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彼女は何でも知っている

 

 他のパーティーの方もオークを退けたようだ。

 俺たちの前にいたマルクたちは、こちらの攻撃の余波で楽できたようだ。良かったな、ホント。

 話しを聞くと、しんがりにいたメイディのパーティーが狙われていたらしい。

 道理でわんさか出てきたわけだ。

 そんな訳で、疲弊した俺たちを真ん中に順番を変えて再度、町へと帰還する。

 その間、不思議と魔物は姿を見せなかった。ひょっとして付近のオークを全て倒したからかもしれない。

 野宿も無事で順調に進み町の門が見えてくる。

 安堵と共にシンシアの怒った顔が脳裏に浮かんでくる。ヤバい、どう言えばいいの?

 チラリとムランを見ると気楽そうに腰掛け、鼻歌を口ずさんでいる。ノー天気が! 俺の苦労を分けたい!


 案の定、ギルドに行くとシンシアに殴られメイディの自宅へ直行する羽目になった。

 感動の再会どこいった!

 そして今はシンシアと共にメイディの部屋でテーブルを囲んで座っている。

「えーと、どう言ったらいいのやら……」

 眉をひそめているシンシアの前で良い言葉が思いつかないし、ムランは沈黙している。フォローしろよ!

「あんたが遠い星から来たのは知ってるよ。それが今のムランちゃんとどう関係あるの?」

 俺が言いあぐねている間にシンシアから話し始める。って、おい!

「知ってんの? 師匠!?」

「……話した」

 驚いてメイディを見るとドヤ顔で答える。マジかよ。それを知ってて付き合うのシンシアは!?

「わかった、全て話すよ。ただ、俺もムランがこんな風になるなんて知らなかったからな?」

「知らないお前が悪いんだ! アンポンタン!」

 ムランがテーブルの上で抗議する。なに言ってんだアホめ!

「ムランちゃんは黙ってて。話しを続けて」

 シンシアがムランに注意し続きをうながしてくる。むぐぐとなるムラン。

 それからムランが乗っていた生体モジュールと本体の話しをかみ砕いて説明する。二人は黙って聞いていたが大丈夫か?


「ん~。よくわからないけど、前の丸い状態は乗り物ってことでいい?」

「その認識で合ってるよ。理解が早くて助かる。さすがシンシアだな」

 褒めるとニコッとしてくる。前よりも硬さがとれた感じですごくかわいい。

「そんなわけでよろしくな。ほら、ムランも」

「うっさいアンポンタン!」

 腕を組んですねるムラン。ホントやりずらい。

 メイディはその様子を笑いをかみ殺して見ている。

 それから細かく話していく。

 シンシアの興味は夜まで尽きなかった──


 □  □


 角を曲がりいつもの場所へ行く。

 今日は食堂ではなく裏通りの一角を訪れ、娼館横の階段へ腰かける。

 近くに影が伸びて誰かが来たことを知らせた。

「どうだった、調査団は?」

「初めて行ったがきつかったな。あんなに魔物と戦うなんて誰も行きたがらないわけだ」

 影が動かないのを確認して、ジッと地面を向き返事をする。

「ハハ、聞いたよ。オークの集団を相手したんだってな。ところで、こっちは何もないよ」

「そりゃ、いつも通りだな。今日は疲れたから宿屋へ直行する」

「そうか。またな」

 その言葉を最後に影がスッと遠ざかっていく。

 ふー。ヨシオたちの事は言ってもしょうがない。俺たちの仕事とは関係ないからな。

 しかし驚きの連続だ。まさか夜空に輝く星の一つからこの世界にやってくるなんて。

 ムランも違う星の人のようだし、俺たちのいる世界以外に人が住んでるなんて今でも信じられない。

 あいつらの話しを聞くと、こんな所で生きているのが狭く感じてくるほどスケールがでかい。

 そして奇妙な魔法を使うし、頭が痛くなってくる。

 だが、面白い! 最近は全く退屈した気がしない。むしろ少し休みたくなるほどだ。

 ここに左遷されたことを最初は恨んだが、今では感謝してもいいぐらいだ。

 こんな経験、他では絶対にできない。俺は世界の真理をすっ飛ばして夜空の星まで思いをはせることができる。

 フフ、まるで学者にでもなった気分だ。

 立ち上がると、汚れた尻を叩きいつもの安宿へ足を向ける。


 宿に戻ると一階の食堂で軽く料理を注文して小腹を満たす。

 するとそこにコルサバがやってきた。

 キョロキョロして誰かを探しているようだ。手を上げると、こちらに気がつき寄ってくる。

「マルイドさん! ヨシオさんたちを見ませんでしたか?」

「まだ戻ってないな。ま、座りな。話しは俺が聞いとく」

 テーブルの反対側に座ってコルサバが話し出す。

「マルクさんが明日、話しを聞きたいから来てくれと。あと、団長たちと例の遺跡について話しをしていたら、どうやら南の荒野にも似たような物を見かけたと昔の文献に載っていたのを思い出して。それをムランさんにもお伝えしようって」

 少し顔を赤らめコルサバが見つめる。“ムランさん”? あのちっこいのが気に入ったんか?

「わかった、両方とも伝えておく。どうだ? 何か飲むか? おごるぜ」

「いえ、いえ! とんでもない! 喉は乾いてないので大丈夫です!」

 慌てて手を振り否定する。そこは素直におごられろ坊主。

「そうか。ところで告白はしないのか?」

「えぇえ!? そ、そんな~。ビックリさせないでください!」

 イスから飛び上がるほど驚いたコルサバが慌てている。

「ミレアちゃんが好きなんだろ? 思い切って言ったらどうだ?」

「む、むむむ無理ですよ! 断られたらと思うと怖くて……」

 コルサバは下を向き、モジモジしている。はぁー、勇気ねぇな。

「ヨシオを見ろよ、あんな大勢の前で告白したんだぞ。それに比べたらかわいいモンだろ?」

「あの人と一緒にしないでください! ヨシオさんは僕とは少しズレてる気がします」

 ふくれて反論するコルサバ。ま、確かにそうだな。あいつら常識がないからな、しょうがない。


「ミレアちゃーん!」

 手を上げて呼ぶとうろたえたコルサバが「やめください……」と消え入りそうな声で抵抗する。

「はーい! 何ですかマルイドさん?」

「こいつに飲み物を頼む」

「あ、はい! お帰りコルサバ君!」

 ミレアがコルサバにニコリと挨拶してカウンターへ消える。

 その姿を見送ってからコルサバが抗議してきた。

「ダメですよ! いきなり呼ばないでください!」

「まあ、まあ。今の見たろ? まんざらでもないんじゃないか?」

 落ち着かせるが怒っていて頬をふくらませている。はぁ~、段々面倒になってきた。

「はいどうぞ!」

 コップをテーブルに運んでくるとミレアちゃんは再びカウンターへ消え、その間、うつむいていたコルサバ。

 いきなり顔を上げるとカウンターへ視線を向けてからこちらを見る。

「気がありますかね? ミレアさん」

「プッ、お前さん次第だな。頑張れよ!」

 ニヤリと笑い、コップを傾け喉に流し込む。コルサバは真っ赤になってあれこれ説明しだした。

 それを聞きながらふとあの二人を思い出す。

 ……ムランが女とはな。こりゃヨシオも大変そうだ。

 シンシアのお嬢さんは頑張れるのかねぇ。ま、見てる分には面白いが。

 しかしメイディはどうしたものか。

 とりあえずは静観だな。それがいい。

 頼れる俺、マルイドは生温かくパーティーを見守っていこう。



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