新たな目標が決まった
翌日、朝食をとりながらマルイドに今後の相談をする。
一通り俺の話しを聞いたマルイドが感想をもらす。
「なるほどな。となると、問題はジェルドか。話すのか?」
「本人次第かな? 一緒に行くなら話す」
「そっちよりも鍛える方が大変そうだな。頑張れよ!」
二カッとするマルイド。おい! 手伝ってよ!
安宿を出てギルドに行くと、すでにメイディとジェルドが待っていた。今日は早いな。
「おはよー、シンシア。あと二人」
「バカ! メイディたちにも挨拶しなよ!」
シンシアが怒り、メイディが冷たい目を向け、マルイドは苦笑いで手を振る。ちなみにジェルドは俺の手にある剣と盾を見て固まっていた。
プンプンしているシンシアに別れを告げ、皆で広場に移動する。
目的地へ到着するとメイディが物言いたげな顔で目を向ける。しゃべって!
「マルイドには説明したけど、俺とジェルドはここで稽古。他はコルサバの所へ行って荒野の遺跡について調べて欲しい」
「……わかった」
うなずいたメイディは早速背を向けようとする。
「ちょっと待った! 師匠!」
何? って顔で向き直るメイディ。ポケットから嫌がるムランを捕まえてメイディに差し出す。
「ムランも一緒に連れてってくれないか? コルサバが気に入っているようだから話しもスムーズに進むと思う」
「嫌だーーーー! オレは離れないぞ!!」
俺の手にしがみついてムランが絶叫している。なんでだよ? この前まではそんなことなかったのに。
「……暴れるな!」
メイディが睨みを利かせるとムランは青い顔で大人しくなる。ホント、弱いな。
ムランを大事そうに受け取ると、うなずいて再び背を向け歩き出す。
マルイドはウインクするとメイディの後を追っていった。
「さて。はい、これ。装備して」
ボーっとしていたジェルドに剣と盾を渡す。
「ええ!? これは私に?」
「そう。お節介だけど使ってくれ。なれて物足りない場合は自分で買って欲しい」
戸惑っているジェルドにベルトを着け剣を装着し、盾をちゃんと持たす。
意外と様になっている。見た目は強そうだ。
「あ、あの、何でここまでしてくれるのですか?」
冷や汗をかきながらジェルドは装備を見て顔を向ける。
「正直言うとジェルドの為じゃなくて、俺とムランの為なんだ。俺たちパーティーだから、いつまでもジェルドを守れない」
流石に地球に帰るから頑張ってくれとは言えないし。帰るために付き合ってくれとも言えない。
ジェルドは空気をのみ込み、下を向いて震える声を出す。
「わ、私は臆病で怖がりです。だ、だから強くなれるとは思えない。迷惑なら抜けますが……」
「迷惑なんて言ってないだろ? それに鍛えもしないで強くなんてならない。俺だって基礎体力つけるのは大変だったぞ」
俺の告白に驚いて顔を上げるジェルド。当たり前だろ、訓練しないでどうするよ?
「ハッキリ言うとジェルドはかなり力があるから俺より強いし、その手足が縮んだりする特性を生かせば凄くなると思う」
「ほ、本当か?」
「もちろん! さ、素振りからいこうか?」
期待に目を輝かせるジェルドに有無を言わさず始めさせる。
しばらく剣を眺めていたジェルドは上段に構えると素振りを始めた。おお! いいぞ!
