中の人などいないはず
出入り口を閉じている魔法を解除してもらい、顔を出し辺りをうかがう。
「一旦、引き上げたみたいだな。さっきまではこの岩を攻撃していたぜ」
後ろにいるマルイドがささやく。
ふと気配を感じ振り返るとメイディが蹴っ飛ばそうとしている。
「オイ! いつも蹴っ飛ばすな! 待て!」
「……チッ」
怒ると舌打ちしやがった。なんて師匠だ! マルイドが苦笑いして急に真面目な顔つきなる。
「ちょっと待て。ひょっとしてコッチから襲うのか?」
「それが?」
俺とメイディの顔を見てマルイドが呆れている。
「あの…私たちは?」
おずおずとジェルドが手を上げているのが奥に見える。戦力は……無理だな。
「ジェルドはその部屋でコルサバを守ってくれ。いいか?」
「わかりました。お気をつけて」
手を振ってジェルドが奥へ引っ込んでいった。
「まったく。命がけの面白さだな」
ブツブツ言ってマルイドがニッとする。なんか怖い。
「マルイドが案内してくれ。いくぞ!」
素早く外に出る。まだ日が出ており、薄い影を森に落としている。
「こっちだ」
声を落としてマルイドが先に進む。興奮しているのかムランが頭を叩く。
しばらく行ったところで口に人差し指を当ててマルイドが振り返る。近いのか?
マルイドの元へ駆けつけ、木の陰に隠れる。
指で示す先を見ると、でかい茶色のオークが集まっている。緑色のローブを着たのもいた。
「師匠。風の魔法で陽動してくれ。突っ込むから」
メイディにささやくと、うなずいてくれる。よし!
「じゃあ、後で。いくぞムラン」
マルイドに言うとウインクの合図。ムランは叩いて合図してきた。
「しょ!」
オークの集団に向かって駆け出すと、一陣の風が吹きオークたちを傷つける!
いきなりの攻撃にパニックになっている。さすがだ師匠。
「おらぁあああああああああああ!!」
全速力で近くのオークに肉薄するとハルバートを横なぎに振るい両断し、次に移る。
「ウガァアアアアアアア!」
驚いたオークが慌てている間にもう一匹を切り倒す!
体制を立て直したオークたちが迫ってくる。
「オレもいるぞー!」
ムランが魔法を行使し、火の玉を一匹に当てると爆発する!
突っ込んでくるオークに武器を突き刺し絶命させる。
「魔法がくるぞ!」
マルイドの警告に頭を巡らすとローブを着たオークが魔法を行使するところだった。
「ああ、くそ!」
その場から素早く離れると、地面が盛り上がり岩のスパイクが飛び出してきた! 怖わ!
「ムラン!」
「うるさーーい!」
ムランが叫んで魔法のヤリでオークの魔法使いを串刺しにする!
振り返り残りのオークに向かう。
オークがボロボロの鉄の棒を振り降ろすのを避けて足を突く!
「アガァアアア!」
痛みで鈍くなった所を火の玉が当たり爆発する!
今のは師匠か?
「早くしろ! 俺が持たない!」
最後の一匹をマルイドがオークをけん制しているが分が悪そう。
急いでオークの後ろへ回り頭をカチ割る!
これで最後かな? 辺りを見回すとオークの死体がゴロゴロと転がっている。
ドヤ顔のメイディがこちらに向かう背後にチラリと何がが見えた。なんだ?
「メイディ! 後ろ!」
慌てて叫びつつ駆け出す! 間に合ってくれ!
「ヨシオ! 急げ!!」
ムランが頭を叩いて叫ぶ! わかってるよ! タコ!
俺の猛ダッシュにメイディが戸惑っている。
ちょうどメイディが振り返ると新手のオークが近づいている所だった。
師匠! 動け!
「くそっ!」
何故か動かないメイディの元にたどり着くと、オークがこん棒を振り上げているところだ。
「バカ! 動けーーー!」
武器を捨て、メイディに飛びついて抱きしめ地面を転がる。
ゴスッ!
こん棒が地面に当たる音がする。
「ガァアアアアアアアア!」
オークの叫びが響く。
「お前の相手は俺だ!」
追いついたマルイドがオークを相手にしているようだ。
「師匠! 大丈夫か?」
「え!? ああ、ありがと」
抱きしめて下にいるメイディに聞くと顔が赤くなっている。なんで?
その場にメイディを残し、急いで立ち上がる。
武器は…あった! ちょっと離れているところに落ちている。
走って武器のところへ行こうとした時、ローブを着たオークを発見した。ヤバい!
「ムラン!」
あれ? 返事が無い!
腰に吊るしたマトックを持ち魔法使いのオークの方へ駆け出す。
どこだムランは? 走りながら辺りを探す。
魔法使いのオークの元へたどり着く前にオークが火の玉を出した!
盾を構えて突っ込むが火の玉は俺に向かってこない。何故?
火の玉が飛来する方を見るとヨタヨタと歩いているムランが見えた。
「ムラーン! 逃げろーーー!」
叫びながらオークに武器を振るうが避けられた!
どこかで爆発する音がする。ムラン!
「早く死ね!」
盾を構え突っ込みオークを弾き飛ばし、追いかけ止めを刺す!
振り向くとまだマルイドが戦っている。あーくそ!
右手を上げ魔法のヤリを残りのオークへ叩き込む!
結果を見ずにムランの方へ走る! 生きててくれムラン!
そこには黒コゲのタコがいた……。
火の玉が当たったのか…。
「う、そ、だろ……」
両ひざを地面につき、コゲたムランの手をつかむ。
……なんの反応も無い。
い、嫌だ。
嘘だ! 嘘だ! 嘘だ!!
「嘘だろムラン! 返事しろよ! 相棒だろ?」
くそ! 返事が無い。
「頼むよムラン…。お前がいないとダメなんだよ……。俺を一人にしないでくれよ。たった一人のパートナーだろ…。いつか帰るって約束したじゃないか……。ふざけんなよ! ムラーーーーーーン!!」
『自爆装置が作動しました。なるべく離れてください。サヨウナラ』
悲しむ俺をあざ笑うかのように前に耳にしたアナウンスが流れる。なんで自爆?
ハッとムランを見ると、煙がプスプスと上がってるぞ!
驚いて後ろに尻もちをついて下がる。
ピーーー
と、鳴る音がムランから聞こえ
ドカッ!
ムランが小さい閃光を残し爆発した!!
後には何も残っていなかった……。
「な、なんで爆発するんだよ……ムラン?」
唖然としている俺の前にトコトコと、どこからか小人が出てきた。誰だ?
頭が混乱して見ていると、そいつはメガホンみたいなものを取り出し口に当てる。
「あー、あー。聞こえるか? オレはムランだ。アンポンタン! 死んでないぞ!」
何言ってんだコイツ。でもムランと同じ声だ。
すると何やら小さい装置を取り出しメガホンに当てる。
「カチッ。『頼むよムラン……。お前がいないとダメなん…』」
「うわぁーーーー! それ以上続けるなーーーー! 恥ずかしいだろぉおおおお!!」
慌ててさえぎる! 恐ろしすぎる! この攻撃は精神を削られる!
すると小人は俺の近くまでやってくる。
ホントにムランなのか?




