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他にもあったぞ

 

「あの爆発した遺跡でジェルドが何か見たっていうんでな、連れてきた」

 マルイドがジェルドに手を向ける。何故か恐縮しているジェルドは口に手を当て咳払いすると始めた。緊張してる?

「オホン。あの時、壁に映った赤い点滅以外に地図のような物があり、そこには緑色の丸印が四つありました。そこで本日、町に帰還した際に地図を取り出し確認したところ、その内二つは私たちが行った荒野の遺跡と調査団で訪れた所と一致しました」

 なんだと! 長いセリフをよどみなく言いやがって! いや、違う!

「すると残り二つが未発見ってことか?」

 尋ねるとジェルドは嬉しそうにうなずき、地図を取り出しテーブルに広げる。

「そうです! 私の記憶が確かならば、ココとココにそれぞれあります」

 地図上に赤く目印がついているところをジェルドが示す。おお!

「凄いぞ、ジェルド! なんて記憶力がいいんだ! 俺なんかパニクってて何も見てなかった!」

「それほどでも」

 ドヤ顔のジェルドにニヤリとしてマルイドが肩を叩く。

「で、どうするんだ?」

 ちょうど届いたカップを手に持ち俺を見るマルイド。そりゃ決まってる。

「もちろん行く。マルイドとジェルドも一緒に来てくれると嬉しい」

「ハハ。まだそんなこと言うのか? 乗りかかった船だ、最後まで付き合うさ」

「私も同じですよ。初めて冒険者として生きてる実感がします!」

 マルイドとジェルドの言葉に嬉しくなる。さすが仲間!

「ありがとう、決まりだな。日程は後で決めるか…さしあたって急いでないし」

「おう! 今日は飲もう! 無事に帰れたことだしな!」

 マルイドがカップを上げる。俺とジェルドもカップを上げ互いに祝う。


 まだ一杯しか飲んでないのにジェルドは酔いつぶれている。早!

 マルイドとくだらない事を話していると大きな人影がテーブルを隠す。

 驚いて振り向くと銀色のプレートが光る冒険者のガットがそこにいた。

「久しぶりだな! 南の荒野に行ってたんだってな。俺もいいかな?」

「ああ、どうぞ?」

 空いている席を勧めると遠慮無く座るガット。マルイドに目配せすると肩を上げる。わからないのか…。

「ちょうどお前と話しがしたいと思っててな。風呂屋で待ってても最近こないから慌てたぞ」

「待て! なんで風呂で待つんだよ!」

「ワハハ! 裸のつきあいだからな。話しやすいと思ってな」

 俺の肩をバンバン叩くガットはついでに店員に注文している。なんの用だよ?

「で、上級冒険者様が何の用だ?」

 鋭い目でガットを見るマルイド。

「ハハ。メイディのチームは面白いな、曲者ぞろいだ。疲れている所で悪いんだが、討伐に付き合って欲しい。むろんパーティーごとだ」

「はぁ? どういうことだ?」

 マルイドが代表して質問する。ホント、リーダーっぽい。師匠も頑張ってくれ!

「何でも“渡り”をしている魔物がこの町の近くに来ているとギルドに報告があった。で、この町が進路上にあるようなので排除することに決まったってわけだ」

「なるほどね。しかたがねぇな」

 ため息をついてマルイドは酒を飲む。ホント、魔物だらけだな。

「わかった。明日、メイディにも伝えとくよ。いつ出発するんだ?」

「明後日。もう少し町に引きつけてから叩くと上が言ってる」

「ふーん」


 ニッとするガット。他にも言いたそうだが嫌な予感がする。

 身を乗り出したガットは小さい声で聞いてくる。

「で、ここからが本番なんだが、どうやってシンシアを落としたんだ?」

「ブーーー」

 呆れた俺の隣でマルイドが吹いた! 口をぬぐってギロリとガットを睨むマルイド。普通、俺がその役じゃね?

「ワハハ! 話しが持ちきりでな! 俺が代表して聞くことになった!」

 笑いながらバンバン俺の肩を叩くガット。勘弁してくれ!

「いや、話すこと無いよ? 普通に互いが好きになったんだからさ」

「そこだよ! ソコ! なんでお前はあの辛辣(しんらつ)な言葉が平気なんだ?」

 ガットが指を俺の胸に突きつけてくる。そんなこと?

「え? なれてるから。それに今は普通だし」

「え!?」

 キョトンとしたガットは理解したのか笑い始める。マルイドを見ると呆れて酒をあおっていた。

 ひょっとして外回りの営業で鍛えた煽り耐性がここで生きてきたのかもしれないな。

「ハハハ、まあいいか。だが気をつけろよ? お前を恨んでいる奴らがいるかならな」

「マジかよ! 逆恨みだよ!」

「ワハハ、その通り! さ、固い話しは終わった。飲むぞ!」

 笑顔のガットは酒を一気にあおると、お代わりを注文する。酒豪か!?

