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私は諦めないよ

 

 マルイドは本当に元気になったようで、普通に立ち上がって馬車周辺を調べている。

 ムランの作ったポーションは凄いな! しかし、どうやって作ったんだ?

 それから倒したワイバーンの胴体を観察しに近づいていく。

 背中の突起部分が気になって見ると黒く焦げた跡があり、何か炎か電気で焼かれたような感じだ。

「……たぶん雷に当たった」

 いつの間にか隣に来ていたメイディが推測する。あー、なるほど。

「すると、空を飛んでいたら雷に当たって落ちてきたんだな?」

「…きっと、そう」

 振り向いてニコッとするメイディ。正解なようだ。良かった。

「しかし、そう考えると、よっぽど運が悪いなコイツ」

「……フフ」

 笑うメイディ。だが、危ないときは動いて欲しい。ホントに。

「早くオレに抱きつけよ!」

 ムランが背中に抱きついてくる。あー、うざい。

「それはしないけど、感謝してるよムラン」

「態度であらわせアンポンタン!」

 笑顔で文句をたれるな! この女!


 そんなムランをほっておいて、クレーターの底に向かう。

 そこにはすでにジェルドとマイがいて、辺りを調べてる。

「何かわかったか?」

 聞くとマイが振り返って笑みを向ける。

「ええ、見てよこの骨。たぶん、あの馬車に乗っていた者たちだね」

 俺に近づき顎で地面に散乱する骨を示す。

 ひょっとしてあのワイバーンは、落ちたクレーターを使って、アリジゴクのように獲物が近づいたら引きずり込んで捕食していたのかもしれないな。怖っ!

「遺留品をいくつか回収しましたから、先に上がります」

 ジェルドが荷物袋を抱えてクレーターを上り始める。さすが、調べるのが早いな。

 これ以上ここにいても何もないので、俺も後に続くとマイも隣を歩く。

「フフ。あんたら一見バラバラそうだけど、上手くまとまってるね。感心したよ」

「まーね。付き合い長いからな」

 返事をするとマイが俺の肩に手を置き顔を寄せる。

「私も長くなるからヨロシク、ね」

 ニッと笑みを向けて離れる。はー、ドキドキした。チューされるかと思った。

 そんな俺の表情を見たのか機嫌がいいマイ。おい、誘惑が多すぎ!

「もー! オレも連れてけ!」

 ムランがクレーターの上でスネてる。お前って、いつもそう。


 一応、調査が終了したので、持ち帰れるワイバーンの部位を取っていく。

 後は別の調査隊が来て回収するとメイディが教えてくれた。

 それからは来た道を戻り、野営して町へと帰還した。

 早くシンシアに会いたい。


 ギルドに入ると、マイの姿を見たシンシアが俺に冷たい目を向ける。いや、何もないって!

 マルイドがギルドマスターへ報告しに行き、今日はここで解散となった。

「なんでマイがいるの?」

「フフ。メイディのパーティーに入るから! じゃあね!」

 怒りのシンシアをかわして、笑みを浮かべたマイがギルドから出ていく。つられてジェルドとメイディも出口へと消えて行った。

「シンシア、誤解だから。何もないよ?」

「ホントなの? ムランちゃん?」

「え!? オレ? 特に何もなかったよ。マイがヨシオの事、ベタベタさわってた以外は」

 このアホが余計な事を言うとシンシアが睨んでくる。

「いや、違うから! あー、くそ!」

 カウンターにいるシンシアを立ち上がらせて抱きしめる。シンシアは抵抗せずに手を背中に回してきた。

「いいか? ホントにシンシアだけだから、あ、愛してるのは…」

 くそ! めちゃくちゃ恥ずかしいセリフ。歯が浮きそうだ。

「良し」

 顔を胸にうずめいているシンシアがつぶやく。

 ところでムランさん。いいかげん、背中にパンチするのは止めてもらえませんか?


