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異文化交流だな

 

 ヨシオが叫びながらサイクロプスへ向かって駆けていく。

 ネウルはその姿を目で追いながら私に話しかける。

「人族の男は皆、ああなのか?」

「……違う。あんなのヨシオだけだ」

 当たり前だ。あんな巨体を前に突っ込むなんて正気じゃない。だけど、ヨシオだと安心して見れる。何故かわからないが。

「へぇー、たいしたモンだ。私たちも行くよ! しっかり、つかまってな!」

「……お願い!」

 ネウルの体に抱きつくと木から木へ飛び乗っていく。すでに周りにいるアラクネたちも移動して攻撃の機会をうかがっているのがわかる。

 ヘタにこちらから攻撃すると大木ごとへし折られそう。

 下の様子を見るとヨシオが武器に魔力をまとわせているのがわかる。何をするの?


「おらぁあああああ! レェザァアアーーブレードォオオオオーーー!!」

 よくわからない単語を叫びながらヨシオが武器を振るうと、弓なり状の巨大な光の帯が高速でサイクロプスたちを襲う!

 光の帯は、サイクロプスたちの足首の上辺りを次々に両断して背後の木々をも切り裂いていく!

「アァガァアアアアアアアアァ!!」「ガァアアアアアアアアア!!」

 ズズゥン! ズドゥン! ドゥズン! サイクロプスたちは叫び声を上げながら、地面へと倒れていく。

 辛うじて難を逃れたサイクロプスは突然の出来事に唖然としていた。

 すごい魔法だ! こんなの初めて見た。ネウルも驚いて言葉を失っている。

「ムラン、目を狙え!」

「うっさい! わかってるよ!」

 ヨシオの指示でムランがズドン! と、上空から雷を落とすと立っているサイクロプスが叫びながら手で顔を覆って膝をついた。

「マルイド、ジェルド! 後は任せた!」

 叫びながらヨシオは先へ進む。見ると一回り大きな黒いサイクロプスが近づいてくるところだった。


「あいつらのリーダーだ。私らも行くよ!」

 ネウルが木から木へと飛び移り始める。こ、怖い! こんな高いところで飛ぶなんて!

 黒いサイクロプスはヨシオが近づかないように、身近な木を引き抜いては投げている。

 ヨシオは慌ててムランを抱っこして、飛来する大木から逃げている。これではマズイ!

 とっさに魔法のヤリを放ちサイクロプスの肩に当てる!

「ガァアアアア!」

 叫んでこちらに木を投げてきた!

 ネウルが素早く避けながらナイフを投てきして腕に刺さる。が、浅いようですぐに抜け落ちた。

「しっかりつかまって! 囮になるよ!」

 次々に木へと飛び移り黒いサイクロプスを挑発する。私もタイミングを見て魔法を放ち当てていくが、イマイチ効果が薄い。

 完全に敵の目をこちらへ誘導していくが、ネウルの動きが鈍くなってきた。さすがに疲労が出てきたようだ。

「…頑張れ! ヨシオが倒す!」

「ッ、早くして欲しいもんだね!」

 ギリギリかわして逃げるネウル。サイクロプスが木を投げる代わりに叩き始める。

 早くしろヨシオ! 何しているんだ!?

 大木に叩きつけられると木の枝が折れ飛び、あちこちへばら撒かれていく!

 当たっても致命傷にはならないが、確実に傷を負いそうだ。

 ネウルはなんとか逃げているが動きが鈍い。私が重りのようになっているかもしれない。


 突然、激しいサイクロプスの攻撃が止む。

 どうした? 驚いて声を失っているネウル。

 ふと見ると、黒いサイクロプスの腹に大きな穴が空いている。

「ガァウアア!?」

 違和感に気がついたサイクロプスは自分の腹を見てそのまま崩れ落ち、大きな音と共に地面へ倒れた。

 一体何があったの? これはヨシオの魔法?


「師匠! ネウル! 大丈夫か!」

 ヨシオがなぜかムランをおぶって私たちを呼んでいる。

「ハハッ! たいしたもんだ!」

 嬉しそうにネウルは木から降りてヨシオの前に姿を見せる。当然私も後ろにいるから同じだ。

 私たちを認めたヨシオが近寄って来る。つい顔を見るとドキドキしてしまう。静まれ! 私の胸!

