遺跡で発見する
それから丹念に壁面を調べると穴が空いている箇所を発見した。
「これは…? 何でしょうね?」
コルサバが首をかしげ、その横でメイディとジェルドが興味津々に見ている。
マルイドは周囲を見回りに出かけていったようだ。
「ムランだな」
「やっぱり? そう思う?」
肩に降りてきたムランが見つめてくる。
「たぶん。あの穴にはお前の手がピッタリそう」
ムランを持って穴に近づくと、恐る恐る手を伸ばし、奥へと入れる。
ガゴ!
横の壁の一部が突然張り出し、ちょうど目の前にいたジェルドを突き飛ばす!
驚いたはずみでジェルドの頭と手足が引っ込み地面に落ちた。ビビリすぎ!
「ジェルド! 大丈夫か?」
「び、ビックリした~~~!」
声をかけると冷や汗をかいた頭だけを出してきた。面倒だからほっておこう。そうしよう。
「ひょっとしてその使い魔のムランがこれに関係あるのですか?」
察したコルサバがムランを見つめる。さすが学者だ。まあ、ここまですればわかるか。
「実はそうなんだ。こいつは古代文明の生き残り……」
「なるほど! もしかしてこの岩は遺跡なんですかね?」
「かもしれない。こいつもわからないみたいだ」
とりあえず嘘をついてこの場を誤魔化す。コルサバは納得しているみたい。
メイディが後ろにいて俺の腹をつねっている。痛いって、師匠! しょうがないじゃん。
張り出した壁の後ろには暗い空洞が口を開いている。
「……灯り」
メイディが魔法で灯りを点け暗闇を照らす。
そこには奥まで続く通路が見えるが明かりが届かないようだ。グイグイとメイディが俺の背中を押し始めた。
頭を巡らすと顎で行けと催促する。言葉で言えよ!
少しビビリながら踏み込み通路を進むが特に何も無い。通路は四角く人が通れるぐらいの大きさ。
しばらく進むと突き当たり、横にドアがあった。
後続を見ると、メイディ、コルサバしかいない。ジェルドは怖くて来ていないようだ。
ドアはスライド式のようでスッと横に収まって開く。
中に入るとガランとした空間だけがあった。
「何もないな……。ムラン?」
「オレもわからないよ」
ムランがポンポン頭を叩く。イライラしてるのか?
「わぁ~。不思議な空間ですね。何もないですね。壁には絵や記号もありませんね」
コルサバがキョロキョロしながら壁を調べていてメイディは隅で体をもたれている。
調べるため、ちょうど部屋の真ん中辺りにくると急に体が軽くなる!
「おおぉおおお!」
スッと上に吸い込まれ、天井を抜ける。
「痛て!」
尻もちをついて落ちるとそこは青白く光るラインがいくつもあるサイバー的な部屋のよう。
立ち上がろうとすると頭をぶつけ、中腰になる。ムランに拉致された円盤みたいだ。
「ここが何かわかるかムラン?」
「古すぎてわからないけど、きっとオレに反応して動いたんだ。システムは生きているみたい」
頭から下に降りたムランはキョロキョロして部屋を観察している。
壁に近づき見てみると青いラインは横に走り、部屋を取り巻いているようだ。
再び壁に穴を見つけたムランが手を入れる。
と、アナウンスが流れ始める。
『……ガ……ガガガ……の星を……ガ…ガガ……ガ…しました。この星を訪れた仲間に……ガ…ガガ…退去してくだ…ガガ…ガ』
まるで壊れたラジオ。データが壊れているのか老朽化しているのかわからないが聞き取れない。
「ムラン?」
「……ダメだ。わからない! ちくしょー!」
うなだれたムランは床を叩いている。その気持ちはわかる。
ふと壁を見ると、どこからか出てきたのかドールハウスのようなミニチュアのベッドなどが収まった部屋が壁一面に現れている。
各部屋をエレベーターみたいなチューブが走り、つながっているようだ。
「こ、これは何だ?」
俺の呟きにムランが顔を向ける。
「これは!! ここはシェルターだ。きっと下の階は倉庫でここが居住スペースなんだ!」
「って事は、ムランの仲間が昔、使ってた後なんだな?」
うなずくムラン。おい! 希望が見えてきた!
「じ、じゃあ、救難信号は?」
「コントロールする場所が分からない。さっきも言ったろ? 古すぎるんだ。オレはエンジニアじゃないからムリ」
再びうなだれるムラン。あっという間に希望がなくなった。
ムランはトコトコと穴の前に行くと再び手を入れる。
すると壁一面にあった部屋が引っ込んで、ただの平面になった。スイッチを切ったのか?
ムランが俺によじ登ってくる。
「戻ろう。ここにいても空しくなるだけだ」
「いいのか?」
頭についたムランがペシペシと叩く。いいんだな。
「また真ん中に行けば下に降りられるよ」
ムランの言葉に真ん中に行くとスポッと下に落ちる。
「おぁあああ! 痛てぇえ!」
床に思いっきり尻を打つ! もっとフワフワで降りるとかないのか!
「お、ちょうど良い時に戻って来たな」
さっきまでいなかったマルイドがニヤリとしている。嫌な予感。
「どうしたんだ?」
よく見るとジェルドもいる。
「……敵」
「見回っていたら魔物がわんさか来たんで、慌てて逃げ込んだところだ」
メイディに続いてマルイドが説明する。
スライドドアから顔を出し廊下を見ると出入り口辺りは何かで塞がれているよう。
「……私が塞いだ」
後ろにいたメイディが肩に手を置く。なるほどね。
「ど、どうしましょう? 僕たち大丈夫ですか?」
焦っているコルサバがオロオロしていて、その横ではジェルドが青い顔で立っている。
「マルイド、ここから強行して出たら逃げられるか?」
「うーん。正直、お前ら次第だな。相手は変種のオークだ。ローブを着たヤツもいたから魔法も飛んでくるぞ」
顎に手を当てて思い出しながらマルイドが答える。
「……敵は七匹。楽勝」
ニコリとしたメイディが俺の肩を叩く。おい! おたくの“楽勝”って当たったこと無いじゃん!
マルイドを見ると苦笑いで両肩を上げる。コルサバは息をのんでジェルドは固まったまま。
はぁ。覚悟を決めるか。