 □  □


 二階にいるギルドマスターに報告した後、下に降りるとカウンターで例の三人が騒いでいるのが見えた。

 見つからないようにそっとギルドを出ると、路地裏のいつもの店へ向かう。

 しかし、あいつらは変わらないな。ハハ。

 少し暗めの店内で、受け取った酒を持ち、いつものテーブルのイスに腰かける。ふー、落ち着いた。

 と、思ったが無理だ。知っている影が近づいてくる。

「ちょっといいかい?」

「ああ。来ると思った」

 俺の返事にマイが対面に座る。

「ヨシオって何者なの? あんな魔法初めて見たし、それに手負いとはいえワイバーンをほぼ一人で倒したんだよ?」

「俺も知りたいね。あいつは変だし、無茶苦茶だな」

 ニヤリと答える。

 マイは不服らしく目を細めている。

「はん! その内に調べるよ。ガットが気に入ってるのがわかったし、私の目に狂いはなかったってコト」

「そうか。ま、がんばってくれ」

 興味無さそうに言うとマイは口元を歪める。チッ、見透かされてるな。

「少しは応援してよ。でも、ホントに何ともないようだね?」

「むしろ前より調子がいい。とんでもないな、あのポーションは」

 少し酒を口に含み味を確かめ、飲み込む。胃に流れ込む熱い感覚が内臓の状態を確認しているようだ。

 重い雰囲気でマイが見つめてくる。

「どうなんだい? 見たところ、あのポーションは上級よりも凄そうだけど」

「たぶん王都にも無いだろうな。相当なモンだ。だが、報告するなよ?」

「できるわけないじゃないか。ひと騒動起きるよ絶対!」

 ニヤリとしてコップを傾けるマイ。ひと騒動どころか貴族連中が寄って来るぞ。

「いずれ分かるから先に言うが、ムランは古代種の生き残りで、そいつらは魔法を使える種族の元になっているようだ。つまり、魔力が桁外れにある。見ただろ? センティコアの時、鉄の壁が出現したのを」

「目の前でね。フフ、あんたがこのパーティーにいる訳がわかったよ」

 体を崩して楽な姿勢でくつろぐ。これで仲間になるのは決定的になったな。

 だが、さらに釘を刺した方がいいだろう。同じ密偵として。

「いいか? このことは秘密だからな。俺の恩人だし」

「もちろんだよ。そんなの言ったら嫌われるだろ、あいつにさ……」

 マイは目を伏せ、頬を染めて答える。

 おい、本気なのかよ。てっきり内情を探ろうとしているのかと思ってた。仲間に引きずり込むつもりだったが予定外だ。

 後はヨシオに頑張ってもらおう。俺は知らん。

 顔を上げたマイが眉をひそめてくる。なんだ?

「言っとくけど、あんたこそアイツに変な事を吹き込むんじゃないよ? いいね?」

「俺はそんな事しないぜ。せいぜい頑張りな」

「フン。どうだか」

 酒をあおるマイ。はぁ、参ったな。

 マイはコップをテーブルに置くと身を乗り出してくる。

「実は、明日から王都へ向かわないといけなくなったんだ。あんたが見つけた紋章はある貴族のもので、クレーターの底には紋章入りの指輪などがあったの。どうやら極秘で来ていたようだけど、運が悪かったんだろうね」

「何故だ?」

「ふー、私は貴族の監視役なんだよ。この町は協定で貴族がいてはいけないんだ。利益を独り占めしないようにね」

 息を吐きつつマイが説明してウインクする。

 俺と同じ左遷組か。しかもいつ来るかわからない貴族だと。

 そんな俺を見透かすようにニヤリとするマイ。

「あんた勘違いしてるようだから言っとくけど、この町へ送られる密偵は飛び切り優秀な連中ばかり。王国はココを重要視しているのさ。ほら、あれだよ、将来への投資ってヤツ?」

「ホントかよ? おたくがそうには見えないけどな」

 酒を再び飲む。まさか!? 嘘だろ? そこそこ腕には自信があるが、な。

 マイは微笑んでテーブルに手をついて立ち上がる。

「私は必ず戻ってくるから。いい? か、な、ら、ず、ね」

 流し目で力強く宣言すると、さっそうと酒場を出て行く。おお、怖い。

 しかし、素直に人からの評価には応じよう。そうか、優秀か……。

 ここでハッと気がついた。

 また、俺のオゴリになってやがる。



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