また変わるのかよ!
物言わぬゴーレムの大迫力パンチが降ってくる!
慌てて避けると鈍い音と共に土をえぐる。
後方から火球が飛んできてゴーレムに当たり爆発するが、効果は薄いようだ。
もう武器じゃ無理だ! とても切れるとは思えない。ゴーレムの手の届く範囲外から様子をうかがう。
「ヨシオーーー! どうしたーーー?」
マルイドが後ろから叫んでいる。何故、近くに来ないのか?
「手持ちの武器じゃ無理だ! 魔法を使う!」
ゴーレムを見ながら叫び返す。
ドズン、ドズンと土煙を上げながらゴーレムが近づいてくる。こっちにくるな!
思い出したぞ! 道路工事なんかであった! それだ!
「ジャックハンマーーーーー!!」
ゴガッ!
気合で魔法を使うと空から鉄らしき棒がゴーレムの脳天に突き刺さった!
なんかオモチャのロボットについているアンテナみたいだ。と、棒が振動し始める。
ガガガガガガガガガガガ──
慌てたゴーレムが手を頭に持っていくが上手くつかめないようだ。
よく見ると頭にヒビが走り、徐々に広がっている。
ゴバッ!!
ゴーレムの頭が粉砕され、棒はガガガと振動を繰り返し、体を破壊しながら貫き始める。
上がっていた両手は力なく垂れ下がり、両ひざを地面につくところでゴーレムは半分に割れた。スゲェ。
ふー、なんとかなった。ポケットのムランを見るとまだ寝ている。ホント、コイツ役立たず。
一気に全身の力が抜け、その場にうずくまった。
後ろから肩に手が置かれ、ビックリして振り返るとメイディが満足気にうなずいている。
「師匠…。おぶって」
「……イヤ」
笑顔で拒否するメイディ。ヒドイ!
「相変わらず変な魔法を使うな~。こんなの初めて見たぞ」
近づいてきたマルイドは呆れた顔をしている。いや、ホメろよ!
そして目を見開いたままのジェルド。足が震えているぞ! だが、体に引っ込まなかった分だけ成長してるのか?
しばらく休んで回復を待ち、立ち上がると遺跡へと足を向ける。
その遺跡は調査団のときの物とは違って、やや小ぶりな四角形をしていた。平屋程度の高さのようだ。
壁に近づき調べると刻んであった線はかすれ、ほとんどわからない。かろうじてタコの触手の先が残されている。
「いい加減、起きろ! このクソタコ!」
ポケットを激しくゆするとムランが飛び起きる。
「ふざけんな! このアンポンタンがーーー!」
キレたムランが俺の唇を引っ張る。地味に痛い、そのつかんでいる所が。
「やっと起きたか。着いたぞ。何かわかるか?」
「はぁー!? わかるかって…あれ? 着いたの?」
やっと状況がのみ込めたムランがキョロキョロと周りを見て気がつく。
くそ! ニヤニヤ見てるなマルイド!
「……調べる」
メイディがムランに顔を寄せささやく。ビビったムランは硬直している。何でメイディにはそんな弱いんだ?
「わ、わかったよー。調べりゃいいんだろ!」
恐々と返事をして俺を見るムラン。人任せかよ!
