早く町へ帰ろう
翌日、起きて準備を済ませると遺跡を出て合流地点へ向かう。
メイディはいつも通りに戻っていた。一安心だ。
ただ、冷たい目で俺を見るのが少し怖い。それを見たジェルドが青ざめている。ビビリすぎ!
それからコルサバが道案内をして足を進めていく。
運よく魔物にも出会わず、その日の午後には目的地へ着くことができた。
そこにはすでに他のパーティーが待っているようで複数の人影が見える。
近づくと、マルクのグループのようだ。マジか…。大丈夫かなムランは。
コルサバが挨拶してマルクに近寄り説明しだした。
心配して見ているとコルサバがマルクを連れてやってくる。すごく疑ってんじゃん!
「なんでも使い魔が妖精になったそうだな。見せてもらってもかまわないかな?」
好奇心満々なマルクが太い腹を揺らしながら近づく。違う意味で緊張する。
「ああ、どうぞ。ムラン、出てきな」
「うっさいバカ。言われなくても」
口答えして肩に立つムラン。マルクがマジマジと見ている。
「はぁ~、かわいい妖精になったもんだ。あの丸いのがねぇ~。聞けば発見した遺跡と関係してるらしいじゃないか」
「そ、そうなんだ。きっとコイツの祖先が作ったみたいなんだけど、さすがに昔過ぎて知らないみたいで…」
必死、必死の言い訳。信じでくれ! マルクの後ろにいるコルサバは緊張の趣で見守っている。
「まあ、そうかもしれんな。こういうのはよくある事だ。魔物もよく変化する者もいる。きっと古代種の生き残りの一人なんだろう」
マルクは顎に手を当ててつぶさにムランを見ながら語る。おお、イケるか?
「しかし、それが妖精とはな。ところで羽がないのは何故だ?」
「え!? 羽とかあんの? いや、コイツは土の妖精だからさ。他の妖精を見た事ないから知らないし」
もうダメだ。全然わからんから適当に答えるしかない。
「おお! 土の妖精か…。なら羽が無いのもうなずける。髪の色も緑色だから木や草にも関係あるかもしれないな」
マルクは合点がいったようで首を振っている。すげえ。勝手に解釈して話を進めてるよ。
「オレは魔法が得意だからな! 妖精は魔法を使えるんだぜ!」
いきなり胸を張ってドヤ顔で主張するムラン。おい! いいところなのにでしゃばるな!
「おお! なるほどな! 確かにそうだな、妖精は魔法に長けている。いや~、新種の魔物に出会えて大満足だ! 後で詳しく話してくれ!」
笑顔のマルクはそれだけ言うと、意気揚々と自分のグループへ引き返していった。ホッ、良かった。
それを見送ったコルサバが笑顔で寄ってくる。
「すごいですね! 新種なんですか!? マルクさんに知らせてよかった!」
「いや、ありがとな」
よくわからないが礼を言う。なんだ、コルサバは疑っていたわけじゃなかったのか。素直な人間で良かった。
するとマルイドが俺の肩を叩く。良かったね、じゃねぇよ! 助けろよ!
ギロっと見るとニッと返される。くっ!
やがて調査団団長ノービルのグループが最後に合流して代表と団員がお互いに報告し合う。
俺たちの代表はメイディなので少し不安だ。できれば代わりたいが、あの目を見ると無理。
しばらくして全員が集められノービルが話し出す。
「今回の調査についてだが、コルサバ君が遺跡を発見した以外はこれといった成果はなかった。遺跡に関してもコルサバ君の報告が綿密なため、我々が再び行ってもさほど変わらないと思う。さらに変種のオークどもがいるかもしれないので危険を伴うかもしれない。そこで私は今回の調査はここで打ち切って戻ることを提案したいのだが異論はあるか?」
ノービルの問いに全員が沈黙で答える。
「よし! では町へ帰還する! 少し休憩してから出発しよう」
そう宣言すると一時解散となった。
しばらく休むと出発の声がかかり、行きと同じようにパーティーごとに列をなし歩き始める。俺たちは最後尾。
進み始めたところでメイディの隣に移動する。冷たい目が迎えてくれた。
「師匠、昨日は突然で悪かった。今度から気をつけるからさ、機嫌直してくれないか?」
「……優しくするな」
突き放すようにメイディが言葉を吐きだす。何でだ? 師匠。
「あー、こういうのはそっとしておけよ、な?」
マルイドが俺の背中を叩いてくる。そうなのか?
「そうだよオタンコナス!」
肩にいるムランも賛同している。っていうか口が悪いぞ! この女!
しぶしぶメイディから離れ後ろにつく。ムランが頬にパンチしている。なんだよ!
