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人違いは勘弁な

 

「やめて!! あっッ!」

 叫びと共に女性が倒れたのが見えた。

 あれ? あの後ろ姿は……知ってるぞ!

「シンシア!? どうしたんだ!」

 驚いて駆け寄ると暗がりでよく見えないが体格のいい男がふらりと近づいて来る。

「おい! お前! その女にふれるな!」

「いや、待て。何があったんだ?」

 いきなり脅してくるが、いつもシンシアを相手しているので耐性がついたのかなんとも思わない。

「うるせー! その女は俺のなんだよ! 失せなガキが!!」

「アホか! シンシアと付き合うって、ある意味凄いぞ!」

「誰だ、それ?」

 威嚇しながら肩眉を上げる男。あれ? ひょっとして……。

 倒れた女性を見ると、ちょうど体を起こしているところだった。

 ついでこちらを見る。あ、全然知らない顔だわ。後ろ姿が似てたから間違えた。ムランが笑っているのか頭を叩いている。

「…すまん。知り合いかと思って勘違いした。それじゃあ」

 そっとその場を離れようとすると女性が声を上げる。

「ま、待って! この人、しつこいの!」

「いや、知り合いだろ?」

「知らないわよ! 助けて!」

 必死の女性。目を見て本当の事と悟る。どうしたものかと思っていると男が近づいて来た。

「いい加減、お前は何処かへ行け!」

 体格のいい男に胸ぐらつかまれ殴られる!

「ぇうええ!」叫びとともに吹っ飛ばされ、地面に倒れる。痛てぇええ!

「フン!」

 男はいちべつくれると女性の方へ向き直る。おい! これぐらいで俺がビビルと思ってるのか?

 素早く立ち上がって前を歩く男にタックルをかます。

「うぉおおおおおおおお!」

 相手はビックリしながら倒れるとその上に乗り顔面を殴る!

「三倍返しだ! くそったれ!」

「卑怯だぞ!」

 下から男が叫ぶが知るか! 構わず殴る! が、両腕でガードしている。ああ、やりずらい!

 すると相手の膝が背中に刺さる。痛てえ! バランスを崩して相手の体から離れる。

 お互い立ち上がり対峙する。もう、絶対にゆるさねぇ。相手も怒っているのが見て取れる。

「お前、俺の邪魔をするな!」

「はぁ? 邪魔してないだろ、先に手をだしたのはあんただ!!」

 答えながら突っ込むと相手はそれを待って拳を合わせてくる。それを避けつつタックルをかまし殴り始める。

「うらあああああああぁぁ!」

 叫びながら殴る! 相手も防御を諦め殴り始めた。ガマン比べだ! 負けねぇぞ!

