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冒険者になる

 

「とりあえず、この町や地域、国について教えて欲しいけどいいかな?」

「は?」

 美人が呆れた顔になっている。何故だ? 知らないから当然の質問だろ?

「聞こえてるよね?」

「……どうやってここに来たの? 見たところ冒険者でもないし。まさか突然現れたわけないよね?」

 いや、その通り突然現れました。って言いたい!

「いやあ、偶然? 近くを通りがかって?」

 すっごい怪しい目で睨まれている。顔を上に向けてため息をつくと向き直った。

「まあいいよ。どんくさそうなあんたに教えてあげる。いい?」

 すっごいダメなやつ扱い。ほんとムカつくこの女。

 殴りたい気持ちを我慢しつつ聞くと、ここは辺境にある開拓地の町とのことだった。そのため周囲には魔物が潜み、日々討伐と開拓をしているため冒険者を常に募集しているとのこと。冒険者?

 ちなみにこの町は王国の直轄地らしい。この国、トリガは王制みたいで他にも国があるようだ。なるほど。


「それから職を探してるんだが、楽な仕事ってないかな?」

「ああ!? そんなのあるわけないでしょ! ここには冒険者になりにきたんじゃないの?」

 えらい剣幕で言われる。段々俺が悪く感じてきた。ホント、隣の列が良かった……。

「……わかった。それじゃあ、冒険者で」

「何様なのあんた? まあ、してあげる。ほら、この用紙に記入して」

 怒りつつ黄ばんだ紙切れを出してきた。これに書き込めって事か。

 何も言わずにペンを突き付けてくるので受け取り用紙に書いていく。

 めちゃくちゃガン見しているんですけど。この人、怖いぞ。

「ちょ、ちょっと! ストップ! 何この字!? 線が重なって記号みたいのは? 字が書けないの?」

「えっ!? 違うの?」

「紙の上の字を見なさいよ! あんたの字と違うでしょ?」

「あ、ホントだ」

「まったく! 書けないなら言いなさいよ!」

 美人の受付嬢が俺から紙とペンをひったくり、右手を出してきた。

「何これ?」

「一枚無駄にしたから。二枚目から有料なの。ブロンズ二枚!」

 くそ! なんだよ! 全然優しさが見えない。いつかぶん殴りてぇ。

 ぐっとこらえて、しぶしぶ金を出す。

「じゃあ、いくよ。名前は?」

「…良雄」

「歳は?」

「二六」

「え!?」

「え?」

 受付嬢は何故かびっくりする。何なんだ。

 その後は順調に進む。だが、ある事を忘れていた。


「記入は以上ね。登録してくるからそこにいなさい。絶対に席を立つな!」

 書き終えた受付嬢は指さし立ち上がったが、俺を見て何かに気がつき再び座る。

「ちょっと! その頭にいるのは何?」

 あ、そうだ! 忘れてた。

「え、えーと、使い魔?」

「疑問形? ホントなの?」

 すごく怪しい顔つきでムランを見ている。怯えているのかムランは少し震えている。

「まーね。ムランって言うんだ。お前も挨拶しろよ!」

 震えるムランをカウンターの上へ降ろす。

「こ、こんにちは。お嬢さん」

 上目づかいで美人を見上げ細々と声を出す。おい! 言葉遣いが良くなってるぞ!

 おもむろに立ち上がり後ずさる受付嬢。怖いのか?

「し、しゃべった! しかも気持ち悪い姿! ホントに使い魔なの?」

「そいつはヒドイよ……」

 ガックリしているムラン。何故、俺と態度が違うのか。

「ハハハ。珍しいやつなんだ。ほら、凶悪でもないだろ?」

「ふー。そうね。危害は加えなさそうね。いいよ」

 ジッとムランを観察して息をはくと受付嬢は奥へ消えていく。

 目の前のムランを問い詰める。

「おい! なんで俺以外だと弱弱しくなるんだよ!」

「お前が地球人だからだよ! この世界の現地人はみな強そうだろ?」

 キッと俺を睨んでのたまうタコ。なにその使い分け。茹でたろか?


 俺とムランがにらみ合いをしている内に受付嬢が戻ってくる。

「おまたせ。……何、あんたら見つめ合ってるの? 気持ち悪い」

「違うだろ! ガン飛ばし合ってただろ!」

「どっちでもいいけど、早くどけてくれない?」

 ちったあ人の言葉も聞け! 乱暴にムランを肩車するとポコポコ頭を叩いてきた。ガン無視する。

「これが初心冒険者の証のプレートね。そしてこれが使い魔の証明の首輪」

 木の板と首輪を差し出されるので受け取る。木の板には紐通し用の穴が空いていて謎の文字が書いてあった。たぶん俺の名前とかかな?

「早く首輪をつけて。イライラする!」

 俺が木の板を観察していると受付嬢が催促してきた。気が短かいな!

 しかたがないのでムランの首に……首がない!

 嫌がるムランの腕の一本に巻きつける。しかし暴れるわパシパシ腕を振るってるので大変だった。

「ふー。これでいいね。今日は疲れたから明日きてちょうだい。仕事の話しをするから」

「……わかった。じゃあな」

 下手に食い下がると面倒なのですぐに出ようと背を向ける。

「ちょっと!」

「え? まだあんの?」

 振り返ると射貫くような目つきで身を乗り出す。

「シンシア」

「誰?」

「あたしの名前よ! なんで一度も聞かないの!? 鈍感!」

 正直、興味もないし、また会うなんて思わなかったからだけど、言ったらマズい気がする。

「わかった。明日な!」

 相手の顔も見ずに踵を返すと素早くギルドを出る。ふー、また呼び止められるかと思った。

 とりあえず今日は休もう。ホテルとかはあるのだろうか?


 しばらく町中をうろつくがホテルらしきものは見つからなかった。

 歩いているとムランが頭を叩いてくる。

「おい! どこに向かってんだ?」

「ホテルだよ。いい加減休みたいからな」

「それじゃあ早くしてくれ!」

 くぅー、手足を縛って遠くまで放り投げたい! この宇宙人!

 とは言うものの腹も減った……。足早に探すが一向に無い。探し方が悪かったのか?

 恥を忍んで再びギルドに向かい、列のないシンシアのカウンターへ向かう。

「あんた気が早すぎるわね。明日って言ったでしょ?」

 俺を見てこの言葉。

「違うよ。もう一つ聞きたいことがあるんだ」

 すると無言で右手を出してきた。ああ、くそ! 現金だな!

 奥歯をかみしめ銅貨を一〇枚、手に乗せる。

「で、何を?」

「安く泊まれる所を教えて欲しい」

 呆れた目をするとため息をついてシンシアが入り口から見える建物を指をさす。

「あそこ。向かいの宿屋が一番安いよ。じゃあね」

「ええ!? そこかよ! 金返せ!」

「は? 対価でしょ! おバカさん」

 あああああ、殴りてえ! 貴重な金が五秒で消えた。

 ムカついたのでそのまま振り返るとダッシュでギルドを出て向かいの宿屋に向かった。



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