魔物退治に参加する
イスにそれぞれ座ると改めてギルドマスターが相対する。
「先ほどシンシアが叫んでいたからわかると思うが、俺がドノバンだ。で、何故呼んだかというと、な」
おもむろにドノバンがムランを見る。
「君だな。使い魔かと思えば妖精で、今は大きくなってる。どういうことだ?」
視線を受けたムランは固まっている。そういうことか……。確かにおかしいもんな。わかるが誤魔化さないと。
「コイツが古代種の生き残りなのはご存知ですか?」
俺が発言すると片眉を上げて視線を送るドノバン。正直、迫力ありすぎる!
「ああ。報告は受けてるよ」
「南の荒野で遺跡を調査していたら古代文明の魔法? が勝手に起動して小さなムランが大きくなったんです。これについては一緒に行ったマルイドにも聞いてもらってもいいし、メイディでもジェルドでも同じです」
「フム。するとその魔法のために体が変わったという事かな?」
「そうです」
「その遺跡は調査団が調べた時には何もなかったようだが、どうなんだ?」
「遺跡は同じ種族の者を識別する魔法がかかっていて、ムランだけが開けられたんです」
もうアレだ。“科学”を“魔法”に置き換えて話すしかないし、間違っていないはず。
ドノバンは少し前のめりになる。
「遺跡はどうなったのかね?」
「えーと、爆発しました。どこかで誤った魔法が働いたようで」
俺の答えにドノバンはイスに深く座るとニコッとする。何だ?
「ハハハ! 先にマルイドに聞いていたんだよ。だいたい同じ内容だな。信じがたいが不思議な話しだ」
あー良かった。一安心だ。ドノバンは面白そうに俺を見る。
「しかし、良く回る舌だな。ホントに冒険者か?」
「いや、前の職業が行商みたいな事をしてたんで……」
言えない! 外回りのサラリーマンなんて。だいたいどう説明すればいいんだ?
「ホォ。面白い。そこまでかしこまらくていいぞ。なんたって身内になるんだからな! ワハハハ!」
「叔父さん!!」
ドノバンの感想にたまらず拳を握ったシンシアが叫ぶ。こんな身内ってアリかよ。
「よくわかった。明日の討伐には参加予定だったな。シンシアを泣かすなよ」
ニヤリとしてドノバンが立ち上がる。怖い笑顔。対照的にシンシアは赤い顔。
つられて俺たちも席を立つと真っ赤なシンシアが先導してドアを開けドノバンが見送る。
「では、またな!」
「失礼します」
挨拶して部屋を出る。ムランはカチコチに固まったままだ。コイツはあれか? 大きくなっても人見知りなのか?
「もー! 挨拶するなら先に言ってよ!」
シンシアが怒っているが、結婚する気満々じゃん。ムランは膨れて一言も発してない。
三人で廊下を歩き下に降りていく。はぁ、肩の荷が下りた。
カウンターではメイディたちが待っている。意外に律儀だな。
とりあえず戻ってギルドマスターとのやり取りを報告した。もちろん、プロポーズとかの話しは無しで。
「すまなかったな、口止めされてたんだ」
マルイドが俺の肩に手を置いて謝る。まあ、仕方ないよな。
「いや、ありがとう。マルイドが言ったから信じてもらえたんだ」
俺の言葉にニッとするマルイドが肩をバンバン叩いて離れる。仲間っていいもんだな。
そらから少し話しをして明日、集合というとこでこの場で解散となった。
メイディとマルイド、ジェルドはギルドから出て何処かへ消えていく。
カウンターに座っているシンシアに手を振り、俺たちもギルドを後にした。
道すがら言いにくそうにムランは下を向いている。
「シンシアが夜、来てくれってさ。ご馳走するって……」
「マジで!? やった!」
思わずガッツボーズが出てしまう。嬉しいな! しかし何でコイツはそんな悔しそうにしてるのか。
「元気出せよ! 美味しい食事にありつけるんだぞ~」
「うるさい! アンポンタン! オレは普通だよ!」
ムランが膨れて俺の腕にパンチしてくる。痛い! 普通に痛い! もう今までとは違うぞ!
