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冒険に出かける

 

 他に行く当てもないのでムランを肩車してギルドに行く。

 さすがに既に開いていて人の出入りがある。

 中に入り、ケモ耳娘の列に並ぼうとしたが目ざとくシンシアが俺に注目していた。

 しぶしぶ空いているシンシアの所へ向かう。

「なんで真っ直ぐこっちにこないの!?」

 もう怒っている。来たくないからとスナオに言いたい。

「まあ、いいよ。今日は仕事の話しをするから。その汚れた耳をかっぽじって聞きなさい」

 ダメだムカつく。今、気が付いたがシンシアは一言多い。しかも仏頂面だから愛想も無い。

 黙っていると先を続ける。

「いい? そこの掲示板に依頼が書いてある紙が貼ってあるから、その中から自分のできそうな仕事を選んでカウンターに出して。そこで契約をして仕事を始めるの。完了の条件は扱う仕事により違うから気をつけて。ここまでの質問は?」

「字が読めないときはどうするんだ?」

 しごくまともな事を言うとシンシアはため息をつく。

「はぁ。そうだったね。しばらくはあたしが選んであげる。いい?」

「お願いします」

 ホントは断りたい! ケモ耳娘に選んで欲しい。

「じゃあ次ね。あんたに渡した木のプレートは首から吊るすか目立つ場所に貼ってね。それが今のランクで他人にも認識できるようにするわけ。扱う仕事の内容はランクに応じて変わってくるから。ちなみに読めないと思うけど、仕事の依頼票には対応して欲しいランクが書いてあるよ。わかった?」

 睨まれながら説明されるので首を縦に振る。

「仕事が失敗した場合は速やかに報告すること。特に罰則はないよ。ただ印象が最悪になるだけ。あと嫌われるかも?」

 意地悪そうなシンシアの顔。きっと俺の評価は最低だな。

「だいたい以上ね。質問は?」

「受付を変えたいときにはどうしたら……なんでもない!」

 すっごい鬼の顔で迫って来た。怖くて途中で止めてしまう。ポコポコ頭を叩くムラン。気持ちはわかるがまだ俺は生きていたい。

 ついでシンシアが一切れの紙を出してくる。

「ないようね。さっそく依頼するから。これよ。読めないと思うけど、一応伝えるとゴブリン退治ね」

「は? 緑色の?」

「緑色の」

 なんで選んであるわけ? 知っててさっき説明したのか?

「期日はないから頑張ってね。あ、ノルマは最低三匹だから」

「わざとか?」

「何が!?」

 取り付く島もない。凄まれたのでそそくさとギルドを出る。


 とりあえず武器と収納できる物を求め雑貨屋に入店する。

「お、昨日の! いらっしゃい」

 相変わらず鍋の横に顔がある。

 さっそくブロガンに聞いてみよう。

「またいきなりで悪いけど、リュックと武器はあるかな?」

「うちは武器を置いてないぞ。それなら向かいの武器屋に行けばいいさ」

 そう言いながら太った体を動かし商品を漁っている。

「ちなみに武器ってどのくらいするかわかる?」

「ん? そうだな、中型の剣でシルバー一枚ってとこだな」

 ブロガンの動く背中が答える。マジか! 買ったら宿に泊まれないじゃん!

