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魔物が大量すぎる

 

 地鳴りが少しずつ増え、響くようになってきた。こんなんで休めるか!

 ムランが俺の服の袖を握ってきた。ひょっとして怖いのか?

「大丈夫か?」

「へ、へへ平気だね! 全然大丈夫!」

 青い顔して強がるムラン。ダメかも。メイディに目を向けると困った顔をしている。完全に当てが外れたようだ。

 顔をふせたムランが寄り添ってくる。あのタコの時の勢いどうした?

「オ、オレさ、よく考えたら、いつもヨシオに隠れていたから一人だと初めてかも」

「隠れてたじゃなくて俺を盾にしてたんだろ。お前の方が魔力も多いし大丈夫だろ? それに俺が守るよ」

 ムランの頭をなでるとフルフルうなずいてくる。なんだこれ? かわいいぞ。ハッとメイディを見ると睨んでいた。怖い!

 視線をそらしマルイドを見ると、意外にくつろいで俺に気がつくとニヤリとし、ジェルドの顔は青くなっている。ここにもいたよ。


 地響きのする方に顔を向けると、遠くに砂煙が上がっている。結構近づいてきているがまだ姿が見えない。

 のんびり休むなんて無理。というか気になって仕方がない。ベテラン風な冒険者たちはドッシリ構えているようで談笑している。

 体の片側が熱いと思ったらムランがピッタリとくっついていた。そんな怖いか? まあ、無視していよう。

 荒野に広がる砂埃がだいぶ大きくなった頃、三頭の馬にそれぞれ乗った冒険者たちが戻って来たようだ。ドノバンが迎えに行き話しを聞いている。もうそろそろか?

 やがてドノバンが皆の前へ来ると一望してから腰に手を当て口を開く。

「そろそろだぞ! 全員立ち上がって溝から下がれ! 弓を持ってる奴は前へ出て並べ! その後ろに魔法使いだ! いいか、数を減らせば町の外壁が防いでくれる! 奴らは死なないと止まらないぞ!! 行動を!」

 そして、腰から太い剣を抜き頭上に掲げる。

「町を守るぞ!! 誰もくたばるなよ!」

「ウォオオオオオオオオオオオ!!」

 拳を上げた冒険者たちが叫ぶ! 俺も叫ぶ! よく考えたら町にはシンシアがいるし、知り合いも増えた。何が来るのかわからないが守る!

 弓を持った冒険者たちが前に出て並び始める。マルイドとジェルドに顔を向けうなずくと、二人がニッとして返事をする。

 メイディとムランを伴い、弓を持つ冒険者の後ろに行く。

 前にいる冒険者が振り向くとマイだった。俺たちを認めると口の端を上げ元に戻る。いよいよか…。

 俺を挟んで隣にいる二人を見るとメイディは前を見て集中しているようだ。ムランは両手を握ってモジモジしている。

「ムラン。おしっこか? 今のうちに行った方がいいぞ?」

「バカ! 違うよ! 緊張してんだろ! トンチンカン!」

 赤い顔して俺の肩にパンチをしだすムラン。勘違いだった。しかしウザい。


 ド、ド、ド……

 やがて砂煙が近くなった頃、黒い集団が見てきた!

 どうやら四足の魔獣のようだ。牛かな?

「弓、用意しろ!」

 後ろからドノバンの叫びが聞こえる。前にいるマイや他の冒険者が弓を構える。矢は手に持ったままだ。

 段々と魔獣の姿が見えてきた。大きい角が二本生えたイノシシのような頭にヤギのような体。そしてデカい。サイズは牛ぐらいありそうな魔獣が砂煙を上げながら突進してくる。当たったら死ぬな、コレ。

 相手の姿を確認したムランが息を飲んでいる。

「師匠」

「……何」

 フードを被ったメイディが頭を向けるが、口辺りが見え目元は影で隠れている。

「最初から全力でいくから。魔法を使う」

「……わかった」

 口元をゆがめてメイディは再び前を向く。


 ドドドドドドドドドド……

 魔獣がずいぶん近づいてくる。迫力がスゴイ! 煙の様にモクモクと砂塵が舞い上がっている。

「矢をつがえろ!」

 ドノバンの叫びで一斉に矢をつがい準備する。

「撃て!!」

 一斉に矢が黒い集団に襲いかかる!

