キャラバンがやって来た
しばらくジェルドを見ていると、モソモソと頭と手足を出してきた。
「ふぅー。危なかった」
何事も無いように立ち上がり俺たちを見る。言うことはそれだけ?
ジェルドを凝視しているとメイディが無言で俺の肩を叩く。いや、師匠もかかわってるからね?
「そんじゃ戻るか」
屈伸をしてマルイドがウインクする。ホント、マイペースだよね。
なんかグッタリしながら森を抜け帰途につく。
ムランはすでに寝ていた。早っ!
「で、何で依頼と違うのを倒してくるの?」
ギルドに戻るとシンシアがこれ。もう少し労いとかないの?
「ハハ、そう言うな。不意な襲撃を受けたんだ」
ギロリと睨むシンシアから逃げながらマルイドが説明する。
「そ、そうだよ。シンシアも鬼みたいにならないでさ、ほら笑って?」
「何であんたに笑うの?」
嫌な顔して拒否される。悲しいよ俺は。
「……報酬」
今までのやり取りを聞いてないようにメイディが切り出す。
「あ、そうね。少し待ってて」
メイディに微笑むと奥へ消えていくシンシア。言ったそばからコレ。起きたムランが頭をポコポコする。
やがてシンシアが戻ってきて報酬を渡すと満足気なメイディ。俺も懐が温かくなって嬉しい。
「あのう、もしよろしければ、私も加えてもらえませんか?」
ジェルドが頭をかきながらメイディに訴えている。マジかよ!
メイディに注目するとしばらく考えて…うなずいた! ジェルドがガッツポーズする。おい!
「ま、待てよ! いいのかメイディ!?」
「……任せた」
俺の肩に手を乗せるメイディ。厄介ごとは全部、俺に回す気か!
反対しようと口を開きかけると鋭く冷たい目を向ける。ひどいよ師匠!
気楽な声が上から聞こえる。
「頑張れよー」
「ふざけんなタコ! お前も一緒だからな!」
すると頭を連打してくる。あーうざい!
「皆さんよろしくお願いします」
デカい体で深々とお辞儀をするジェルド。いや、人柄はいいんだけどね。
それを見ていた苦笑いのマルイドは、そのまま出口へ消えて行った。逃げたな……。
「ま、まあ、よろしく」
しょうがないので挨拶して解散した。
先の事を思うと頭が重い。このパーティーで大丈夫なのか? そう思いながらギルドを出ると通りが騒がしい。
見ると大きな幌付きの荷馬車が数台並んで通っている所だった。向かう先は広場のようだ。
荷馬車の周りには人垣ができて皆、見物している。
「……キャラバンが来た」
いつの間にか後ろにいたメイディが呟く。
「何? 何かあんの?」
振り向いて聞くとニヤリとする。
「……めったにない品物、食べ物。新しい服もある」
「ああ、そのキャラバンね! 師匠は行く?」
「……もちろん!」
楽しそうに荷馬車を眺めるメイディ。なるほどね。
俺たちも明日、行ってみよう。
翌日、朝食を済ませ賑わう広場へ向かう。マルイドを誘ったが用事があるようで断られた。つれないなぁ。
荷馬車の回りには、様々な商品が並べられ人々が楽しそうに見ている。つられて露天も複数出店していて、肉の焼けるいい匂いや水蒸気を上げ、これから客を迎える準備をしていた。
「これはちょっとした祭りだな」
「はぁー、面白い文化だな」
どこからか流れる曲の調べに乗せて、ムランを頭に人波にまぎれて歩いている。
荷馬車の商店をめぐり、いろいろな物を見たり手に取ったりして楽しむ。ついで新しい服も買っておく。もちろん予備の分も。
露天で串焼きを買い、少し離れた場所で座る。
「ひさびさに休日な感じだな?」
「はあ? いつも休みなくせに!」
頭から降りて隣に座ったムランが反論する。ホント、口悪いなコイツ!
「あのさ、ムラン」
「なんだよ?」
いぶかしげな目で俺を見るムラン。いや、悪口じゃないぞ。
「魔法のことで気がついたんだけどさ」
「何を?」
「魔法ってイメージだよな? とするとさ、文明の差によってイメージの違いがあると思うんだ」
「ああ、お前の魔法のことか。文明の差って何のこと?」
俺の話しを理解したムランが尋ねてくる。それよ!
「ムランの星は地球より文明が遙かに進んでるからわかるだろ? イメージといっても何もない所からだと難しいけど、見本があれば確固たる想像ができる。だから師匠も俺の魔法を見て覚えた。つまりこの世界には娯楽が少ない。自分たちにも思いつかないような物語や映像とか、それがないから魔法のイメージが乏しいんだ。きっと」
「あ~、わかったぞ! イメージの元となる物が少ないってことか! なるほど、だからビーム出せって言ったのか」
合点がいったムランが笑う。理解してもらって嬉しいよ。
「だろ? ひょっとして俺ら凄い魔法使いになれるかも?」
俺の言葉にジト目でムランが顔を向ける。
「はぁ~。ヨシオは気楽だなぁー。オレの苦労も知らずに」
「おい、おい! 可能性が見えてきたんだぞ! 心配性だなー」
ムランは串焼きを頬張り遠くを見つめる。
「可能性ね。ま、あまり期待しないでおくよ」
離れた人混みを眺めると、いろいろな種族が思い思いに楽しんでいる。すっかりこの町にもなれたな。
「ムラン…。俺さ、お前にありがとうって言いたいんだ…」
言いかけてふと隣を見るとタコがいない……。おい! 感謝の言葉を返せ!
「む、ムラン?」
慌てて立ち上がり回りを見てもいない…。どこいったんだ!? 調理されるぞ!
ヤバい! 段々焦って来た!
「ムラーーーン!」
大声を出してみるも近くの人がビックリしただけだった。
どこいったんだムラン!
付近を探してみるも見当たらない。ひょっとして荷馬車の露店のある方向か?
急ぎ足で人混みの中へ入って行く。
くそ! なんであのタコは消えたんだ! 頭に乗せておけば良かった。
タコ焼き、タコわさ、刺身、酢の物、タコ天……ダメだ料理になる事しか思いつかない!
ムランが食べられる!
あちこち見て回るがタコの影形も見えない。くそ!
と、誰かに腕をつかまれる。
ビックリして顔を向けると、そこにはシンシアがいた。
「ちょっと、何してるの?」
「シンシアか! ムランを見なかったか?」
シンシアは目を丸くすると手を放して近づく。
「あ、あたしもメイディを探してたんだけど……」
「お互いはぐれたみたいだな」
二人、人混みの中たたずむ。ひょっとして俺らが迷子?