「これが遺跡ですか。森にあった物と作りが違いますね」
ジェルドが壁に手を当てながら調べている。
「おーい! こっちに小さい穴があるぞー!」
反対側からマルイドの声がするので、皆で移動する。やはりムランの星が関係してるのか。
俺たちを見たマルイドは穴の位置を指し示す、それはちょうど膝ぐらいの高さにあった。
「ムラン?」
「モジュールが無くても多分、大丈夫」
自信ありげに俺を見上げるムラン。本当か? 信じてるぞ。
膝を落としムランを手に乗せ穴の高さまで持っていくと、迷わず腕をそのまま入れる。
ガゴ。
穴の横にある壁がスライドして中への入り口が開く。
そこには人一人がかろうじて通れる細い通路が見える。前とは違うようだな。
「……行け」
メイディがいっちょ前に指図する。見るとドヤ顔、なんでそうなの師匠。
勝手に魔法で明かりをつけ先をうながす。
しぶしぶ先頭に立ち通路を進むがすぐに行き止まりになる。振り返るとすぐ後ろにメイディがいた。
「行き止まりだから戻ろう」
「……わかった」
背を向けたメイディが先に戻っていく。
「ちょと待って! 下に穴がある!」
ポケットのムランが目ざとく見つけたようだ。しゃがんで探すと確かにある。
ムランを手に乗せ穴の前に向けると再び腕を入れる。
シュー。
ちょうど俺のいる辺りの横の壁がスライドして開く。
中を覗くとそこそこ広い空間に、人が入れそうな透明な円柱のチューブがポツンとあり、他は何もなくガランとしている。
ゾロゾロと入って行き皆、不思議そうに壁やチューブを調べている。
「わかるかムラン?」
「いや、全然だよ。前のとは違う目的の施設みたい」
ムランはキョロキョロして何かを探しているようだ。
チューブの近くの壁を調べると、そこにも穴があった。ムランの手を入れると起動することから生体認証でもしているかもしれないな。たぶん、俺が指を入れても何も変わらないはず。
無言でムランが見つめてくるので手に乗せ、穴の所へ持ってくる。
「い、いくぞ?」
緊張した顔を向けてから恐々と穴に腕を入れると部屋の天井が明るくなり、壁に謎の文字が浮かび上がる。
「な、なんだ!? これは?」
思わずマルイドが驚いて声を上げ、メイディが目を見開き、ジェルドの頭が引っ込んだ。
「みんな落ち着いてくれ! 部屋の機械が動いただけだ。何も無いから!」
慌てて説明するが浮足立っているよう。初めて異文化に触れたから仕方が無いか……。
壁の文字をよく見ると、穴の近くにできた小さなスクリーンと同じ映像がちょうど俺の高さにもあらわれている。
「ムラン? これは?」
「わかんないけど、同じスクリーンが二つあるから同時に操作できそう。何かを変化させるのかな?」
思案気なムランが謎文字を見つめている。
ふとチューブを見ると四〇センチほどの穴が空いていることに気がついた。
「よ、ヨシオ? これはなんだ?」
マルイドが俺の肩をつかんでくる。その顔には当惑が浮かんでいた。ちらりとメイディを見るとボケーっとしてた。
「いや、ムランの星の遺跡らしくて俺たちにもわからないんだ」
「ホントかよ!? どういう仕組みなんだ? こんなの魔法でもないぞ!」
興奮しているマルイドが畳みかけてくる。いや、俺も同じだから。
「これは科学で機械が動いているんだ。詳しく聞くな? 俺もわからんから」
「まあ、そうか。そうだよな。違う星だもんな」
納得いったマルイドが頭をかいている。世の中わからんことだらけだな。わかる。
ふと、目の前のスクリーンに青く点滅している部分がある事に気がついた。ナニコレ?
なんとなく触れてみると表示が変わり、何かを変化するようなアイコンが出ている。
「ヨシオーーーー! 助けろーーーー!」
どこからかムランの声がする。
「オイ! あそこだ!」
マルイドの声に振り返ると、なぜかチューブにムランが閉じ込められている。先ほどあった穴は無くなっている。
慌てて近寄りチューブを叩く!
「ムラン! なんでそこにいんだよ!」
「いいから助けろーーー!」
ムランの叫びに助けを求め振り返ると、マルイドが目をそらしメイディがあたふたして役にたたない。ジェルドは頭はおろか両手両足を引っ込めていた。おい! お前ら!
するとチューブの上の方から緑色の光がムランを包み込む。
緑色に染まったムランがこちらに両手をつき訴えるように俺を見る。
「ヨシオーーーーーー!!」
「ムラーーーーーーーーーン!!」
膝立ちで下に見えるムランにチューブ越しで叫ぶが何もできない。
やがて光が強くなりチューブが白く輝く!
輝きが収まるとムランが消えた! 慌ててチューブの底を探す。
「ムラン! どこだ!」
「ここだよアンポンタン!」
上からムランの声がするので顔を上げると、そこには大きくなったスッポンポンの彼女がいた。
「うわぁああああ! 見るなぁあああああ!!」
気がついたムランが両手で自身の身体を抱きしゃがむ。顔が真っ赤だ、面白い。
メイディが慌ててムランに駆け寄りローブをかけている。いつのまにかチューブが開いていたのに気がついた。
「驚いたな……」
マルイドが唾を飲み込み、冷や汗をぬぐっている後ろでジェルドは頭だけ出してキョロキョロしている。
一体、どうすればいいんだ?