「魔法も撃て!!」

 再びの命令に戸惑う。えぇ! 魔法もかよ!

 隣のメイディを見ると火の玉を発射している。俺も慌てて魔法のヤリを飛ばす。

 黒い集団の先頭を走る魔物たちが次々に倒れるが、それを避けるように後続が迫って来る。あ、巻き込まれて四~五匹が転がっているのが見えた。

 だが、数はそんなに減ってないみたいだ。その間も矢と魔法がひっきりなしに飛んでいる。

 ムランを見るとガタガタ震えて立っている。おい! 頑張ってくれ!

「ムラン! 大丈夫か!?」

「だ、ダダダメかも」

 青い顔をして俺に目を向け、倒れそうな勢い。いつもあんなに威勢がいいのに!

 とっさに抱きしめ背中をさする。

「頼むよムラン、お前が必要なんだ。攻撃しなくてもいいから、何かバリアみたいのはできるか?」

「ヨシオ……」

 ムランがギュッとしてくる。横目で魔獣を見ると近づいてくるのが見える。数が多いので倒してもキリがなさそうだ。

「落ち着いたか?」

「…うん」

 顔を上げるムランに血の気が戻ったようで頬に赤みが差している。ホッ、良かった。

 体を離し、溝の先を指さす。

「すまないが、仲間に被害がおよぶ前にバリアか鉄の壁を出せないか? あの溝の範囲で」

「う、うん。やってみるよ」

 少し戸惑いながらもうなずくムラン。あまりに素直すぎて俺がビックリする。マジかよ!

 目を閉じたムランが集中しだす。険しい顔つきに苦労している様が見て取れる。あることに今、気がついた。が、後でいいか。

 弓矢が尽きたようで前にいるマイが振り返る。その眼には諦めの色が見えた。

「攻撃をやめろぉーーー!! 一旦やめてくれぇええええ!!」

 周りに向かって叫ぶと、驚いたのかピタリと矢と魔法が止む。隣のメイディはフードを外して俺を見ている。説明なくてスマン。

「ムラン!」

「やってやるよぉおおおおおおお! 壁よ!! 出ろぉおおおーーー!!」

 目を見開き両手を上げ叫ぶムラン。カッコいいな!

 すると溝に沿った手前にフッと、鉄の壁が現れる!


 ドドドドドドドドドドドドドド!!

 目前に迫った魔獣が突然現れた壁にそのまま突っ込む!

 ゴッツ! ガガゴッ! ゴガン! 次々に壁に当たる音があちこちに響く!

 だが、押されているようで壁の一部が膨れてくる。おおい! 大丈夫か?

「ヨシオ…」

 辛そうなムランの声に顔を向けると大量の汗をかいて眉をしかめている。

「頑張れ! ムラン! もう少しだ!」

「も、もう少し……」

 なんとかうなずくムラン。あまり長くなさそうだ。頑張れ!

「師匠! 魔法の準備を!」

 メイディに向くとうなずく。

「もうすぐ壁がなくるぞぉーー!! 各自準備して、壁が消えたら攻撃してくれーーー!!」

 ついで叫ぶと、金属の触れ合う音や何かを取り出す音がガチャガチャとあちこちで鳴っている。聞いてくれているみたいだ。

 ガゴッ! ドガ! 「ギィイイイイイイ!!」

 ぶつかり合う音と魔獣の悲鳴が響く中、壁に亀裂が走る。

「ヨシオ、も、もう……」

「もう大丈夫だ! 無理させてすまない!」

 倒れそうなムランを支えると同時に壁が消える!

 するとなだれ込むように魔獣が来る!

 ドドドド、ドドドド!

 どのくらい減ったのかわからないが先ほどより少なくなったみたいだ。

「師匠!」

「……わかってる!」

 メイディが片手を上げると光の玉が浮き上がり、光線を射出し始める! おい! パクリだ!

「メイディに続け!」

 後ろからドノバンの叫びが聞こえる。と、矢と魔法の攻撃が再び始まった!

 ムランをその場に座らせ、魔法のヤリを射出しつつ様子を見る。

 突進した魔獣が溝にはまり転がるその上を、さらに魔獣が踏みつぶして足を滑らせ倒れる。だがその体を別の魔獣が乗り越え突進してくる。

 黒い魔獣共が近づいてくる。はたして俺に大規模魔法はできるのだろうか?



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