本格的な戦闘を経験する
冒険者たちに囲まれて森の中を移動する。
こんな経験は初めてなので少し緊張する。ムランはもうガチガチだ。
からかうと怒って反撃してきた。といっても、ワーワー騒いで頭を叩くだけなんでいつもの事だな。
「ところでヨシオはその武器を使うのか?」
隣を歩いているマルイドが俺の背につけたハルバートを見て確認してきた。
「そのつもりだ。っていうか、これしか買えなかった」
「ハア? まあ、いいけどよ。使いこなしは難しいかもれんな。今度稽古をつけてやるよ」
ニヤリとするマルイド。マジかよ! 嬉しい!
「ありがとう! ホント言うと素振りしかしてないんで困ってたとこなんだ」
マルイドのニヤリが苦笑いに変わった。汗かいてるぞ。嫌なのか?
「そ、そうか。まあ、きっと大丈夫だろう、な?」
「ムランが魔法使えば楽勝だろ。そして、俺がフォローする」
「アホか! お前が頑張れよ! このオタンコナス!」
ムランが頭を叩いて抗議している。あー、やかましい。
「ハハ。お前らっていつもそうだな」
何かあきらめたマルイドが笑い肩を叩く。そうなのか?
やがてゴブリンの巣に近づいたようで、リーダーから準備をするよう通達があった。
どうも先行してたグループがゴブリンたちを追い立ててるようで、俺たちが戦うのに有利な場所へ誘導しているよう。
そんな訳で森のひらけた場所の前で待ち伏せして壊滅させる気でいるらしい。
「ビビルなよ、ヘナチョコ!」
なんでかムランが挑発している。お前の方がビビりだろ!
「そっちこそ逃げるなよ?」
「ば、バカ! に、逃げるわけないじゃん!」
おい! すでにガチガチじゃねぇか!
「いつまでじゃれてるな。そろそろだぞー」
マルイドが苦笑いで忠告してくる。ムランが抗議で俺の頭を叩く。直接言えよ! この恥ずかしがりが!
そうこうしつつ待っていると遠くから何やら雄たけびが聞こえ始める。
あー、聞いたことあるわ、この声。周りの冒険者が剣を抜いたり、矢をつがえ始める音がしてきた。
ハルバードを構え待つ。頭の上でムランが息を飲む音を出した。
マルイドが両手に短剣を構えながら横目で俺を確認しているのでウインクして返す。ウェーって顔するな!
「ギャエエエエエェェ!!」
あの叫び声が近くに聞こえたかと思ったら、森のひらけた場所にワラワラと緑色の怪物が出現してきた。
すかさず無数の矢が飛んでいき先頭を走っているゴブリンたちを貫いていく。
初手で倒れたゴブリンを乗り越え後続の怪物が次々と現れる。
二射目の矢が飛んでいくがあまり効果がないような感じだ。これからが本番か?
「そろそろだぞ。覚悟はいいか?」
マルイドが声をかける。いいわけないじゃん! くそ!
「ああ、たぶん」
気負って答えるが、少し震えている気がする。
どんどん増えてくるゴブリンが開けた場所の中ほどに来た時にリーダーの叫ぶ声が聞こえた。
「おら! 突撃だ! 一匹も逃すな!」
「うぉおおおおおお!!」
あちこちから叫び声が上がり冒険者が飛び出していく!
「いくぞ!」
マルイドも飛び出す。遅れまいと武器を手に駆け出す。
「ムラン! 魔法だ! 俺に当てるなよ!」
「言われなくても! ヘタするなよヨシオ!」
ムランが声を上げると頭上から火の玉がゴブリンへ飛んでいく!
当たったゴブリンが爆発していく。あれ? 前よりも威力が上がってないか?
「よし! 俺も!」
片手を上げ鉄のヤリを発射すると体の大きいゴブリンを貫いた。
と、背中が叩かれる!
「痛てえ!」
振り返ると怒りのメイディが足を上げていた。えっ、蹴っ飛ばしたの?
「……魔法ナシ! 武器で戦う!」
「え~師匠ー?」
ビックリして訴えると睨んできた。ああ、ラクしたかったのに。
「ほら! お前は武器を使えよ!」
ムランが頭をバシバシ叩いてくる。わかったよ、タコ!
