新たな遺跡へ
「来たな。じゃ、始めようか」
ラウンジのテーブルに座っているマルイドが俺とムランを確認すると話し始める。
テーブルにはメイディとジェルドも座っている。ここに集まっているのは今後の予定を話し合う事にしていたからだ。
俺の体調もあって、すぐにには行動を起こせないのが心苦しいが、他のメンバーにもやることがあるから早めに決めようとなった。
すでに印のついた地図がテーブルの上に広げられている。
「よし、今のところ行ける場所は二ヶ所、一つは荒野の先ともう一つは森の奥。ムランはどちらがいいかわかるか?」
マルイドが大人しく座っているムランに目を向ける。ムランは目を合わせず下を向く。恥ずかしがりめ。
「わかんないよ。オレも手掛かりを探しているんだけど、さっぱり」
「そうか。なら、しかたないな。適当でいいか、誰か希望はあるか?」
ため息をついたマルイドが皆に話しを振る。
「俺は森がいいかな。前は荒野だったから別の所に行きたい」
「相変わらずだな、ヨシオは。もう少し考えろ! メイディとジェルドは?」
なぜかマルイドに怒られる。いや、だってどっち行ってもわかんないじゃん!
「……まかせる」
「私は皆さんと同じでいいですよ」
すっかり人任せな二人。マルイドは頭を振って嘆いている。オイ!
「いや、マルイドはどうなんだよ? 何かあんのか?」
「俺は無いから聞いてたんだ。それじゃあ、森の遺跡だな。決まりだ。この地図からすると調査団も行ったことのない場所だぞ。大丈夫か?」
「……楽勝!」
メイディが俺を見て笑う。やめてくれ! 俺に頼るの!
「師匠、もう少し頑張ろうよ?」
「……な、に?」
ギロリと睨んでくる。怖っ! 最近、メイディの当たりが強いんですけど。
マルイドが笑って俺の肩をバンバン叩いてくる。
「ワハハ! よし! 細かい事は後でだな。今日はヨシオのランクアップ祝いだ! 飲むぞ!」
「おおおおぉ!! 行こう!」
嬉しくて拳を上げてしまった。だが、次の瞬間、みなが俺から顔を背ける。どうしたんだ?
「ダメにきまってるでしょ! バカ! 今日は大人しくしてなさい!」
いつの間にか後ろにいたシンシアが俺の両肩をつかんでいる。俺は大丈夫だって!
「気持ちは嬉しいけど、お祝いは明日にして。この人、すぐ無茶するから。いい? さ、今日は帰るよ」
シンシアが俺を立ち上がらせると強引に連れだす。ああ、待てって!
仲間を振り返ると、マルイドとメイディが苦笑いで手を振り、ムランが膨れて、ジェルドがビビっている。
今日の飲みが無くなった、残念。
「いい? ホントに今日は大人しくしてて」
そして、シンシアの家のベッドに強制的に寝かされている。
「仕事はどうした?」
「休んだ。あんたが心配だから手につくわけないじゃない」
少し顔を赤らめ俺の頬をつねってくる。なにコレ、かわいい。
もう無理。がまんできない!
「あ! ちょっ!」
シンシアの手を引っ張って抱きしめる。
「べ、ベッドにいるからいいだろ?」
「アンポンタン!! ダメだって!」
グーで殴られた。痛い。サッとシンシアが離れる。ケチだ! 心配は嬉しいケド。
「もー! バカ! あたしだって我慢してるんだから、あんたもガマンしろ!」
「シンシアも?」
カーッと赤い顔になったシンシアが背を向ける。
「バカ! 大人しくしてて!」
背中が怒って、ズカズカと台所へ向かっていく。ハハ、本音ダダもれ。
その後は静かにしてベッドでゴロゴロして過ごした。
なんというお預け感……。
□
こんな事ならもっとイチャイチャすれば良かった。
「いつまでブツブツ、何言ってんだヨシオ。行くぞ!」
マルイドに顔を向け舌を出すと歩き始める。苦笑いで対応するマルイド。ちくしょー。
「シンシアのコト考えてだんだろ! トウヘンボク!」
ムランが背中にパンチしてくる。図星だが地味にパンチが痛い。くそ! 嫉妬してんのか?
振り返り睨みつけるとヘタクソな口笛を吹きだす。そんなん、誤魔化してねぇよ!
深い森の中を進んでいる。
ここは前に調査団で来た場所より奥へ入ったところだ。デコボコしている地形にツタが草木に絡み不思議な花をつけている。
まだ昼なのに上空に張った木の葉が太陽を隠している。
光が薄っすらと差しているおかげで前方は確認できるが、奥の方は暗くて見えない。
先頭はマルイドで、その後を俺、ムラン、メイディが続き、ジェルドがおっかなびっくり最後を歩いている。
休んだ次の日から遺跡へ向かい旅立った。結局、シンシアとは何もできなかったのが悔やまれる。
魔物はゴブリンが数匹現れたぐらいで特に危険は無かった。
ひっとして前回、オークを倒したのが効いているかもしれない。
野宿をして、さらに先へ進む。
途中で立ち止まり地図を確認する。
「たぶん、もう少し先のはずです。このまま真っ直ぐ行けば大丈夫です」
ジェルドが難しい顔をして地図と森を見比べている。道は合っているようで安心した。
「よし! 行こう!」
号令をかけ、目的地へ向かって歩み続ける。今回はやけにムランが大人しい。なにか悩んでいるのか?
それから野宿を数回して移動したところで、斥候をしていたマルイドが戻って来た。
「おい、この先はヤバいぞ! アラクネの巣の後ろに遺跡があったぞ!」
「アラクネって何?」
不思議そうな顔でムランが尋ねる。あれだろ、クモみたいなやつだろ?
額の汗をぬぐいながらマルイドが説明する。
「俺らと同じ上半身で下半身はクモの魔物だが知能は高い。独自の文化を持っているみたいだが、俺も詳しくは知らん。初めて実物を見たぜ。あの胸……」
「そこを詳しく!」
ハテナ顔をしているムランを放っておいて、ゴクリとつばを飲み込んだマルイドに迫る。
「ど、どうしたんだヨシオ!? 何を詳しくだ?」
「胸!」
「エ!? お前、シンシアがいるだろ!」
「詳しく!!」
マルイドの胸倉をつかんで迫ると、後ろから叩かれる!
ボグゥ!
「痛てぇ!」
振り返ると冷たい目をしたメイディが杖を振り上げているところだった。
「ま、待て! 師匠! 違うんだって、俺が聞きたかったのは上半身裸で寒くないかって事!」
「アンポンタン! やっぱりオッパイが好きじゃないか! ムッツリスケベ!」
ムランが怒ってパンチしだす。痛いっての!
メイディが杖を俺に突き付けてくる。今はフードを取って怒りの眼差しが良く見える。怖いよ師匠!
「……帰ったら伝える」
「ごめんなさい。魔が差しただけです。やめてください。お願いします、師匠!」
土下座で謝るが、その後は二人にボコボコにされた。トホホ。
「落ち着いたか? お前ら、場所を考えずに暴れるな! 滅茶苦茶目立つだろ!」
そしてマルイドに説教される俺とムランに師匠。頬を染めたジェルドがその様子を見ていた。絶対にアラクネの想像をしてるな。
師匠…一応、リーダーなんだろ? あと、いまだ俺を睨むのをやめてください。