 しばらくやり合った後、男がグッタリしたところで俺も地面に大の字になる。

 はぁー、はぁー、はぁー。しんどいし、いろんな所が痛すぎる。

 なんとか体を起こして周りを見ると、あの女性の姿は無かった。何やってんだろ? 俺。

「やっと終わったのかよ! のろま! 顔面腫れて真っ赤だぞ!」

 いつの間にか避難していたムランが戻ってくる。加勢とかしないのな、お前。現金なヤツ。あと、一言多い。

「はぁー。俺も余計な事したな。全ては後ろ姿が似ているシンシアが悪いんだ」

「プッ。アハハハ! 人のせいにしているよ」

 ムランが笑いながらよじ登ってくるが疲れて反論する気も無い。

 男を放って置いて歩き始める。顔がジンジンする。


 全身が痛いのでポーションをもらいにメイディの家に行くが不在だった。今日の後半はついてない。トホホ。

 しかたないので、当初の予定通り酒場へ行く。

「あら? ずいぶん顔が変わったわね。別人みたい。どうしたら木工所でこんなになるの?」

 アンジェロに嫌みを言われるが、愛想笑いしてカウンターに座る。

「帰りがけに後ろ姿がシンシアみたいな女に助けを求められて、変な男と喧嘩したらこうなった」

「あたしが何だって!」

 アンジェロに説明したはずなのにカウンターの奥にいたシンシアが顔を出す。いたのか……。

「メイディはいるのか?」

「……何? 顔が変!」

 シンシアに続いてメイディも顔を出す。こっちにいたのか。でも、いて良かった。

「師匠。後でポーションが欲しいけど大丈夫?」

「……わかった」

 メイディの顔が引っ込む。シンシアの険しい顔はそのまま残っている。怖いよ。

「もう、他のお客さんの迷惑になるから、そっちのテーブルに移動して。いい?」

「わかった。あ、お酒をお願い」

 アンジェロに言われ渋々テーブルに移るとシンシアとメイディがコップを持って移動してきた。来なくていいのに。

「あたしが何だって? 説明しなさい!」

 席についたシンシアが仏頂面で迫ってくる。ああ、めんどくせー。

 仕方ないので一連の事を話す。

 メイディは吹き出して笑い、シンシアは呆れていた。

「バカだと思ってたけど、ホント、バカ」

 顔を背けながら文句を言うシンシア。何故、向こうを見るんだ。意味がわからん。

「アハハハ! あの女を見たコイツの顔ったら! しかも最後は誰かのせいにしてるし!」

 何故かムランが追い打ちをかける。余計な事言うな、このタコ!

「おい、ムラン! お願いだからそれ以上は言わないでください」

「ちょっと! 誰のせいにしたの?」

 ヤバい! 察したシンシアが凄んでくる。くそ! こうなったら!

「な、なあシンシア。相談したいことがあるんだけど」

「話題を変えるな! アンポンタン!」

 無理だった。余計怒ってる気がする。はぁ、どうしてシンシアは大人しくできないんだろ?

 それからは謝り倒してなんとか矛を収めてもらうことに成功した。ふーやれやれ。


 落ち着いた頃、メイディがフードを取り顔を向ける。

「……明日、集合して」

「わかったけど、理由を言ってよ師匠?」

 聞くと頬を染めて横を向くメイディ。まだ、そんな恥ずかしいの? 相変わらずだなー。

「ギルドの依頼を受けたのよ。南の荒野の方でストーンオーガを退治するの」

 酒を飲みながらシンシアがフォローする。なるほどね。そうだ!

「シンシア!」

「何よ」

 いぶかしげな目を向け口元はへの字のシンシア。

「明日、一緒に行かないか?」

「は!? なななななんで、あたしが行くの!?」

 めちゃくちゃ挙動不審なシンシア。そんな慌てること言ってないぞ。

「いや、メイディの通訳が欲しいから」

「はぁ? アホ! 理解しろ!」

 シンシアが怒り始めた。メイディは冷めた目で俺を見ている。杖でぶたれなかっただけマシか?

「……バカ!」

「お前って底なしのアンポンタンだな! 知ってたけど! オレなんか楽勝だね!」

 おい! なんでムランも加わってくるんだよ!

「ちょっと待てムラン! じゃあ、お前が通訳してくれよ?」

「ん? ん、ん~ん。うーん眠くなってきた」

「ふざけんなタコ! 刺身にしてやる!」

 肩にいたムランをつかんでシェイクしようとするとシンシアが俺の腕をつかんだ。

「止めなさい! いつも、いつも、いつも~!」

 凶悪な面構えのシンシアが下からガンつけてくる。怖い! しかもつかんでいる手が痛い!

「ご、ゴメン! 悪かった! 仲良くするから!」

「あんたはいつも口ばっかり!」

 めちゃくちゃ怒ってるよ! どうすればいいんだ?

「そうだ! 口ばっかりなダメ男!」

 ムランがここぞとばかり追い打ちをかける。くそ! 半分はお前のせいだぞ!

「もーー! ムランちゃんも! あんたら二人に言ってんの!!」

「ヒィイイ! ごめんよ! お、大人しくするよ!」

 いきなり弱気なムラン。遅いんだよタコが!

 その後、シンシアにこってり絞られた。ぐったり。

 だが、それよりも恐ろしかったのは、傷ついたメイディが酒場の隅っこで体育座りして黄昏ていたことだ。

 俺たちはなんとかメイディを立ち直らせ家路についた。もちろん、すっかり酒は抜けてる。

 仕事よりこっちの方が大変だった。はぁー。



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