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新しくポケットを作る

 

 宿に戻るとマルイドがコルサバの伝言を伝えてくれた。

 明日の予定は決まりだな。

 マルイドが調査団の宿舎への案内を申し出たので、ありがたく受ける。

 その日は疲れが溜まったのかベッドに入るとすぐに眠りについた。


 翌日、朝食を済ませマルイドの案内で通りを進んでいく。

 いつもと違う道に新鮮な気分になる。まだまだ知らない所が多いな。あ、いいこと思いついた。待ってろよシンシア!

 住宅街の一角にある二階建ての大きな屋敷へと入って行く。

 ここがそうか。確かに他の建物と比べると良い造りな気がするな。

 マルイドが玄関のドアをノックすると使用人が出てきて応対している。間違いない、これは金持ちだ。

 使用人がドアを開け俺たちを中へと通す。

 デカい廊下を進み、ある部屋の前へ来ると使用人が立ち止まりノックをして要件を告げる。

 部屋の中から返事がすると使用人がドアを開け、マルイドを始め俺たちを中へ先に行かせる。


「おお! 待っていたよ! ささ、座ってくれ!」

 マルクが太い腹を揺らしながら出迎えてくれたので挨拶を返す。

 皆がソファーに腰かけたところで使用人がお茶を各自へ出してくる。おお、気が利いてる!

「さて、さっそくだがムラン君はいるかな?」

「オレはさっきからいるよ!」

 俺の肩からメガホンを向けて主張するムラン。意外にうるさい。

 気がついたマルクは嬉しそうに視線を向ける。

「おお! そこにいたのか! では、さっそく聞き取りを開始していいかな?」

「早くしてくれ! オレも暇じゃないからさ!」

 とか言ってるけど暇だろ、このアホは。ああ、タコって言いてェ…。

 そうしてマルクの質問にムランが答えていく。

 事前に打ち合わせをして、宇宙人ではなく妖精として答えるようにマルイドとメイディの助力を得てウソの生態を作り上げた。

 ムランは今、その内容を話しているが内心ヒヤヒヤだ。とんでもなく暴走しそうだからな、あのアホ。

 しかし、俺の思いとは裏腹に順調に話しは進み、滞りなく終わった。あれ? 不思議だ。

「詳しく聞けて助かったよ。これでまた一つ謎が解けた気がする。ありがとう」

 マルクは立ち上がり皆に握手を求め、俺たちも応じた。

 見送られ屋敷を出る。ホッと一安心だ。

「それじゃ、俺はここまでだな。後でな!」

 マルイドは屋敷の前の通りで別れる。いつも忙しい男だな。

「オレたちはどうするんだ?」

 ムランが聞いてくる。

「もちろん、決まってる!」


「で、あたしの所に来たの?」

「そう」

 ギルドのカウンターでシンシアがしかめ面している。何故だ?

「明日は休み?」

「そうだけど。何で?」

 もう少し笑顔でもいいじゃん? 付き合ってるんだし。

「この町を案内してもらいながらデートしよう!」

「わかった。明日ね」

 少し頬を染めるシンシア。あらら、かわいい。

 と、俺の頬にパンチしてくるムラン。あーうざい!

 今までは怒られていたが、しばらく雑談にシンシアが応じてからギルドを出る。

 あー、明日が楽しみだ!

 そしてムランがうざい。さっきからパンチしまくり。

「いいかげんにしろムラン! 頬が()れるぞ!」

「うっさい! バカだから浮かれやがって!」

 耳元でムランが叫んでつねってきた。あ、思い出した。

 そのまま雑貨屋に直行する。


「ちはー」

「やあ、ヨシオ。今日は何かな?」

 相変わらずカウンターで積みあがった鍋の横に顔があるブロガンが訪ねてくる。

「実はさ、コイツを入れるポケットを服に付けたくて」

 肩のムランをつかんで見せるとブロガンは目を見開く。

「は!? いや、なんだねそいつは?」

「あ、コイツはムランで妖精なんだ」

「よろしく! ブロガン! 姿が変わったよ!」

 かわいくムランが挨拶している。おい! ホント、俺と他人だと態度が違うなコイツ。

「よろしくなムラン。だが、あいにくココでははそんなことはできないぞ。それなら武器屋の隣の仕立て屋に行きな」

「いつも悪いね。今度何か買うから。ありがと!」

 ブロガンにお礼を言い別れ、教えられた仕立て屋へ行く。


「こんにちは」

 ドアを開け中に入っていく。

 店内には壁の至る所に布がかけられ、カウンターの奥には巻いてある布が壁一面に置いてある。仕立て屋というより、布屋みたいだ。

 カウンターには猫耳をしたおばあさんが座ってこちらを見ている。

「何かようかな? あんた知ってるよ。シンシアとくっついたんだろ?」

「いや、何で知ってるんだよ!」

「そりゃ、あんなバカ騒ぎしてたらわかるよ」

 ふんっと鼻息を出しておばあさんが説明する。恥ずかし! 再びムランがパンチしだした。

「そ、そうか。俺はヨシオ。このちっこいのはムラン」

「わたしゃ、アイル。で、どうしたんだい?」

「あ、そうだ。コイツを入れるポケットを服に付けたいんだけど…」

 するとアイルばあさんが手招きする。

「もっと近くで見せておくれ。わたしゃ目が遠いんでな」

 言われた通りにムランを肩からカウンターに降ろす。ムスッとしているムラン。愛想よくしろよ!

 アイルばあさんは目を細めてムランを見ている。

「おや、可愛らしいねぇ。さぞ皆に気に入られてるだろうねぇ」

「そうなんだ! オレは妖精だからさ、チヤホヤされてるわけ!」

 胸を張って威張りだすムラン。ああ、言いてぇ。宇宙人で食っちゃ寝のごくつぶしって。


「ふむ。ただ単にポケットだけ付け足すとすると、持っている全ての服にしないといけないよ?」

 顔を上げたアイルばあさんが俺を見る。確かにそうだ。

「それは出費がきついから、独立して紐か何かで結ぶようにはできる?」

「ははぁ。なるほどね。なら、皮でベルトを作ってポケットを移動できるようにしようかね。それだと安くすむよ」

 アイルばあさんが提案してきた。おお、さすが専門家!

「お願いします! お礼にコイツを一晩貸しますから!」

「ふざけんな! アンポンタン! 絶対に離れないからな! バカ!」

 俺の申し出にムランが怒り始める。くそ、預けてシンシアの家に行く計画がダメになった。

「ハハハ。面白いねぇ。大丈夫だよ、大事な人から取り上げないから」

 笑ってアイルおばあさんがムランを優しくなでる。なすがままだな。

 それから採寸のために俺の体を測り満足すると明日来てくれと告げられる。

 アイルおばあさんにお礼を言って仕立て屋を後にした。

 明日か…デートの帰りでいいか。

 ムランは機嫌が良くなったのか鼻歌しながら足をプラプラしている。

 最近のムランがわからん。少し明日が不安になってきた……。



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