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ムランと買い物をする

 

 ムランの作ったポーションは、上級よりもっと上かもしれないぐらいのモノだった。

 ひょっとすると、部分的な欠損ぐらいは元通りに治るかもしれない。

 興奮した私は、この場にあった薬草を全て使い、できる限りムランに作らせた。

 総数四五本。多いいか、少ないかはさておき、このポーションは隠しておこう。

 今、気がついたが、この強大な魔力は私たちの祖先にあったのだろうか?

 するとムランは始祖の力を持つことになる。いや、考えるのはやめよう。訳が分からなくなる。

 最初に私が作成したポーションをハンナに渡して換金する。いつもより少ないが、いいだろう。

 ムランをガン見するハンナを無視して作業場から出ていく。


 約束した市場へとムランを案内する。

 嬉しそうにはしゃぐムラン。

「やっと着いた! で、腕輪を売っているお店ってわかる?」

「……こっち」

 ムランの手を引いて装飾品を売っている屋台へ導く。

 屋台にはペンダントや指輪など女性を着飾る物が所せましと並んでいる。どうも、こういう雑多に並んでいる(さま)を見ていると、ついキレイに揃えたくなってくる。

「うゎあ! いっぱいあるな~。どれがいいんだろ?」

 ムランが腕輪を二、三個手に取って見比べている。腕輪が欲しいのか? それにしても渋い色ばかり選んでいる。もう少し明るい色の方がムランには似合うと思う。

「ねえ、どれが似合うと思う?」

「…ムランは明るい色」

「違うよ! オレじゃなくてヨシオだよ!」

 プリプリするムラン。ああ、なるほど。ヨシオへのプレゼントか。

「…この色」

 濃いグリーンの腕輪を指さす。私は緑色が好きなのだ。

「へぇー。メイディはこっちかぁ。どうしようかな~?」

 嬉しそうに選んでいるムランを見ていると、微笑ましくなる。が、ヨシオにプレゼントなんて、シンシアがどう思うのだろうか?

 悩んでいるムランは何か思いついたようで私を見る。

「ねぇ、メイディも一緒に贈ろうよ! その方がいいよ! 絶対!」

「……いや、大丈夫」

 突然何を言っているんだ。それだと私もヨシオが好きみたいだし、照れる。

「そんなこと言わないでさ、ね! 二人で渡せば文句も言わないよ! きっと」

 満面の笑みで強引にムランが決めてくる。ううっ、こういうのは苦手だ。

「よし! 決めた! さっきメイディが選んだのと、オレはこっち!」

 ムランが私の選んだ濃いグリーンと自分で決めた明るいブルーの腕輪を店主に見せ値段を聞く。

「はいよ! 二つでシルバー一枚だな」

「……私が払う」

「二人で払おうよ! オレもお金あるし」

──結局、二人で腕輪を購入し、ムランに持ってもらう。ホントに良いのか? 私。


 小腹が空いたので広場へと二人、歩いて行く。

 しかし、ムランはよくしゃべる。半分欲しいくらいだ。

「──でさ、あのバカ、メイディに借りた金を返そうと貯めてるみたいだけど、“あとシルバーが一〇枚たりねぇーよ”とか言ってアンジェロの店で酒を飲んでるの。そんなことしてるから散財するんだよね。アホだよね」

「……まったくだ」

 一応、ヨシオは私に金を返す気持ちはあるのか、すっかり忘れてた。今までギルドでもらった報酬をピンハネしてたことは内緒にしておこう。

 とりとめもない会話をしていると広場につく。

 串焼きを買って落ち着く場所を探すと見慣れた後ろ姿が二つ、寄り添っているのを発見した。

「あーーー! ヨシオとシンシアだ! こんなところで乳繰(ちちく)り合いしやがって! ブッ潰してやる!!」

「……あ、待て!」

 とめようとしたが遅く、ムランが猛ダッシュで突っ込んでいってしまった。

 まったく、少しは二人にさせとけばいいのに。


 □  □


 今日は良い日だ。

 朝からムランが一人で出かけたので、のんびりシンシアとデートをしている。

 久しぶりの二人だけでお出かけだから、テンションが上がりっぱなし。おかげで先に愛を重ねてしまった。

 しばらく散歩してから広場でくつろいで、話しをしている。

 主に俺の故郷──地球や日本の事などを聞かせていた。

「ヨシオのいた世界って、すごく面白いね。一度見てみたい! あたしが行っても大丈夫?」

「もちろん大丈夫だけど、別の意味で目立つから」

「何を?」

「つ、つまり、シンシアがとびきり美人だから目立つ」

 口にした途端、シンシアの顔が赤く染まる。くぅ、言った俺も照れる。

「ば、バカ! そ、そそそんなことないよ! メイディの方が美人だし」

 顔を伏せたシンシアが俺の腕をつねる。ハハ、かわいいなぁ。


「オレがいない所で何やってんだよ! オタンコナス!」

 突然後ろからムランが割り込んできた! おい! 邪魔すんな!

「ほ、ほら、ムランちゃんだってかわいいし!」

 いまだに赤面のシンシアがムランを抱き寄せ頭をなでる。ペットか!

「何するんだよ! 離せ! アバズレ!」

「あ、ごめん。何しに来たの?」

 ムランを放してシンシアが聞く。

「……偶然見かけた」

 背後からメイディが出てきた。二人で行動してたのか?

 しばらく騒がしく言い争いをしていたが、今は落ち着いて四人並んで座っている。

 なんかいきなり疲れた。まあ、こういうのもいいか……。

「ほら、これ! オレとメイディから!」

 隣にいたムランが突然何かを突き付けてくる。

「なんだ!?」

 受け取り見るとブレスレットのようだ。ん?

「オレとメイディから。嬉しいだろ?」

「えぇえ!?」

 驚くとメイディとムランが凄い形相で睨んでいる。…こ、断れない。

 視線をシンシアに移すと、ブスッとしている。目で助けを乞うがシンシアは薄目で応える。

 くそ! どうなってんだ!? もう知らん!

「い、一応いただくよ。ありがとう……」

「良かった! これでみんな対等だね!」

 にこやかに引っついてくるムランをなんとか離す。なんでお前らは俺の恋路の邪魔をするんだ?

 後でシンシアに怒られそう。

「……特別な意味はない」

 メイディが俺の肩を叩いて立ち上がると、背を向けて歩き始めた。ホントかよ!? ホントだよね?

 とりあえず、そういう事にしよう。そうしよう。

 あとはコイツか……。ムランを見るとシンシアと言い争いを始めていた。

 止めずらいので放置して広場を眺める。

 よく考えたら、この世界の住人はムランの星の子孫でもあるわけだ。ある意味ではムランの故郷の一つにあたるかも。

 だとすると、この星の宇宙人って俺だけって事か……。

 思わぬ現実に少しヘコむ。

 地球か……。今では遠い存在に思えるな。


 頃合いを見て、言い疲れた二人を立ち上がらせると家路につく。

 シンシアの家まで送って別れる。すっかりムランと同居が当たり前になったな、あの二人。

 安宿へ向かいながら今後の事を考える。

 だが、どう考えても遺跡に行かないと答えは出ない。

 ま、なるようになるか。



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