囲気を感じとれた。

 ……彼らを見ていたら、私がこの部屋で後悔や焦燥にかられた事など小さな事のように思えてくる。

 今まで何をやっていたんだろ?


「プッ、ククク。ハハハハハハハハハ……!」

 吹き出すと笑いが止まらなくなる。久しぶりに腹の底から笑った。

 私が笑い始めると彼らは騒ぎをピタリと止めて注目し、三人の目が点になっている。


 決めた!


 彼らが何を言おうと、とことんまで付き合うと。

 世の中、こんなに奇妙で面白く、愛してやまない仲間はいないのだから──……



────完


お読みいただきありがとうございました。


彼らの冒険は続きますが物語は終わりになります。

やや投げっぱなしの部分もありますが、楽しく書かせていただきました。

今回はキャラクターを絞ってなるべく少ない人数でいこうと思いましたが、無理でした(汗

まだまだ拙さいっぱいですが、いつか出る次作に向けて生かせればいいかな?


最後に、お付き合いいただいた皆様にお礼を申し上げます。

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