アラクネを助ける
偵察に出ていたマルイドの話しをまとめるとこうだ。
俺たちのいるこの場所から一刻ほど行った所にアラクネの巣があり、その少し先に四角形の遺跡が見えたとのことだ。
どうもアラクネは遺跡を守るようにいるとマルイドが推測している。
そのため、迂回しても見つかるとの事。うーん、今回は厳しいな。
アラクネについては見える範囲ではメスしかいないようで、気になる胸はブルンブルンと見えているらしい。というか上半身は裸のようだ。ゴクッ、この情報が一番重要かもしれない。
話している間にどんどんマルイドの顔が青くなるのは気のせいだ。もの凄いキツイ目で睨むメイディが恐ろしいなんて言えない。
とりあえず今後どうするか皆で考える事にして、俺は川を探して水を確保する役目になった。
なるべく仲間のいる場所と離れないように気をつけながら険しい森の中を歩いていく。
「なんか久しぶりだね。二人っきりってさ」
「いや、なんでオマエがいるんだよ?」
隣で歩いているムランを睨むとニヘっと笑う。おい! 嬉しそうにするな!
あ、いい機会だから聞いとくか。
「ムラン。前から思ってたんだけど、お前さ、想像がヘタだろ?」
「えぇ!? やぶから棒に何だよ! そ、そそそそんな事、ないよ!」
めちゃくちゃ両手を振ってムランは否定しているが、焦ってるの丸出し。
「今、出してみろよ? ビームを。できるだろ?」
「ウソ! 今!? ハハ、じゅ、準備が必要なんだ! そう! 事前に練習しないとね!」
ムランが人差し指を立てて説明し始める。顔が汗だくだよ。
「もう、無理スンナ。正直に言えよ。ここには俺しかいないから」
なんとか取り繕うとしているムランの頭をなでる。なぜ目を細める?
「……わかったよ、言うよ。オレさ、空想とか苦手なんだ。だからオレの世界であった武器とかって、実際に使ったのを見た事なくてさ。この星で使った武器は火の玉と似たようなモノだし」
「何か映像で見たこと無いのか? 例えば映画みたいなのとか」
「オレはあまり爆発とか嫌いだから、もっぱら恋愛モノが好きかな。あ、あとコメディとか」
ニッと笑顔で答えるムラン。お前の趣味は聞いてねえよぉおおお!
だが、これで分かった。だから目の前で見た魔法ばっかり使ってたのか。
「そうか。話してくれてサンキュー。俺もあまり無茶言わないようにするよ」
「へへ。ヨシオだけだぞっ!」
嬉しそうに言うんじゃねぇ! “ぞっ!”じゃねえよ!
前より機嫌が良くなってるぞ。何かやらかしたかもしれん。
しかし、よく考えたら生まれた星が違うだけで普通の女と同じだ。ヤバい、意識したら負けだ。シンシアに殺される。
「シャァアアアアアア!!」
いきなり、どこからか叫びが聞こえる。
ムランと目配せして声の方へ向かうと何かが争っている音が大きくなってくる。
茂みをかき分け、そっと前方の現場をうかがう。
と、そこには上半身裸の女性で下半身はクモ──アラクネが巨大な一つ目の背の高い大男と戦っている。あ、知ってるわ。サイクロプスだな。
今はアラクネが劣勢のようで声を上げて威嚇しているが、身体中にアザと傷が見える。
アラクネは素早い身のこなしでサイクロプスが振るう太い丸太の武器を避けて、鋭い爪で腕に傷をつけているがあまり効果なさそうだ。
「どうするんだよ?」
隣のムランがささやいてくる。そう、俺の頭に恩着せがましい計画が立ち上がる。これならイケる!
「よし、助けるぞ! 姿は違えど美人は恩に報いてくれるハズ!」
半目のムランが無言で俺の脇をつねる。痛いって! 睨むとプイッと横を向くムラン。くそ!
