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調査団、森へ入り調べる

 

 調査団が森へ入って二日目、俺たちは奥へと進んでいる。

 今回のルートは初めてのようで慎重に歩んでいる。

 俺たち、メイディのパーティーは調査団団員コルサバの護衛を任命され一緒に行動している。

 今は先行しているパーティーの後をついていき、コルサバと会話している。

「へぇ~。ミレアさんってそんな一面もあるんですね。参考になります」

「だろ? お前も一回あの宿に泊まってみれば?」

「そうしたいんですけど、決まりでダメなんですよー」

 残念そうにするコルサバ。片思いの辛い所だな。

「ハハ。おいおい、団員は金持ちばっかりだぞ。あんな宿を勧めるな」

 面白そうにマルイドがからかう。

「い、いえ。そんなことはありませんよ!」

 コルサバが手を振って否定している。

「……そうなの?」

「いや、少なくとも俺よりは金持ちだ」

 メイディが突っ込むので俺がフォローする。

「……アホ」

 半目で俺を見るな! あと、頭叩くなムラン!

 そうして夕方まで進み、野宿に良い場所を探し休憩する。


「今回の目的地は決まってるのか?」

「いえ、後二日ほど行ったところを中心に探索する予定です。何もなければバンガラの町へ帰ります」

 コルサバが丁寧に説明してくれる。優しいなぁ。

「お前、一回説明受けてたろ? もう忘れてたのか?」

 ムランがペシペシ叩きながら文句を言う。あーうざい!

「そう、忘れた。シンシアの件で覚えたことが全部、吹っ飛んだ」

「ホントにアンポンタン!」

 呆れたムランがぼやき、聞いていたメイディは吹いている。思い出すと恥ずかしい。


 それから各グループごとに見張りを交代していく。これはパーティーごとではなく、ガットが適当に組み分けしていた。

 魔物はたまに現れるぐらいで先行パーティーが対処していたようだ。人数が多いと楽だな。

 その夜は俺と弓矢の使い手の女性マイ、狼の獣人で剣士モントルーの三人が当たった。

 木に寄り添いマイは好奇心を俺に向ける。

「あんたよくメイディと一緒で平気だね?」

「意思疎通の件なら大丈夫だよ。前よりもしゃべる様になった」

「へぇ、噂は本当だったんだ。私も前に組んだことがあったんだけどさ、イライラしちゃってね」

 マイが苦笑いする。そうか、ここに被害者が。

「お前はメイディの弟子なんだろ?」

「そうだよ」

「まったく魔法使いに見えないんだけど?」

 疑いの眼差しのマイ。一番痛い所を突かれた。

「実はあまり教わってない。ムランの方が進んでいるかな」

「まあね! オレが一番弟子だからね!」

 自慢げにムランが自己主張しはじめる。串焼きにしたろうか!

 マイは笑って、モントルーはそんな俺たちのやりとりを楽しそうに眺めていた。寡黙なのかね?


 二日後、探索地点へ着くとそれぞれパーティーごとに別れて調査する。

 ここからが本番だ。

 コルサバが行く方向を指示し森の中を進んでいく。

「こんな森の深くは初めてだが、それほど変わらないな」

 マルイドが呟く。そうなのか?