「いや、武器はいいか……。あ! バールはないか?」

「バール?」

 リュックを手に持ち不思議そうな顔をしているブロガン。知らないのか。

「えっと、鉄の棒でこう先が曲がってて何かと便利なものなんだけど」

 身振りを交え説明すると何か思い出したのかニヤリとして再び商品を漁りだした。

 ニュースでもよく流れていたが“バールのような物”は万能な存在だ。たぶん。

「お前の…ヨシオだっけな、探し物はこれかな?」

 カウンターに出された物は確かに説明した形状に近いが、どちらかというと山で使うピッケルに近い。頭部が鉄でできていて、持つ所は木を加工しているようだ。そして大きい。

「これはな、マトックと言って土を掘ったり、木に使う代物だな。どうだ?」

 いや、どうだと言われても。

「ちなみにいくら?」

「アイアン三枚だ」

 おもったより安い。とりあえず残りで三泊はいける。

「リュックは?」

「こいつぁブロンズ二〇枚?」

 大きめの布製のリュック。疑問形なのは無視しても予算内だ。もう決めた。

「あ、じゃあ二つお願いします」

 最後のシルバーとブロンズ硬貨を出しお釣りをもらう。ブロガンは何か気づいたよう。

「おっと、そいつを腰に吊るすベルトはどうだ?」

「あ、おいくら?」

「ブロンズ五枚」

「お願いします」

 残りの金はアイアン七枚、ブロンズ四〇枚。

 そんな訳で装備を整えるとさっそく昨日入った門に向かう。


 門の前まで行くと大きな鉄の扉は閉まっていたので見張り小屋に声を飛ばす。

「おーい! ダン! ベルド!」

 すると小屋から顔が二つ出てくる。

「あー、昨日の! スズキヨシオじゃないか!」

「良雄でいいよ! 仕事に出るから開けて欲しい!」

 ベルドは木のプレートに気がついたようで視線を向けている。

「冒険者になったのか! 今開けるよ!」

 すると前の門が重い音を立てながら少し開く。十分通れそうだな。

「ありがとう」

 手を振り門から外へ出る。

「戻ったら声をかけてくれ! また開けるぞ!」

 手を挙げながらダンが教えてくれる。

 門を背に歩いていく。これからの事を考えると足が震えてきた。

 あんな怪物相手にしたくない。

 よし、ズルして昨日の現場に行こう。

「おい。これからどうすんだ?」

 頭の上からムランが訪ねてくる。

「昨日、落ちた場所に行って、お前が吹っ飛ばしたゴブリンを回収する予定だ」

「あー。跡形もないのもあるかもよ?」

「残り物には福があるさ」

 希望的観測を元に先を急ぐ。シンシアの話しを聞く限り、一歩町の外に出ると危険がいっぱいな感じ。

 早く用事を済ませ帰りたい。


 ほどなく地形がクレーターだらけになった場所へ来ると、脱出ポッドを探す。

 その間、ゴブリンの頭を四つ発見した。損傷はひどいがいいだろう。ムランは汚物を見るような視線を俺に向けている。これはお前がやったんだぞ!

 ポッドが一向に見つからず途方に暮れているとキラキラと太陽を反射する物を発見した。

 近づき見ると半分土に埋まったガラスの破片がある。あの時、ポッドにも撃った弾が当たったのかバラバラになっていた。

「何探してるんだ? もうあの魔物は回収したんだろ?」

 ムランが飽きたようで頭をポコポコする。

「あのポッドの破片を集めて売らないと金が心もとない」

「しっかりしろよヨシオ!」

 キレた! 丸い頭を両手で持ってシェイクする!

「やめろーーー! バカーーーー!!」

「ああああ! 少しはお前も何かしろよタコ! 関係あるだろーーーが!」

 気が済んで地面に置くと目の回ったムランはフラフラしている。ハハッ、ざまあ。

 他に破片がないか探していると近くの地面が爆発した!

 慌てて振り返るとブチキレているムランがワナワナとリモコンをこちらへ向けている。

「地球人……。甘やかせておけば調子に乗りやがって! オレを誰だと思ってる!?」

 イカン。完全に怒っている。しかしお前も悪い!

「む、ムラン落ち着けって! 俺達一蓮托生だろ? がんばろうぜ!」

「ふざけるな! 自分勝手に言いやがって! オレの苦労も知らずに!」

 何言ってるんだ? ずっと俺がお前の世話してるじゃねえか。

「お前も一人で大変だと思う。俺だって同じだよ、な?」

「“な”じゃねぇーーー! こんな世界、みんな滅茶苦茶にしてやる!!」

 絶叫してリモコンを振り回す。ひでえ、八つ当たりだこれ。



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