気がついた所をアドバイスしながら素振りを見る。といっても、俺の使っているハルバートとは違うから、他の冒険者が剣で戦う姿を思い出しながらだ。間違ってたらゴメンな。
やがてぐったりしたジェルドが手足を引っ込める頃、メイディたちが戻って来た。
「よお! その調子だと順調みたいだな」
マルイドがジェルドを見ながら近づいてくる。口の端が上がってるぞ。
「……だいたいわかった」
「長いよ! コルサバの話し! もうクタクタだよ!」
メイディが文句を言うムランを差し出してきた。受け取るといつものポケットに素早く入ってくる。
「は~~。なんかここが安心だ。もう絶対離れないからな!!」
拳を握って宣言するムラン。いや、離れてくれ。特にシンシアといる時は。
全員集まったので輪になって座りメイディたちの報告を聞いた。もちろんマルイドが話す。
「結論から言うと荒野の遺跡は確実にあるようだ。場所も聞いたから間違いないだろう」
マルイドがポケットから薄汚れた紙を取り出すと皆の前で広げる。
そこには簡易的な地図が記されてあるのが見れた。一応の目印が記載されているので迷うことはなさそうだ。
「ここに調査団は一度訪れたが特に何もなかったので他に移動したようだ。記録に載っていた分にはそう書いてある。しかし、あの坊主も記憶力がバツグンだな。さすがだ」
地図の一点を指示しマルイドが説明する。なるほどな。
ムランがポケットから出てきて胸を張る。
「ま、オレの可愛らしさにデレデレだったわけ!」
「なに寝言いってるんだ、このアホは?」
「うっさい! トウヘンボク!」
頬にパンチしだすムラン。ああ、うぜえ……。
「……どうする? 行く?」
「もちろん、師匠! マルイドとジェルドは?」
二人を見るとマルイドはうなずき、ジェルドは汗をかいている。
「嫌なら無理は言わないけど。ジェルド?」
「い、行きましょう! 私もこの町の住人ですから、いつまでも怯えていられません!」
ジェルドが決意を新たに宣言する。おお! やった!
ニヤリとしたマルイドがジェルドの肩を叩く。
「決まったな。そんじゃ、修行を続けるんだろ?」
「あ……」
ジェルドの頭が引っ込んだ。この先が思いやられる。はぁ。
おもむろにメイディは立ち上がるとニコリとして俺を見る。
「……任せた」
「師匠! そこは師匠がやるんでしょ?」
「……無理。頑張れ!」
薄目で凄んてくるメイディ。怖いよ! くそっ!
ポーチからポーションを数本取り出し渡される。
「……明日」
くるっと背を向け足早に広場を去っていくメイディ。
皆、遠くなる背中を見つめる。逃げた……。
「ほら! 訓練やるんだろ! さっさとしようぜ!」
空気を読まないムランがパチパチと頬を叩く。あぁうざい! タコじゃないからやりずらい!
マルイドは立ち上がると屈伸を始める。やる気満々だな。
「よし! 始めよう! ジェルド?」
俺も立ち上がりジェルドを見る。
「ひぃいいいいいい!」
とか言いながら青い顔のジェルドが立ち上がると無理矢理ポーションを飲ませ訓練を続行する。
今回はマルイドもいるので的確なアドバイスがジェルドに叩き込まれる。さすがだマルイド。
それから一週間、ジェルドの訓練が続き、町の近場で実戦を経験したり魔法を使った防御の訓練などをした。
おかげでジェルドもそれらしくなってきて、自分でも実感を感じて自信がついたようだ。
頃合いを見て広場に集まり、ジェルドに俺とムランが違う星から来たことを説明する。
「えぇえええ!! そうだったのかぁ。どうりで雰囲気が違うと思った」
驚きつつも信じているジェルドは納得しているみたいだ。お人好しだなー。
「それで遺跡もムランの星が関係しているかもしれないから調べる為に行くんだ」
「ハハ。なるほど、それであのとき言葉を濁していたんですか。納得しました」
申し訳なさそうに言うとジェルドは笑ってうなずく。ああ、いい人だわ。
メイディが何かいいたげに目を向けてくる。何?
「……私は?」
「いや、師匠は当然行くと思ってたから確認しなかったけど、聞いた方がよかった?」
「……大丈夫」
ニヤニヤしてそっぽを向くメイディ。信頼が嬉しいのか? 膨れたムランが再び頬をパンチしてくる。なんだよ!
苦笑いのマルイドが立ち上がり皆を見回す。
「決まったな。それじゃ、俺は準備があるから先に行くぜ」
手を頭につけると市場の方へとマルイドが歩き始める。今日は渋いな。
その後ろ姿を見送ってから俺たちもそれぞれ準備のため立ち上がった。




