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イプシロン星人の事実を知る

 

「事故って?」

 青い顔のムランに代わりタコ型ロボットに聞く。

「我々調査隊がこの星に飛来する間際、外的な干渉の要因によりタイムスリップが起きた。この事故により、乗務員の九〇パーセントが死亡、ロボットの三〇パーセントが故障した。調査した結果、推定三千年前に飛ばされた事が確認された」

「す、すると三千年前からここにいるのか?」

「そのとおり。私は最後の生体モジュール型ロボット」

 微動だにせずタコ型ロボットは答える。感情が薄い気がするな。

 顔色が少し戻ったムランが俺の服をギュッと握って恐る恐る尋ねる。

「そ、その時の仲間はどうなった?」

「当時、文明の兆しがあったこの世界に溶け込む者、この場に残って暮らす者と思い思いに過ごしていた。寿命が約二〇〇年のため、全て死亡。子孫が現在もこの星で生産活動を行っている」

「子孫……。子孫の特徴は?」

「確認できたのは三種族。他は薄いながらもつながりがあると考えられる。主な特徴は“魔法”と呼ばれるこの世界独特の現象を発現できる能力を持つ」

 皆、一斉にメイディに注目する。マジかよ! メイディの祖先はムランかよ!? いや、違う。なんかこんがらかってきた。

 しかもメイディがモジモジしてるし。見られて恥ずかしいのか?


「ところで、君の名前はあるの?」

 ふと思って聞くとタコ型ロボットは一本の腕を頭につける。それは前にムランがやったハテナポーズだぞ。

「ありません。アラクネたちには“使者”と呼ばれています」

「じゃあ、“ボイド”は?」

「勝手に決めるなーー! アンポンタン!」

 ムランが怒りながら脇をつねる。地味に痛いって!

「チキュウ人は興味深い。名前を登録した」

 気に入ってもらえたようだ。表情が乏しいのでイマイチわからないが。ムランは膨れている。

 それからボイドの話しを聞いていった。

 同じロボットが寿命で停止するとボイドはその部品を再利用し、自分を整備してここまできたようだ。

 アラクネは一〇年ぐらい前に移り住んできたとのこと。暇だったので家など生活面でのアドバイスをしていたら神のように(まつ)られたようで、この場所を“神殿”、ボイドを神の“使者”とされたようだ。手足がいっぱいあるから親近感があったのか?


 なぜこの星に調査に来たかということに関しては、ムランも知っているらしく重い口を開けてもらった。

 どうやらイプシロン星の寿命が近いらしい。といっても、あと一万年は持ちそうとの予想だ。

 そのため種の生存のために移住先を探していたようで、あちこちにある生存可能な惑星を調べているようだ。

 理想は知的生物が高度な文明を築いていない惑星を求め、もし知的生命体がいたとしても対話が可能かどうかを調べるのが目的なようだ。

 それで俺をさらったのか、このアホは。ムランを睨むと二ヘっと笑い返される。おい! ごまかしてるんじゃねぇ!

 だいたいあの時、対話する気なかったじゃねえか! 翻訳すらしてなかったぞ!

 ヤバい、だんだん腹が立ってきた。くそ! これがあのタコ型だったら思いっきりド突くのに……。

 体に押しつけられているムランの胸の感触が怒りを静めてくる。くそっ、おっぱいに負けた。

 ついでに次の遺跡について聞くと、もし運が良ければ避難用の宇宙船があるかもしれないとの事だった。おお、ラッキー!

 ジェルドが地図を持ち出し詳しい場所を聞いている。これで希望が見えてきた。


 一通り話しが終わり、遺跡から出ると周りが慌ただしくなっているようで、アラクネたちが動き回っている。

 俺たちに気がついたネウルが寄ってくる。

「ちょうど良かった。折り入ってお願いしたいんだけど」

「何を?」

 聞くと、少し言いにくそうに足を折って目線を合わせる。

「実はサイクロプスの集団が近づいているのを発見した。私が出会ったのは、あいつらの偵察だったみたい。身勝手な申し出だけど私たちを助けてくれないか?」

 マジかよ!? 気持ちはわかるけど、あの巨体がいっぱい来るのか……。

 メイディに向くとうなずいている。マジか! 大丈夫なのか? ネウルに顔を向けると期待している目をしている。

「わかった、手伝う。どうすればいい?」

「ありがとう! 私たちでは一体を相手するのがやっとだ。期待している!」

 ネウルが俺の手を握ってくる。うっ、上半身だけ見ると美人すぎだろ! 照れる。

「わ、わかった。じゃ、じゃあ行こうか。案内してくれ」

 ぎこちなく返事するとムランとメイディに背中をつねられる。くそ! しょうがないだろ!