「わかったから! 痛てーよ!」
「痛くしてんだよ! オタンコナス!」
怒ったムランがつねってきた。どちらにしても痛い。
やがて酒場に着くとカウンターにいるアンジェロにムランを紹介する。
「あら、本当に大きくなったわね。よろしくねムランちゃん」
「こちらこそ、デス」
カチカチのムランが言葉を返すが変だぞ! つか俺以外の対応がおかしいだろ!
「もう、注文しても大丈夫かな?」
カウンターに座りながら聞いてみるとアンジェロはため息をつく。
「はぁ。好きにしていいわ。どうしてこんな男を好きになったの? シンシアは?」
「それは俺も謎だな。というわけでお酒をお願いします!」
ヤレヤレといった感じでアンジェロはコップを用意し始める。
俺に酒とムランに麦茶みたいな水を出すと、おもむろにアンジェロが聞いてきた。
「ところで、ムランちゃんはヨシオが好きなの?」
「ち、ちちち違うよ! オレはコイツのパートナーなの! 別に……」
慌てムランが否定しながらコップに口をつけうやむやにしている。そうなの?
「まあ、ムランが好きでも俺はフるぞ! シンシアが一番!」
「知ってるよ! ウスラトンカチ!」
ムランが肩にパンチしだす。あぁーめんどくさい。アンジェロはそんな俺たちを楽しそうに見ていた。
その後、ふらりとメイディが現れたので一緒に飲み談笑して過ごす。しかし、メイディも日頃何をやっているのだろうか? 不思議だ。
夕方になると風呂屋に行き、そのまま三人でシンシアの家へ向かう。
ちなみにムランが大きくなったので、いままで持っていた金を半分渡しておいた。意外そうな顔でムランが俺を見ていたが、そんな信用ないのか?
シンシアはすでに料理の用意をして待っていたようで、笑顔で歓迎してくれた。最近のシンシアはすこぶる自然な笑顔。とても素敵だ。
とても美味い飯を食べ、玄関でシンシアとお休みの口づけを交わした後、俺は安宿へ戻っていった。
翌日、マルイドとジェルドの三人でギルドに向かうとすでに結構な人数で賑やかになっている。
「……来た」
ギルド内のカウンターに近づくとメイディが俺たちに気がつき手を上げる。シンシアとムランもいるな。
「おはよう、みんな」
シンンシが挨拶し、ムランが舌を出す。それが挨拶か、コイツは!
やがてメイディが呼ばれ、二階へシンシアと共に行き説明を受けるようだ。どうなることやら。
その後は、話しを聞いたメイディの指示の元、町を出て行く。他のパーティーや冒険者も同じ道を歩いているようで集団で移動しているみたいだ。
町から離れ荒野を一刻ほど歩いた場所には先に来ている者たちがいた。あそこが戦場になるのか……。
しかし、意外に冒険者の数は少ない。見えた範囲でも三〇人を超えるぐらいだ。それとも普通の町では多いのか?
ちらりと隣を歩くムランを見ると俺に気づいて笑顔を向ける。大丈夫か?
ほぼ全員が集まるとギルドマスターのドノバンが前へ出てきた。いたのかよ!
「よし! これで全員だな。まず最初にこのラインに沿って溝を掘れ! そんなに深くなくて大丈夫だ。ただの足止めだからな」
ドノバンの指示通りに皆で溝掘りを始める。結構な長さだ、四〇メートルほどはありそう。
太陽が真上に来る頃、作業が終わり一休みする。はぁー疲れた。
昼食はギルドから支給があるようでパンと水を配られる。しかし、俺は見た、メイディがちゃっかりお弁当を持ってきていることに。
うらやましそうにサンドイッチ的なパンを食べているメイディを見ているとギロッと睨まれる。くそ! 少しください!
マルイドが俺の肩を叩く。同情するな!
ふと、遠くに地鳴りを感じる。
頭を向けると皆、そちらの方を向いている。まさか、もう来たのか?
「まだ遠いから安心しろ! 偵察している馬が来てから本番だ! それまで休んでろ!」
周りの雰囲気に気がついたドノバンが声を上げる。さすがギルドマスター。
隣にいるムランを見ると顔が青くなっている。ホントに大丈夫か?