「良かった! 間に合わないかと思った! ケガはないか?」

「なんともないよ」

「……どうやった?」

 嬉しそうなネウルに続いて私が疑問を挟む。あんなの魔法以外にあり得ない。

 ヨシオに背負われたムランが顔を上げ、ドヤ顔で主張する。

「オレがやったんだ! ビームでやっつけたぞ! どうだ!?」

「そういうわけだ師匠。コイツが魔法の光線であの怪物の腹に穴を空けたんだ」

 ヨシオのフォローのおかげで大体わかった。“びーむ”って何?

「向こうも終わったようだね。合流しようか」

 ネウルが向きを変えると仲間の元へ歩き出す。ヨシオも隣へ来て進む。

 ムランは魔力切れのようだが、ヨシオの背中でニヤニヤしている顔を見てるとウソかもしれないと勘繰る。

 シンシアがいるのに、自分の好意を隠そうとしないムランに少し嫉妬する。私には無理。

 今、気がついたが、近ごろは師匠らしいことをしていないな。威厳が薄れているのかもしれない。

 町へ帰ったら、みっちり訓練させよう。


 □  □


 マルイドやジェルド、それに他のアラクネたちの所へ行くと、敵を打ち取った後だったようだ。

 俺たちに気がついたマルイドが手を上げる。

「よお! そっちは大丈夫だったか?」

「もちろん大丈夫。これで全部倒したはずだ」

 俺たちが会話している横でネウルがメイディを降ろしている。

 先を見るとアラクネたちがサイクロプスの巨体を処理しているのが見える。なんとも……これは…。

「意外にいい眺めで驚いた」

「だろ? ちょっとこれは儲けものだな」

 マルイドとニヤリと顔を合わせる。ジェルドは真っ赤な顔で上を見ているがチラチラと視線が泳いでいる。無理スンナ!

 ここでも絶賛おっぱい祭り開催中だ。乗り遅れなくてよかった。

 ゴッ! ボコ! 「痛てぇ!」「ブッ!」

 マルイドと一緒に後ろからぶたれる!

 何事かと一斉に振り向くと、冷たい目をしたメイディが杖を固く握りしめている。ヤバい!

 慌ててマルイドと共に手伝いに駆け出す。おぶっているムランがギリギリと首を絞めてきた! 死ぬわ!


 ひとまず片付いたので里へ戻ることになった。

 ネウルは仲間たちの所ではなく、俺たちと一緒にいる。なんでだ?

 広場らしき所には族長とボイドの姿が見える。

「この度はご助力ありがとう。疑っていたことを許して欲しい」

 銀色の髪をなびかせ、族長がひざまずく。これは、どうすんだよ? メイディを見ると一歩、踏み出した。

「…私たちはやることをやったまで。顔をあげて」

「恩に着る、旅人たちよ。歓迎しよう!」

 立ち上がった族長は手を差し伸べメイディが応える。カッコイイな、さすが師匠! しかし、よくしゃべるようになったな。

 チラッと俺たちを見てメイディが族長に注文する。

「一つ。胸を隠してほしい」

「ん!? なんで?」

「…男が見て興奮するから」

 冷たい視線を俺たちに向けると、マルイドとジェルドも明後日の方向を見てる。

 族長もその様子を観察していたようだ。

「ハハハ! なるほど、そういう事か! ならしょうがない。皆に伝えておくよ」

 笑いながらも胸を手で隠す族長。気がついたか。残念。

 すぐに族長が側近のアラクネに伝ええると、大急ぎで動き始める。ああ、これで見納めだな。

「ところで、いいか?」

 マルイドが手を上げ確認を取ると族長が目を向ける。

「今度はなんだ!?」

「あー、今後について話し合いたいんだが、いいか?」

「今後とは?」

 不思議そうな顔でマルイドをのぞき込む族長。少し緊張しているのかマルイドの頬に汗が流れている。

「つまり、俺らが知ったって事は、他の人族も知るコトになる。少なくとも今後、交流が始まる」

「なるほど、お前たち以外にもここを訪れる者が出てくるという事か……わかった後で詳細を。今は歓迎しよう!」

 納得した族長はニヤリと笑いかける。マルイドもつられて口元を上げる。はたから見ると悪だくみしているようだな。

 それから俺たちを歓迎するために場所を移すようで案内された。今日はこの里で一泊だな。



補足:

メイディが指摘するまでアラクネたちは自身の容姿については無頓着で、以前仲間が襲われた時も性別の為と思っていました。

ボイドも外宇宙から来ていたので、偏った現地の知識のため不思議に思いませんでした。

少なくともネウルはナオヤたちと出会ったことで他の仲間よりも先に羞恥心を手に入れました。


いつもお読みいただきありがとうございます。

いよいよ物語も終盤です。最後までお付き合いいただけると嬉しいです。

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