 笑顔のネウルが先導して決戦場所へ案内する。

 隣を歩くムランを見るとなぜか睨まれる。

「どうしだんだよ?」

「はぁ!? このスケベ! アンポンタン!」

 怒りのムランが俺の肩にパンチしてくる。もう、なんだよ! 助けを求めメイディに視線を送るとアッカンベーをされた。師匠!

 反対側に回ったマルイドがニヤリと無言で肩を叩く。頑張れじゃねえよ!


 現場に着くと、そこは木々の乱立した場所でいかにも巨体での移動が難しそうな立地のよう。逆にクモ足のアラクネには有利みたいだ。

「ここに仲間がサイクロプスたちを誘導する。私も一緒に戦うのでお願いする」

 ネウルが頭を下げると仲間はそれを笑顔で受け止めている。いや、ジェルドだけは緊張の面持ちだ。汗が半端ない。

 遠くからドスンと音がする。サイクロプスが来たのか?

 大木の上の方で素早くアラクネたちが移動しているのが見え、手には弓や短いヤリ、ロープなどを持っている。

 近づかないように戦うつもりのようだな。すると接近戦は俺たちだけか……。

「ネウル、頼みがある」

「何? なんでも聞くよ」

 ネウルがニコリとしている横にメイディを引っ張ってくる。そんな嫌そうな顔をするなよ、師匠。

「師匠を後ろに乗せられないか?」

「乗せる? やったこと無いけどいいよ。ほら!」

 メイディをひょいと軽く持ち上げ後ろに乗せるネウル。クモの部分に跨がり、おっかなびっくりのメイディの手を取る。

「師匠、ネウルと一緒に援護して欲しい。大丈夫?」

「……わかった。死ぬな」

 手を離したメイディが微笑んで俺の頭をなでる。ヤバい、意味がわからない。だが、魔物相手に直ぐ動きが止まる師匠はこれで安心だ。

「オレはどうなんだよ!」

 いきなりムランが出てきた。そんな心配そうな顔するな!

「いや、お前は俺の背中を守ってくれ。相棒だろ?」

「そ、そうだよな! へへっ!」

 今度は嬉しそうな顔するな。犬か! ついでマルイドとジェルドに向く。

「マルイドとジェルドは敵に近づかない範囲でサポートしてくれ」

「ああ、わかった。気をつけろよ」

 ニヤリとマルイドが青い顔をしているジェルドの肩を叩く。


 ムランを伴って木が倒される音のする方へ向かう。

 ギギギィーーーー、ドスン! ドォン! 乱暴に倒される音が響く。

 後方の大木の上を見るとアラクネたちが待ち構えている。どうやらこの辺だな。

 すると前方の木々の間から誘導しているアラクネたちが出てきた。

 ゴバッ! ドォオオン!

 巨大なハンマーを振りかざし目の前にある木を叩き折り、一つ目の巨体が影から現れる。

 再び対峙すると緊張してくる。背後にいるムランに話しかける。

「ムラン、絶対に離れるなよ!」

「わかってるよ! 一生離れないからな!」

 いや、違う。なんで一生なんだよ! 睨むと満面の笑みで応えるムラン。もう一度、タコ型に戻ってくれ! やりずらい!

 そんな事をしているうちに複数の長い影が俺たちを覆ってきた。

「行くぞぉおおおおーーー!!」

 叫びながらハルバートを手に走り出す!

 後ろからムランが追いかける音が聞こえる。

 見える範囲にはサイクロプスが五体。五つの目が俺を捕らえた。

 これはキビシイかも。



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