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久しぶりに二人きり

 

 図書室から出て一階へ降りると、ジェルドから俺やマルイドが泊っている宿へ越してくると宣言された。

 いや、別にいいけど、俺としては個室に泊まりたい。

 ジェルドに何かあったのか?

 引っ越しの手伝いを申し入れると荷物は少ないからと、一人ジェルドは現在泊まっている宿へ足を向けた。

 日も暮れていたのでシンシアとムランを誘い夜食をとった後、自宅へ送っていく。

 いつもの安宿へ戻り部屋に入るが、まだマルイドは戻ってきていないようだ。

 少し相談したかったんだが。ま、明日でいいか。


 翌日、目が覚めるとすでにマルイドとジェルドはベッドにはいなかった。

 支度を済ませ食堂に行くと、二人がテーブルにいるのを発見した。

「おはよう、二人とも」

「やっと起きたか」「おはようございます」

 マルイドとジェルドがそれぞれ返事をくれる。

 空いたイスに座り、ミレアちゃんに料金を渡し食事を頼む。

「実は相談があるんだ」

「やぶから棒になんだ?」

 コップを持ちながらマルイドがいぶかしげに見る。

「その、ムランとマイなんだけど──」

「無理だ。がんばれよ!」

 俺の言葉をさえぎってマルイドがニヤリとしている。くそ! 先手を取られた。

 すがるようにジェルドを見ると、あからさまに視線をそらした。こっちも逃げた!

「誰に相談すればいいんだよ!?」

「さあな。アンジェロにしてみれば?」

 コップを傾け飲みながらマルイドが提案してくる。ダメだ、アンジェロはシンシアの味方じゃん!

 ガックリうなだれる。あいつらは好きだけど、それ以上は無いし。

 ムランなんかあからさまに接してきやがる。タコの時と大違いだ。いや、よく考えたらタコの時から密着してた。


「ところで、いつ出発しますか?」

 俺の思案をよそに、やっと目を向けたジェルドが聞いてくる。

「昨日、シンシアの言伝でメイディがやる事があるから三、四日後あたりだな」

「わかりました」

 納得したジェルドが頷きながら了解する。物分かり良すぎ!

「ところでメイディって普段何やってんだろな? ふらりといなくなるし」

「おい! お前、知らないのか!?」

 ビックリしたマルイドが身を乗り出す。何で?

「何を?」

「あー、そうだよな。そうだった。いいか? メイディはこの町で数少ないポーションの作り手なんだ。お前がホイホイ飲んでるポーションはメイディが作ってるんだぞ」

「マジかよ…。全然知らなかった」

 呆れたマルイドの説明にすごく納得する。……道理でいつも持ってたわけだ。

 ふと疑問に思って聞く。

「でも、あのブルーのポーションはムランが作ったんだろ?」

「そうだ。たぶんメイディがムランを仕事場に案内したんじゃないか」

 苦笑いで答えるマルイド。ああ、そうか。前に一人で出かけた時があったな。

 しかし意外だ、師匠は他に仕事を持っていたのか。だから金があるんだな。いつ借金を催促(さいそく)されるかと思ってドキドキしてたけど、多少は気が楽になった。

 食事をしながら雑談した後、ギルドへ向かう。マルイドとジェルドは他に用があるらしく宿屋の前で別れた。


 ギルドのカウンターには珍しくシンシアだけのようだ。ムランがいないな。メイディとポーションを作ってるのか?