ちょうどその時、サイクロプスの攻撃を避けそこなったアラクネがブッ飛ばされる! ヤバい!
「助けにいくぞ! ムラン!」
叫んで一気に走り出す。
「オマエの相手は俺だぁあああああああ!!」
サイクロプスの前に躍り出ると魔法のヤリを飛ばして命中させる!
「アァガアアアアアアァァ!」
胸に刺さったヤリの痛さに声を上げ、俺を睨むサイクロプス。と、ついで火の玉が無数飛来して爆発する! ムランやるなぁ。
だが、あまりダメージがないようで丸太をこちらに振り上げてくる!
ひぇええ! なんとか避ける!
ドゴォオ!! 地面に突き刺さる!
「怖えぇよ! 電撃アタァアアアアアアック!!」
ハルバートを構えて叫ぶと上空から稲妻が一喝、サイクロプスに突き刺さる!
「ハァアア、ガァアアアアアアアアア!!」
全身しびれたのかブルブル硬直してズドンと倒れる!
今だ!
サイクロプスの巨体に飛び乗ると武器に魔力を這わせ首を突く!
「アァガァアアアプゴポゴォゴポポ……」
口から血を吐き出し叫ぶ声を無視して体から降りると横に回り首に切りかかる!
ぐっ! 思ったより硬いが刃を通して切断に成功した! 離れた首がゴロリと地面を回った。
すると硬直した体がダラリとなる。これで安心だ。
周りを見渡すとアラクネが近くで倒れているのを発見した。
急いで駆けつけ肩を抱く。
「おい! 大丈夫か?」
見たところ大したケガはなさそうで良かった。体をゆすって起こす。
「言葉はわかるか? おい?」
「うっ、うぅうう……」
気がついたようだが、あまり意識がないようだ。
水筒の口を開け口に含ませる。少しは飲んでくれているようで首筋が上下している。
「生きてるの?」
恐る恐るムランがのぞき込んでいる。
「ああ、生きてる。あまりコイツの後ろに回ると動いた時に足が刺さるぞ」
注意するとムランが慌てて俺の背中に抱きついて肩から見ている。おっぱいが当たってるぞ!
すると意識が戻ったのか、アラクネは薄目を開ける。
「あ……だ、誰?」
「俺はヨシオだ。こいつはムラン。あの巨人から君を助けた。わかる?」
アラクネは首を振ってから回りを見渡し、俺たちに気がつき目を見開く。
「ひ、ひとぞく?」
「そうだ」
「い、イヤァアアアアアアアアア!」
アラクネは叫ぶといきなり体をのけぞらせて離れようとしてくる!
「落ち着け! 何もしないから! わかるか? 何もしないって!」
なんとか抱き寄せ暴れないように踏ん張る! クモの足がバタバタしてもがいているがなんとかしのぐ。
しばらくは離れようとしていたが無理とわかって、ガクッと体の力が抜ける。
「こ、殺せ。慰みものにするなら殺せ!」
今度はキッと睨んでくる。なんでそうなるんだよ! ほら、怒ったムランが背中をつねる。
「いや、しないし。落ち着いてくれ。そっちの下心は無いから! む、胸は見るけど」
「ふざけんな! やっぱりオッパイ好きじゃないか! このアンポンタン!」
なぜかムランが激高して頭を叩く。痛てえよ!
「待て、ムラン! 違う! 隠してないから形のいい胸が丸見えってこと!」
「ジックリ見て何言ってるんだよ! トウヘンボク!」
ムランが両肩をギリギリとつかむ! 痛てええええ! 半端ねえ!
「痛いんだよ! 静かにしてろよ! この人がビックリするだろが!!」
「絶対にシンシアに告げ口してやる!」
捨て台詞を吐いて俺の後頭部にヘッドバッドをかますムラン。イッテェエエエ!
ハッとアラクネを見ると目が点になっている。
しかも両手で胸を隠してるし、どんだけ嫌なんだよ!