 再び乾杯して飲み始める。夜遅くまで続いたがジェルドはいつまでも突っ伏したままだった。死んだか?


 翌日、重い頭を乗せマルイド、ジェルドと共に朝食を済ませギルドへ向かう。

 ちなみに昨晩、酒場から帰るときは大変だった。寝ているジェルドを三人がかりで運んで宿屋のベッドに寝かせ、何故かガットが一階の食堂で飲み始めていた。もちろん俺とマルイドはさっさとベッドへ直行した。

 ギルドに着くとすでにシンシアがカウンターにいて、ムランとメイディもその前で待っている。

 さっそくシンシアに挨拶する。

「おはよー。昨日は大丈夫だったか?」

「おい! オレに聞けよ!」

 ムランがしゃしゃり出てくる。邪魔だ!

 ため息をついたシンシアが薄目でムランを見る。

「二人の時は大人しかったよ。ヨシオがいると威勢がいいのね」

「ち、違うよ! このアバズレが怖いからだ!」

 慌てたムランが反論している。が、大汗かいてるぞ。嘘がバレバレ。

 そんなことは放っておいてガットの情報を伝えるとシンシアも承知のようで説明を受ける。

 明日、出発するのでここに集合との事。やっぱり行くのか。

「あと、ヨシオとムランちゃんはマスターが会いたいって」

「え!? なんで?」

 ビックリして聞き返す。ムランも驚いているがマルイドはニヤリとしていた。

「さあ? いいから来て。早く!」

 シンシアが立ち上がるとカウンターの奥へと歩き出す。慌ててムランを引っ張ってついていく。相変わらずせっかち。


 二階に上がっていく途中でシンシアが困った顔で俺を見る。

「ギルドマスターは、あたしの叔父だから。よろしくね」

「おい! 急すぎるだろ!」

 俺の叫びを無視し、ニコッとして先を上るシンシア。マジかよ! なんでも早すぎる! 後ろのムランが俺の尻にパンチしてる。あーウザい!

 シンシアの両親は二人とも冒険者で、昔、調査団に加わって遠征し、森の奥深くで全滅したようで誰も帰ってこなかったそうだ。

 なので叔父さんに育てられたと言っていたが、まさかのギルドマスターとは。

 二階の廊下を歩きある扉の前に来ると立ち止まりシンシアはノックしてドアを開けて入る。緊張してきた。

「ギルドマスター。連れてきました」

「おお、そうか。よく来たな。さ、座ってくれ」

 少し大きめの部屋の書斎机で立っている厳つい大男がイスを勧めている。これが叔父さん?


「は、初めまして叔父さん。ヨシオです。このたびはお招きありがとうございます。娘さん、いや、シンシアを僕にくだ…」

「違うからーーー! それじゃないから! バカーーー!!」

 もの凄い勢いで真っ赤なシンシアが邪魔する。あれ? 違ったの?

 ギルドマスターは片眉を上げるとイスに腰かける。

「わかった。で、式はいつだ?」

「ドノバンさん!! まだ早いよ!」

 必死なシンシアが否定している。もう全身真っ赤だ、だぶん。

 しかもさっきからムランはピタリとくっついてるし。胸が当たるんだよ!

 キッと俺に向いたシンシアが来て迫ってくる。

「なんでそうなの! プロポーズがまだでしょ! 順番が違う!」

「そうだった。いや、てっきりそっちの方かと思ってたから」

 慌てて言い訳する。ああ、ビックリした。シンシアってせっかちだからてっきり。

「オレにはいつするんだよ?」

 おもむろにムランが耳元でささやく。

「しねーよ! なんでだよ! お前は相棒だろ?」

「そうだよ。だからなんだよアンポンタン!」

 ムランが目くじら立て始めた。おい! 参戦するなよ!

「ムランちゃんは関係ないでしょ! ちょっと離れてよ!」

 シンシアがムランを離すと抵抗している。ああ、カオス。

「ずっとヨシオにくっついてたから定位置なんだよ! オタンコナス!」

「今は違うでしょ!」

 シンシアが怒り始めた。イカン、収拾がつかない。


「ワハハハハハハハハハハハ! なるほどな! 騒がしいわけだ!」

 ギルドマスターが大笑いし始めた。

 ビックリした俺たちの動きが止まり笑い声の主に注目している。

「まあ、座れ。そっちの話しはいずれだな。とにかく他にある」

 真面目な顔つきなったギルドマスターが再度イスを勧める。



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