「おはよー」

「おはよう。今日は何?」

 声をかけるとニコリとするシンシア。

「いや、暇だからシンシアの予定を聞きに来た」

「早く言ってよ! もう! あんたって、この町にいないか、いたらヒマかの二つしかないの?」

 以前と違って、かわいい顔で怒ってる。どうしよう、抱きしめたい。

「ごめん。ムランもいないようだから、久しぶりに二人になれると思って」

「ホント、いつも突然! 少し待ってて!」

 プリプリしてシンシアは隣のケモ耳の受付嬢に話しをしている。つか、さっきからガン見してたぞ。

 話し終わったのかシンシアがカウンターを回ってこちらに来る。

「ほら、行きましょ!」

「あれ!? いいの?」

「今日は休みにした。調査団も出てて、冒険者が少ないから大丈夫。さ、早く!」

 俺の腕を取ってシンシアが急かす。ちらりと受付カウンターを見るとケモ耳の受付嬢が笑顔で手を振っている。


 とりあえず市場へ行くことにした。

 よく考えたら自由だな、仕事をほったらかしで。ギルドって融通がきくもんだな。

 微笑むシンシアの手を握って装飾品を売っている屋台へ向かう。

「何か欲しいの?」

 ワクワク顔でシンシアが聞いてくる。くそ、気がついてるな。

「いや、シンシアが見て気に入った物はある?」

「え!? えっと、ま、まって!」

 あたふたして商品を見始め、いろいろと手に取って比べている。目が真剣だな。

 後ろでその様子を温かく見守っていると決めたようだ。

「決めた。どお思う?」

 シンシアが振り返って、質素だが明るいオレンジ色のガラスが輝くペンダントを首に当てて見せる。

 なんだコレ、めちゃくちゃ似合ってる。かわいすぎる!

「すごく…合ってる」

「ホント?」

 笑顔が眩しいシンシアが確認してくる。

「よし、買おう!」

「ホントに!?」

 ビックリしている間に店主と会計を済ませる。ちなみにシルバー二枚だった。高けぇええ!

「ぷ、プレゼント。シンシアに贈りたいんだ」

「バカ! ありがとう!」

 抱きついてくるシンシアを受け止める。なぜ一言多いのか。

 ふと視線を感じて首を回すと店のおやじが“ヨソでやれ”って目が語っている。ヤバい。

 おやじに苦笑いで答えるとその場を移動した。

 上機嫌なシンシアと広場へ向かい、空いている場所に腰を降ろす。上を眺めると爽やかな晴れ間で薄い雲が流れている。

「気を遣わせた?」

 シンシアが聞いてくる。気にしすぎだな。

「全然。喜ぶ顔が見たかったのと、前にもらったお礼」

 彼女の腰に手を回して引き寄せると少し顔を赤らめ頭を預けてくる。

「フフ。贈り物なんて初めて。一生大切にする」

「いや、これからもっと増えるか…」

 言いかけたところをキスで口をふさがれる。そのまま抱きしめて深く交わす。

 幸せすぎる。この世界に来た時には激しく後悔していたが、今はこの出会いに感謝している。

 ふと顔を離すと睨んでくる。

「あんた貧乏なんだから、無理しないで」

「これはコレ。それはソレ」

 押し倒すと期待している目で見つめてくる。最高に美人だ。


 そのまま顔を近づけると、後ろから突然声をかけられる。

「あ! ヨシオさん!」

 驚いて体を起こして見ると、あのパンをくれたリリエラが目の前に。

「こんにちは! 久しぶりですね!」

 嬉しそうに言ってくるが邪魔してるよね? この状態の時って声をかけないよね、普通。

「ひ、久しぶり…」

 苦笑いで答えながら座り直し、シンシアも体を起こす。

「あれ!? シンシアさんですよね?」

「え、はい。そう」

 なんとなくワザとらしいリリエラの問いに赤い顔のシンシアが答える。

 嬉しそうにシンシアの手を握るリリエラ。

「お会いしたかったです! とっても素敵な方ですね!」

「あ、ありがとう…」

 どう対応したらいいか戸惑っているシンシア。つか、俺もどうしたらいいかわからん。

「たまたま偶然、お見掛けしたので。運命みたいですね、ヨシオさん」

 シンシアの手を握ったまま俺に向く笑顔のリリエラ。なんか怖いぞ。

「そ、そうか?」

「そうです。また工場に来てくださいね! おもてなししますから!」

 そう言って、シンシアに何かささやいた後、手を振って別れるリリエラ。

 な、なんなんだ? シンシアは固まっている。

「シンシア、何をいわれたんだ?」

「え? ああ、なんか“負けない”って言われた」

 そこでシンシアはハッと気がついて俺の腹をつねる。みるみる顔が怒ってきている!

「ちょっと! 何!? どうなってるの?」

「いや、俺もさっぱり!?」

 慌ててパンをもらった日から接点がないことを言って説得する。

 怪しげな目つきをしていたが最後には納得してもらった。ホッ、良かった。

 しかし、どこ行っても邪魔されるよ!



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