しばらくコルサバとジェルドと一緒に歩いていくと前方のパーティーが止まったようだ。
「なんか出たみたいだぞ!」
マルイドが警告してきた。なんかって何?
すると前の方から声が上がる。
「オークだ! 囲まれているぞ! 各自対処しろ!」
「ォガァアアアアアアアァァ!」
同時にオークの雄たけびがあちこち上がると、辺りが騒がしくなってくる。
周りの木々の間から土気色のオークたちが出てきた!
慌ててハルバートを背中から取り出し構える。
「師匠!」
「……楽勝!」
呼ぶとメイディは振り向いてニコッとする。ああ! 人まかせの笑みだ、これ!
「ムラン!」
「うっさい! 顔の横にいるからキンキンする!」
ムランが頬に連続パンチする。ああ、うざい!
しかし場所が悪いな。こちらが圧倒的に不利だ。コルサバとジェルドを守りながら戦うのか。
「どうする?」
マルイドが聞いてくる。俺にもわかんないよ! くそ! 考えろ!
「コルサバとジェルドは一緒に行動! 師匠とマルイドは護衛! 後は俺たちが近寄らせないようにして援軍を待つ!」
早口でまくし立ててマルイドとメイディを見るとうなずいている。
ジェルドを見るといそいそとコルサバの肩に手を置いた。ま、…いいか。
「ムラン。遠距離で俺の反対側を攻撃してくれ」
「いいのか? 援護無くて?」
「欲しいけど贅沢言えない」
「プッ。わかったよ相棒」
そう言いながらムランは位置を変えているようだ。
こちらが準備している間にも一匹のオークが近づいてくる。
「早く帰りたぁああああーーーい!」
叫んでオークの一撃をかわし頭をかち割る! ドサッと崩れ落ちる。
まだまだいっぱいいるよ。生き残れるの?
反対側で爆発する音がする。ムランだな。
「ガァアアアアアアアァァアア!!」
仲間を殺されて興奮しているのか、オークたちが叫んでこん棒を振り上げ向かってくる。
振り下ろす前に武器で腹を裂き、次のオークを刺し殺す。その間、後方では爆発音や風を切る音が聞こえる。
なるべく仲間から離れず円を描くように周りのオークを相手する。
俺たちの手を潜り抜けたオークは、マルイドが引きつけメイディが魔法のヤリで止めを刺しているのが見えた。
「あとどれくらいいるんだ?」
「頑張れよ! アンポンタン!」
魔法を繰り出しながら叫ぶムラン。しかし、切っても切っても現れるオーク。ゾンビ映画みだいだ。
「ガァアアアアアアアァァァ!」
あちこちに叫び声が聞こえ、オークの健在ぶりを知らせている。
取りこぼしが多くなっているみたいでメイディたちの旗色が悪い!
「ヨシオ! 踏ん張れ!!」
マルイドの励ます大声が聞こえる。数体のオークを切り倒した所でちらりとメイディを見る。
しかたない顔でうなずいてくれた。ありがとう師匠!
「ムラン。俺も魔法を使うぞ!」
「遅いよ! バカ! もうクタクタだよ!」
ムランが頬にパンチする。まだそんな元気があるじゃん!
よし! こんな時はロボットアニメとかに出てくるアレだ!
「ソーラービームでくたばれぇえええええええええ!!」
手を上げると五メートルぐらい上の空中に光の玉ができる。
「一斉に撃てぇえええええーーー!」
叫ぶと光の玉からビームが続々と発射され、付近にいるオークを貫きバタバタと倒れる。
視線を動かし生きているオークを探し上から射貫いていく!
俺たちの周りにいるオークが見える限り射出しまくる!
オークたちは叫び声を上げる間もなく次々と倒れていく。
──ふと気がつくと立っているオークがいなくなった……。
「これで終わりかな?」
「ああ、たぶんね。やったなヨシオ!」
ムランが嬉しそうに頬をつねる。はー、良かった。しかし、周りは死屍累々。
限界で両ひざを地面につける。体力が無くなったよ。
駆け寄って来たメイディがしゃがんで俺の肩に手を置く。
「……ごめん。許して」
「許すもないよ師匠。何が悪いのか、さっぱりだよ」
顔を上げると微笑んだメイディが肩を叩いて立ち上がる。自己解決じゃないの、それ?
「お前さあ、あんな魔法をどこで覚えるわけ?」
呆れたマルイドが近寄る。
「ハハ。いろいろとね」
「オレは知っているけどね!」
なぜかムランが自己主張する。嘘つけ! 初めて見たくせに。
「スゴイですよ! ヨシオさん!」
「助かってホッとしてますよ!」
笑顔のコルサバと胸をなでおろしているジェルドも来た。
それを見て、後で絶対にジェルドを鍛えると心に誓った。




