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調査団に加わる

 

 キャラバンはこの町に一週間ほど滞在した後、再び列をなし他の地へ旅立っていった。

 あの一件以来、シンシアの態度が変わり少しやりずらい。

 具体的には無理して笑顔を作ってる事。ぎこちなくてビックリだ。

 たぶん俺のアドバイスが良かったのだろう。

 あと、物腰が柔らかくなったように見える。少し色気が出てドキドキだ。

 そしてムランが以前より怒りっぽくなった。何故だ?

 そんなわけで俺たちパーティーは今、ギルドの受付カウンターにいる。

「揃ったね、二階に上がって。話しがあるの」

 シンシアが案内に立ち上がると先導していくので後からついていく。

 二階へ行き一室の扉を開け中へ入る。

 そこには冒険者らしき人たち一〇人以上が着席していた。前方には数人が対面して座っている中、コルサバの姿を認める。

 何が始まるんだ? メイディを見るとうなずいている。いや、わかんないって!


 シンシアの案内で俺たちが空いているイスに座ると、前方にいた髭の男が立ち上がり皆を見渡して口を開いた。

「揃ったようだな。この場にいることで分かっていると思うが、君たちは今回の調査団に選ばれた。知っている者もいるだろうが自己紹介させてもらおう、私は調査団団長ノービル。彼はマルク、隣がコルサバ。我々三人が調査にあたる」

 ノービルはイスに座っている太った男マルクと、顔見知りのコルサバを紹介するとそれぞれが頭を下げる。

 すると一人の冒険者が席を立ちこちらに向く。あ、知ってるわ。よく風呂で話している男だ。胸につけてるプレートがシルバーだぞ。

「俺が冒険者を統括するガットだ。よろしくな。今回の顔ぶれは個性的で楽しみにしている。ヨシオ! こっちにこい!」

 突然呼ばれてビックリして立ち上がる。ガットが手招きするので前へ行き横に並ぶ。

「こいつは期待の新人だ。この中で唯一のブロンズだがいじめるなよ」

 俺の肩を組んで紹介する。めちゃ注目されてるよ。つーか皆、アイアンプレートをしているのが見える。

 前にゴブリン退治で一緒だった冒険者がちらほら見え、俺に笑みを返してくれている。もちろん俺は苦笑い。

 解放されると、そそくさと元の席まで戻る。つか何で真後ろにシンシアが座ってるんだよ。そんなジッと見られても困る。

 それからは調査団のルートの説明、遠征に必要な道具や食料の調達方法などが説明される。

 食事に関しては現地調達が基本のようだ。水もそう。万が一のために保存食を少し持っていくみたいだ。

 俺たち冒険者は調査団員の身を守るのが主な仕事で、ヤブを切り開いたり、道を通したり野営の準備とかも仕事の内らしい。

 一通り説明を終えると、パーティーが各自紹介をしてお互いを確認しあった。

 今回の参加パーティーは俺たちを含め三パーティーのようだ。それぞれが担当する調査員を護衛する。

 出発は急だが明日のようだ。俺には予定がないからいつでも大丈夫だが。しいていうと修行か?

 最後に取り決めをして解散となった。


「で、どうすんだメイディ?」

 一階のカウンターに戻った俺たちはパーティー内の確認をしている。

「……任せた」

 メイディが微笑む。俺を見て言うな! あと、マルイド! 肩を叩くな!

「えっと、私は?」

 控えめにジェルドが手を上げる。俺より年上だろ?

「ジェルドには荷物を持ってもらおうと思うけどいいか? もちろん俺も手伝うけど」

「ああ、それなら大丈夫だ。良かったよ、戦えとか言われなくて」

 ホッとジェルドが胸をなで下ろす。お前は俺よりもランクが上だろ! どうしてなれたんだ? 不思議。


「あたしは?」

 なぜかシンシアが参加してきた。仕事は一つしかないだろ?

「シンシアは受付をがんばってくれ」

「そっちじゃないでしょ!! 一週間待ってんの! アンポンタン!」

 語気も荒くシンシアに怒鳴られる。一週間前って…。ああ、あのキャラバンでの事? マジで? 昨日まで何も言わなかったのに!

