さすが宇宙人
黙って見ていると小人が再びメガホンを構える。
「わかったか? トウヘンボク! オレがムランだ!」
「いや、わかったけど、本体はお前なの?」
「そうだ。今、自爆したのは生体モジュールだ。だからオレは無事なの!」
マジかよ! 今までさんざん騙されてた! あのタコじゃなかったのかよ!
「早くオレを回収しろウスノロ!」
ああ、ムランだ。この口が悪い所なんか特に。
手を差し出すとぴょんと乗ってくる。
よく見たら緑色のショートヘアーな女だコイツ。マジかよ……。だから風呂屋で恥ずかしそうにしてたんだな…。
考えれば考えるほど思い当たる節が出てくる。ちくしょー! だから推理小説とかは苦手なんだよ!
とりあえず肩に乗せると服をつかんで座ったようだ。
「そこで大丈夫か?」
「わかんないけど大丈夫!」
どんな返事なんだよ。まあいいか。
ふと横を見ると目が点になっているマルイドとメイディがいた。あー、忘れてた。
「はあ!? 宇宙人? 何それ? 俺をバカにしてるのか?」
モロに現場を目撃されたため、仕方なしにマルイドに説明したらコレ。
「違うんだって! あ、ほらこれ免許証。ムランは爆発したからわかるだろ?」
免許証をマルイドに渡すとマジマジと眺めている。
「確かにこんな精巧な絵なんて見た事ないな。それにこの文字。三か国語ぐらいはわかるが、どれにも当てはまらないな……」
しかめっ面で免許証を食い入るように見てから俺に戻しメイディに顔を向ける。
「メイディは知ってたのか?」
「……もちろん!」
ドヤ顔で答える師匠。でもムランの中の人は知らなかっただろ?
「というわけで、どうしようか? ムランの扱い。もう使い魔じゃ通用しないよな?」
「そうだな……。ムランは死んだ。そして新たにムランという名の妖精と契約した。どうだ?」
顎に手を当て考えながらマルイドが提案する。いいかも。
「よし! その案を入れて、古代種族の末裔ムランが妖精に成長した。タコ型は幼虫だった」
「うーん。無理はあるが、確かに成長すると姿が変わる魔物もいるからな。…古代種族?」
しぶしぶマルイドが賛同してくれる。メイディはうなずいているから大丈夫みたいだ。
「しかし驚いたな! 普通じゃないと思ったが、まさか天空の星の人間かよ!?」
「……私も聞いて驚いた」
マルイドの感想にメイディも同意している。
それから武器を回収し、オークの死体を一か所に集めて燃やし、遺跡へ戻っていく。
遺跡の中ではジェルドとコルサバが無事に待っていた。ほっ、良かった。
とりあえずオークの話しとムランの姿が変わった説明をして一応納得してもらったが、コルサバは疑いの眼差しでムランを見ていた。
この世界で見たことないけど、妖精には見えないもんなコイツ。
俺たちが天井に吸い込まれた件も暗闇で何もなかったと話し、古代の謎技術としてこちらも納得してもらう。
日も傾いているのでこの遺跡にそのまま泊まり、翌日出発することになった。
「団長たちにも同じ説明をするのですか?」
休んでいると困惑顔のコルサバがムランを見つめる。
「そうだけど?」
「マルクさんは魔物学の専門なんですけど。このような妖精はいるんですかね?」
いないって言えない。もう白を切り通すしかない。
「その気持ちはわかるが俺も見ていたからな。新種だろ?」
マルイドがフォローしてくれる。ありがたい! さすが仲間!
「まあ、そうですね。こんなかわいい妖精……ヨシオさんはズルイ!」
半目で俺を見るコルサバ。おい! 疑ってんじゃなくて、嫉妬か! ニヤニヤして喜んでじゃねーよ! タコ! ああもう、 タコじゃねぇ!
よく見たらメイディの姿がいない。外か? お願いがあったのに。
遺跡を出て探すと近くの木の根元で体育座りしているメイディを発見した。何やってんだ?
「師匠!」
「うわっ!」
ビックリしてメイディが飛び上がった。逆にこっちがビックリするわ!
「……何?」
メイディが目を見開いている。何かあったのか?
「師匠! 俺はもう我慢できない!」
メイディに近づくと木に体を預け逃げる。おい! ちょっと!
「もう、我慢できないんだ!」
「だ、ダメだ! シンシアがいる!」
耳が真っ赤でメイディが叫ぶ。
「シンシアは関係ないだろ! 俺はもう、我慢の限界なんだ!」
「わ、わ私は……」
「早く教えてくれよ! 魔法を!」
メイディの両肩をつかんで思いの丈を叫ぶ。
するとメイディの顔が真っ赤になる。なにか恥ずかしいのか?
「……ま、ほ、う?」
「そうだ! いつまでたっても教えてくれないじゃないか!」
顔を伏せるメイディ。なんかしたの、俺?
「師匠! 俺はってばああぁあ…」
いきなりぶん殴られた!
尻もちをついてメイディを見上げると肩で息をしている。怒ってんの?
「フゥー、フゥー、バカ! こんな時に! バカ!」
激おこメイディはフーフーと荒い息を吐いてズカズカと足を踏み鳴らし遺跡へ戻っていく。
ボーゼンとその様子を見送っているだけだった。何で?
「なあ、ムラン? 俺はメイディに何かしたか?」
「オレは楽しかったよ! ヒヒヒ」
肩に座って足をバタバタしながら嬉しそうなムラン。ホント、ムカつく。が、やりずらい。
「ムラン。大丈夫か?」
「何を? オレは平気だよ。ただ手が二本になったから不便かな?」
「お前、元々二本だろ! 姿も俺らと同じじゃねぇか! 騙しやがって!」
ムランはすくっと立つと俺の頬にパンチしてくる。痛くないけどウザい。
「あたりまえだろ! こんなカッコでノコノコ出たら舐められるだろ! アンポンタン!」
「わかったから、いつまでもパンチしてるな!」
ああ、前よりもやりずれぇ。
ヨロヨロと立ち上がるとメイディの後を追い、遺跡へと足を向けた。
遺跡の中に入ると、すでにメイディは背を向け寝ていた。ふて寝か?
マルイドが片目を開けて俺を見ている。何か知っている顔。睨むと目を閉じる。
俺も壁を背に腰かけると寝る体制になる。横になるとムランが胸の辺りにやってきて寝始めた。
いつもの位置かよ! 女だろお前は! よく見たら、かわいい顔してるし…。
ヤバい。これからどう付き合えばいいの? てっきり男かと思ってたんだけど。
シンシアになんて言えばいいんだ……。
殴られそう、気が短いからなぁ。




