いろいろ大変になってきた
俺の目の前に大きくなったムランがいる。といっても、背丈はメイディより低い。
最初に見た感想はシンシアにどう説明するかだった。
「おい! トーヘンボク! 何したんだよ!」
ローブを着たムランが詰め寄ってくる。顔近いよ! つか、今までと勝手が違い過ぎる!
「いや、スクリーンに点滅してる所があって、押したらこうなった?」
「バカーーー! 勝手に押すな! オレも文字が読めないんだぞ!」
胸ぐらをつかんで怒ってくる。いや、ちょっと待て!
「そもそも何であのチューブにお前がいたんだ?」
「え!? だって見たかったんだもん」
「ポケットから出るなら一言知らせろよ! アホ!」
「何でわざわざ教えるんだよ! オタンコナス!」
「……うるさい!!」
メイディに怒られた。
「お前らってホント、どこでもケンカすんのな」
呆れたマルイドが苦笑いしている。
元に戻ったジェルドがスクリーンを見つめて声をかける。
「あ、あの、なにか赤く点滅しているケド……」
皆が振り返りスクリーンを見ると隅っこに赤く点滅するアイコンが出ている。
「ムラン?」
「わからないけど、元に戻るスイッチかな?」
近づいて気にもせずアイコンに触れるムラン。おい! マズイだろ!
すると部屋が赤く点滅しはじめ、良く知っているアナウンスが流れる。
『自爆モードが入りました。所員は急いで施設から退避してください。これよりカウントダウンを始めます』
「オイィ! ムラーーーン!!」
焦って叫ぶとムランが青くなっている。ポカンとしている仲間に振り返り叫ぶ!
「みんな! 早く逃げるぞ! ここが爆発する!!」
慌ててムランとジェルドの腕を取って走り出すと背後からマルイドとメイディのついてくる足音がする。
『あと一〇秒ほどで爆発します。サヨウナラ』
アナウンスの中、必死に駆け抜け遺跡を出る。
少し走った所で立ち止まり振り返ると、マルイドとメイディが追いついてきたところだった。
マルイドが近くに来て問い詰めてくる。
「少しは説明しろ! 何がなんだか…」
ドーーーーーーーーーーーン!!
突然マルイドの後ろで遺跡が爆発する!
驚いて振り返るマルイド。メイディも同様に振り返っている。ムランとジェルドは茫然としていた。
飛び散った遺跡の欠片があちこちに散らばって降ってきた! 慌てて頭を押さえながら回避する。
やがて静かになると睨んで顔を向けるマルイドとメイディ。怖っ!
「待て。これはムランがやったことだ。少し落ち着け」
「……説明する!」
メイディが冷たい目で迫ってくる!
「た、たぶん、ムランの星の技術で大きくなって、間違った操作で遺跡が爆発したんだと思う」
早口で説明するがイマイチ伝わっているか疑問だ。眉をひそめるメイディ。
「はぁ。要するにお前らにもわからないんだな?」
的確に要点を突くマルイド。鋭いな。
「そうなんだ。オレにもわからないんだよ」
それまで黙っていたムランが答える。よく見ると胸でかいぞコイツ。ローブを着ててもわかる。
ボカ。メイディに頭をぶたれ、見ると細目になっている。ヤバい。俺の視線に気がついたようだ。
「よ、よし! とりあえず帰ろう! そうしよう!」
メイディの視線を誤魔化すように宣言すると皆、黙って俺を見る。何故だ?
「…そうだな。ここにいても始まらねぇな。帰るか」
マルイドがため息をついて頭をかく。しょうがねぇ感が漂ってる。何故か俺が悪いみたいな流れ。
ムランが俺の元へ寄ってくるとピタリとくっついてくる。
「おい! 何してんだよ!?」
「しょうがないじゃん。スースーするし」
見上げる仕草がかわいい。オッパイがくっついてるぞ。くそ! やりずれぇえええ!
慌ててメイディに向く。
「師匠! 何とかして!」
「……無理」
ふいっと顔をそむけると来た道を戻り始める。マルイドが俺の肩を叩いてニヤリと先を歩く。おい!
ジェルドを見ると慌てて視線をそらしてマルイドの後を追い始めた。逃げるな!
ニッとするムラン。
「よく考えたらさ、これで対等になれたね?」
「ね? じゃねぇよ! シンシアに怒られるだろ!」
「そうだよ、シンシアと対等だね!」
「対等じゃねぇええええーーーー!」
俺の叫びも空しく。ニコニコしているムランはいつまでもくっついていた。
□
「誰?」
ギルドのカウンターでシンシアが帰ってきた俺たちを見て一言。
「シンシア。まず、落ち着いて話しを聞いて欲しい」
「だから、誰? その女」
シンシアの目が座ってるよ。怖い!
「オレはムランだよ。わかった? アバズレ!」
「その言い方! 本当にムランちゃんなの?」
ビックリしてマジマジとムランを見るシンシア。
「お前らは黙ってろ。俺が説明するから、な?」
慌てたマルイドが手で制して俺たちを後ろに下がらせる。確かに適役だけど! ムランもシンシアを挑発するな!
メイディとマルイドがシンシアに経緯を説明しているのをながめている。すっかり蚊帳の外。
隣でローブを着ているムランを見て気がついた。
「とりあえず後で服を買いに行くか?」
「そうだね。股がスースーして気持ち悪い」
顔をしかめるムラン。そこかよ! 今更ながら女って意識した。参ったな。
話しが終わったようでマルイドが振り返り俺を見る。目がこっちに来いと言ってる。正直、行きたくない。
嫌々カウンターに行くとムスッとしているシンシアがいた。
「話しを聞いて理解した。心配したんだからバカ!」
「ゴメン。シンシアも驚いたと思うけど、俺もビックリの連続なんだ」
「はぁ、そうね。後で二人で話したいけどいい?」
「す、スマン! ムランと服を買いに行く約束をしたんだ」
ああ、シンシアの眉が吊り上がってきた。好きになると何でも許せるのが怖い!
「……私が連れて行く」
メイディが話しに割って入ってきた。おお! ありがたい!
「師匠! いいのか?」
「……後でおごれ」
ニッとして答えるメイディ。カッコイイぜ!
「ありがとう! 師匠!」
礼を述べると手を振ったメイディは、ムランに近づき何か言うと無理矢理引っ張ってギルドを出て行く。あからさまにムランが嫌な顔をしていたな。
苦笑いをしてマルイドは手を頭につけると、そのままジェルドを連れて背を向けギルドのラウンジに消えて行った。
みんな気を使わせてありがとう! 水でもおごるよ。
シンシアは表情を崩し微笑む。
「いい人たちね。もう少しで終わるからいい?」
「もちろん! 待ってるよ」
笑ってシンシアの手を握った後、ギルドの入り口へ向かい外で座って待つ。
しかし、怒涛の連続で頭が整理できない。
いまだにムランのタコ姿がちらつくし、小さい状態から人間サイズになるなんて。あーわからん!
だが、一つだけわかったことは、苦労して作った移動式ポケットはお役御免になったこと。
よかった、直接服に縫い付けてなくて。




