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さよなら異世界

 

 倉庫の中を調べたが他に使えそうな円盤は無く、設備も無かった。

 たぶん、ここは格納庫のようだ。いざという時に使用する予定だったのだろう。

 はるか昔に飛ばされたムランの仲間は、どのような気持ちで建造したのだろうか? 未来の子孫に託したのか、それとも再び現れる同胞に向けたものなのか。アラクネの里にいたボイドなら答えてくれただろう。

 今、この場にいないのは残念だ。

「ヨシオが最後だよ! 早く!」

 ムランが呼んでいるので急いで円盤に乗り込む。


 中は最初にさらわれた時と同じように、白い壁に低い天井が広がっている。メイディたちは中腰で不思議そうに周りを観察していた。

 最後に入って来たムランは穴に指を入れて機械を作動させる。

 起動した機械は低いうなり声を上げ円盤の設定を開始し、やがて白い壁に外の様子が映し出された。

「みんな、行くよ」

 その様子を確認してから、ムランが皆を見渡し声をかける。

 それぞれうなずいて答える。

 目を輝かせてムランはスクリーンのアイコンに触れる。

『発進します。ただいまゲートを開きます』

 例のアナウンスが流れると、乗った円盤がふわりと浮く感覚がした。

 スクリーンには地下から昇降機で上がっている(さま)が映し出されている。

 しかし、メイディたち三人は円盤に乗ってから無言だ。驚いて声も出ないのか?

 やがて地上に出るとそのまま中空へと浮かび上がる。


『離脱しました。これより施設を爆破します』

 再びアナウンスが流れる。爆破だって!?

「え? なんでだよ! ムラン?」

「わからないよ! きっとこの星に証拠を残さないようにするためだと思う」

 俺の疑問に憶測を述べるムラン。ハッと気がついた。ムランも俺と同じ事に。

「すまん。気が動転した」

「いいよ。オレも同じ気持ちだ」

 感謝の気持ちに苦笑いしているムランの肩に手を置くと彼女も手を重ねる。

 そしてこの場を離れ、宇宙船はバンガラへと飛び立つ。

 背後で爆発する大きな音が聞こえる。しかし、自爆が好きな奴らだな。


 スクリーンに映し出される風景が、川のように流れているのを見ると、なかなかのスピードだ。

「ムラン。町までどのくらいで着く?」

「ん~。この速度だと今日中かなぁ」

 操作に集中しているムランがニコッと振り返る。ずいぶん早えぇ。

 と、マルイドが乗り出してくる。

「ちょっと待て、お前ら! 一旦、この機械を止めろ!」

「なんで?」

「アホか! こんなもので町に行ってみろ! 大騒ぎになるぞ!」

 冷や汗かいているマルイドが説明する。ああ、そうだな。確かに。

「んー。わかった」

 ムランはうなずいて円盤を着陸させると一旦全員が外に出る。

 円盤は宙を浮いて停止している。不思議だ。さすが超科学。

 マルイドがムランに近づく。

「ここから町まではどのくらいだ?」

「ん~、徒歩なら一日あれば着くかな」

 無邪気にムランが答えるとマルイドが頭をかいている。

「まじかよ、スゲエな! まったく!」

 ムランの肩を叩いて俺に向き直る。目にはいつもの力強さが無い。どうした?

「お前らとはここでお別れだな。残念だが」

 つぶやくように吐き出す。おい!

「いや、ちょっと待て! まだシンシアと合流してない!」

「なに!? シンシアは知ってるのか?」

 驚いたマルイドが聞いてくる。あれ? 知らなかったのか…。

「……私が話した。全て知ってる」

 少し自慢げなメイディが説明するとマルイドの目が点になる。そんなビックリしなくても。

「ハハハ! さすがですね!」

 ジェルドが納得して笑ってマルイドの肩に手を置く。

 いや、そんな場合じゃない。

「とにかくシンシアと一緒に行くと約束したから、連れてこないと」

「まったく! お前らはここにいろ! 俺たちが連れてくる!」

 焦ったマルイドが提案してくるがメイディがダメ出しする。

「……それだと誤解される」

「じゃあ、どうすんだよ! 夜にまぎれてかっさらってもいいが、後々問題になるぞ?」

 マルイドがその辺に転がっている石を蹴飛ばしてイラ立ちを現している。


 太陽はまだ少し傾いたぐらいで青空が広がっている。荒野はのどかだ。

 はっ! いけるぞ!

「待て! 俺が呼ぶから!」

 声を上げると全員が注目してくる。その頭にはハテナマークが出ているのが見える。ムランもかよ!

「魔法で呼ぶから! わかった?」

「マジかよ!? そんなの無理だろ!」

 ビックリしたマルイドが叫ぶ。ってか、さっきから驚きっぱなし。

「…いい案! ヨシオはできる」

 メイディが賛成してくる。ムランは理解したのかニコニコしている。

「よし! “善は急げ”だ!」

 宣言してその場に座ると精神を統一する。

 今回は楽だな。シンシアならずっと想っていられる。おっぱいの誘惑に負けないぞ!

 魔力を身体中に巡らし、イメージを固める。

──来い! 俺の元へ!!


 目の前に光が集まり輝き始める。

 フッと影が現れ、シンシアが光から出てくる。

「──店でなら……あれ!? ヨシオ?」

 何故かしゃべりかけてる途中のシンシアが俺を見てビックリしている。

「良かった! 成功だ!!」

 立ち上がるとシンシアを抱きしめる。ああ、一安心だ!

「ねぇ、どういう事?」

 腕の中でシンシアが顔を上げて聞いてくる。イマイチ状況が飲み込めてないようだ。

 体を離すと皆の前へ行き、経緯を説明する。


「わかった。一緒に行く!」

 納得したシンシアが笑顔で宣言してくる。が、いつの間にかムランが俺の背中に張りついている。何故だ?

 しかし、いまだマルイドとジェルドは口を開けたまま驚いている。

「ま、待てよ…。そんな魔法できたのか?」

 震える指を俺に向けてマルイドが聞いてくる。

「まあ、ね。隠してた訳じゃないけど、他に使えるってほどじゃないし」

「何言ってんだ、このアホは! 移動魔法なんてプラチナ級だぞ!」

 やっと立ち直ったマルイドが珍しく怒っている。愛想笑いで誤魔化す。ハハ、俺ってまだアイアンだもんな。

 その横ではシンシアがメイディと抱き合っている。

 これで準備は整った!

 後は旅立つだけだ!



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