「そうですね。ここに生えている草木は、あまり昨日通った場所と変わりませんね」

 コルサバが観察しながら答える。特に通行に邪魔なものはないので楽に歩いて行ける。

 しばらく進んだところで森の雰囲気がガラリと変化してきた。

 ツタが生いしげる大木に苔むした岩場、なんとも昔に写真で見た富士の樹海チックな感じに似ている。

 するとコルサバが熱心に草木を観察し始め、サンプルなどを採集し始める。

「……護衛!」

 メイディの合図でマルイドが周りの偵察、俺とジェルドはコルサバの元へ移動する。

「コルサバ、この辺は珍しいのか?」

「ええ。初めて見る草などがありますね。果実の木があれば嬉しいんですけどね」

 コルサバはスケッチしながら目を離さずに答えている。おお、真剣だな。

 一通り調査が終わると次の場所へ移動して再び調査する。これが繰り返される。なるほど、時間がかかるわけだ。

 日が暮れる頃、ちょうど良い場所で野営をとる。

 一人が見張りで三交代になるので少しきついな。メイディがポーションをチェックしているのを見て少しビビる。

 コルサバとジェルドはそのまま寝てもらった。

 幸い夜は何事もなく過ぎ、翌日も移動しながら調査を進める。


 歩み続けた先で立方体と思わしき岩が半分埋まっているのを発見する。人工物っぽいな。コンクリ?

「これはこの文明にはない素材じゃないか? ムラン?」

「……」

「ムラン?」

「あ! 何?」

 何かに集中していたのかムランの様子がおかしい。

「どうした? この岩に見覚えがあるのか?」

「んー。なんともいえないけど、懐かしい感じがするなー」

 あいまいな返事をするムラン。何か知っているのか?

「これは不思議ですね! 後で団長に知らせないと!」

 コルサバがメモをしつつ興奮している。

「おーい! こっちに謎のでっかい岩があるぞ!」

 少し離れた場所からマルイドが声をかける。

 皆、そちらへ移動した。

 そこには先ほどの岩と同じ材質でできた二階建てくらいの大きな立方体があり、壁面は所々コケで覆われていた。

 周囲を警戒しつつ、近づき様子を見る。

 壁にあるコケを削ってみると線のようなものが現れる。古代の壁画的なものか?

 線に沿って削っていくと、それは絵のようなものだった。

 少し離れてみる。そこにはよく知っている姿が描かれていた……。

「おい、ムラン!?」

「見てるよ。オレに似てるっていいたいんだろ?」

 壁に刻まれた五本足のタコ。さらに削っていくと文字のようなものが刻まれている。

「ムランは読めるか? ってか、お前の星の言語?」

「うん。これは間違いなくイプシロン星のだけど、古代語みたい。違いすぎてわからないよ」

 ムランは興奮しているのかペシペシと俺の頭を叩いている。少しうざい。

「よし! 他にも調べてみよう」

 壁面に沿って回っていくとメイディたちと合流した。皆、興奮して調べているようだ。

「……ムラン」

 メイディが俺たちに気がつくと壁面の一部を指し示すと、ここにも例のタコが刻まれていた。

「師匠。後で話しがある」

「……わかった」

 うなずくメイディ。その横でコルサバが手を動かしながら興奮している。

「これはスゴイ! 新発見ですよ! 早く団長に知らせないと!」

 なんかヨダレが出そうな勢い。これが学者の性なのか?

 マルイドは少し離れて警戒している。あまりこういうのには興味ないみたいだ。

 近くにはジェルドがいて荷物を降ろしていた。

「とりあえず一旦戻りませんか?」

 メモを取り終えたコルサバが主張する。いや、このままほっとくのもマズい。ムラン的に。

「もうすこし調べてからの方がいいと思う。安全確認も含めて」

 俺の言葉にコルサバの顔が曇る。嫌なの?

「マルイドはどう思う?」

「俺はヨシオの意見に賛成だ。付近も含め調べた方がいい。先に危険を知る方が後でやりやすいだろ」

 辺りを見回しながらマルイドが説明する。意外に賛同を得た。考えてる事は違うがいいだろう。

「師匠は?」

「……賛成」

 手を上げてメイディも同意する。ホッ、良かった。ジェルドを見るとうなずいていた。ま、いいか。

「…わかりました。もう少し調べましょう。明日、朝から戻れば大丈夫でしょう」

 降参したコルサバがため息をつきながら承諾してくれる。すまないな。

 その後、メイディと二人、皆と少し離れてムランについて説明した。

 終始無言だったが、わかってるのか?



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