「つ、つまり、こ、ここ告白ってこと?」

「そう」

 頑張って笑顔になってるシンシア。ムランが頭を叩きだす。あーうざい!

 ふと目を向けるとメイディ、マルイド、ジェルドがガン見してる。しかも辺りが静かすぎる!

 ギルド内が停止してるみたいで、そこら中から視線を感じる。プレッシャー半端ない。

「いや、見ろよ。みんな注目してるぞ?」

「だから?」

 すましてるシンシア。だが耳が赤いぞ。どんな公開プレイなんだよ! 恥ずかしさマックスだろ!

「あーくそ! こっちにこい!」

 無理矢理シンシアの手を引っ張り、ギルドを出て建物の横に行く。くそ、この際、通行人は無視だ。俺には見えない!

 壁際にシンシアを立たせると素直に従う。もう、お互いわかってるからいいだろ?

「俺はロマンチストだから、もっとムードがあるときに言いたかったよ」

「早く!」

 俺の胸ぐらをつかんだシンシアが急かす。ホントせっかち。知ってたけど。


「好きだ! 付き合ってくれ!」

「良し!」

 満面の笑顔で応える。良しってなんだ!? 良しって! ホントむかつく!

 いきなり唇を奪うとシンシアが目を閉じ背中に手を回してきた。周りが「おぉおおおーーー」とかどよめいているが聞こえない!

 少しして顔を離す。

「わかった?」

「…よし」

 口に手を当てて真っ赤になったシンシアがつぶやく。あくまでもそれだな。

 振り返ると見物人が輪になっている……。ああぁ、恥ずかしくて怒鳴り散らしたい!

 黙って下を向く赤いシンシアの手を引いてギルドに戻ろうとすると、見物人がギルドへ我先にと殺到していく。おい! メイディたちもいるぞ!

 ギルドのカウンターに着くと息も切れ切れの三人がすまし顔で待っていた。特にジェルドは肩で息をしてるからバレバレ。

「……また明日!」

 メイディが視線を泳がせ、手を上げ出口へ足早に消えて行き、無言のマルイドもニヤニヤして後に続く。ジェルドはラウンジへ行くようだ。シンシアはいまだ顔が真っ赤。


「はぁ。なんでこうなるんだ。なぁ、ムラン?」

 あれ? 返事が無い。ってか首が軽い。

「シンシア、ムラン見なかった?」

「いいえ。そういえばいないね……」

 恥ずかしそうに上目づかいで答えるシンシア。さっきの勢いどうした!?

 ギルドを見回してもタコの影がない。面倒だな。

「探すの?」

 シンシアが心配そうな顔をしている。

「大丈夫。ちょっと行ってくる」

 微笑み、シンシアの頭をなでてからギルドを出た。


 きっとあのタコはあそこだな。なんでこんな時にいなくなるんだ?

 走って広場へ直行する。

 すっかり夕方の空は辺りを赤く染めていて細長い人影がまばらに見える。

 いた! あの丸い影の先にはゆでダコ。少し安心して一人たたずむムランに近づく。

「ムラン!」

 声をかけるとぎこちなく丸い頭が振り向く。

「ヨシオ……」

「どうしたんだよ。突然いなくなりやがって」

 ふいっとまた前を向くムラン。返事は?

 しょうがないので隣に腰を降ろす。

「心配したんだぞ。またいなくなったかと思ってさ」

「オレがいなくてもいいだろ。シンシアがいるもん」

 スネた感じで下を向くムラン。おい!? どうしたんだ?

「なんだよ? ひょっとして妬いてるのか?」

「な、なな何で妬くんだよ! バカ!」

 思いっきり動揺してるムラン。つか、お前に性別なんてあんの?

「確かにシンシアとは付き合う事になったけど、お前は俺のパートナーだろ? お互い生まれた星は違うけど一番信頼してるし、相談できるのはお前だけだ」

 ムランがこちらを向き目を合わせる。

「ホントに?」

「もちろん。相棒だろ?」

 スクッとムランは立ち上がると俺の背中をよじ登りいつもの定位置へ着く。

「ま、オレがいないとダメだからな、ヨシオはさ。面倒見てやるよ」

 何言ってんのこのタコ。まあ、いて良かった。

 自分の伸びた影を追いながら安宿へノンビリ歩いて帰っていく。



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