ハルバートを両手に握って周りを見ると、すでに乱戦になっている。
メイディは俺の後ろに控えていて魔法で援護してくれているようだ。そういえば俺たちのフォーメーションとか相談してなかった。
こちらに向かってくるゴブリンにハルバートを横なぎに振るうと、体の半分が切り裂かれその場で絶命する。
あれ? 間合いが長いから有利じゃね? 相手のリーチより長いから楽に届く。これならイケそうだ。
近くにいるゴブリンを狙ってハルバートを振りまくる。
突き上げて体に穴を空け、振り下ろして体の部位を切断する。その間、ムランとメイディは魔法で蹴散らしている。
五、六匹切り倒した後、胃がムカムカして吐き気に襲われる。気持ちワルーー。
「ムラン。ちょっとタンマ。魔法を止めてくれ」
「どうしたんだよ?」
ムランの返事を聞かず木の影で吐いた。ウェエエエエエー。頭、真っ白。
「おい! 大丈夫か?」
「うぅ。自分が切った相手がグロい……ウェエエエ」
何とか答えるがまた吐いた。殺したゴブリンの内臓がリアルで気持ちワル!
「ヨシオ! しっかりしろよ! お前が頑張んないとオレが死ぬだろ!」
意味不明の励ましをするムラン。何それ? お前なめてんの?
「……ケガ?」
メイディが近くに寄ってくる。あーくそ! こんな事してる場合じゃない!
「なんでもない! 気持ち悪くなっただけだ!」
口をぬぐって振り返ると心配そうなメイディがいる。きっと青ざめた顔だが無理やり笑って走り出す。
「師匠に泥は塗れないからな! ムラン、続けるぞ!」
「は~。遅いよヨシオ」
呆れたムランが頭を叩く。悪かったな!
しかし、魔法を使わないとなると分が悪い。剣技なんて無いし。
イメージだ! そうだゲームとかであるじゃないか! 力を倍にしたり、体を硬くして素早くさせたり。
全部盛ってやる!
「気合いだーーーー!」
身体中に力を巡らすイメージ!
向かった先にいるゴブリンに武器を振るう。と、受ける武器ごと真っ二つになって宙を回り地面に落ちた。
ヤバい! 軽く振っただけなのに。
「その調子だーー! アハハハ!」
何故か喜んでいるムランが魔法を連発している。おかげでゴブリンが寄ってこない。
「少しは抑えろよ! またへばるぞ!」
「大丈夫、大丈夫!」
まったく人の忠告を聞かないムラン。ま、いいか。
数はゴブリンの方が多いが冒険者の頑張りでこちらが押している。
「気をつけろ! やつらの中にメイジゴブリンがいるぞ!」
誰かが叫ぶと同時に、どこかで爆発が起きる!
目を向けるとローブを着たゴブリンが手を上げ火の玉を発射している所だった。
その前には体が倍以上ある大きなゴブリンが盾を持ち、矢を防いでいる。
なんか連携よすぎだろ。大方あれがボスか?
「……援護する。行け!」
真後ろにいた師匠が無慈悲に言ってくる。無茶苦茶だよ。あんたの方がベテランだろ?
ちらりとメイディを見ると顎をしゃくって指し示す。わかったよ!
邪魔なゴブリンを蹴散らしながらデカいゴブリンへ向かう。
「お前らあんまり強くてビックリしたよ。どんな訓練したんだ?」
苦も無く横に並んだマルイドが聞いてくる。
「いや、魔法を使った。てか、俺は魔法使いだから!」
「は!?」
急に足を止め、驚いているマルイドを置いて先を急ぐ。
目の前にいるデカいゴブリンが気がついたようで、盾を前に向かってきた。
すると横から火の玉が飛んでくる!
「防いでやる!!」
右腕に括りつけている盾を火の玉へ突き出すと魔法の膜が現れ爆発を防ぐ!
「ムラン! あの魔法使いをやれ!」
「うっさい! 言われなくてもやるよ!」
憎まれ口を言いつつ火の玉を飛ばす。当たってくれよ!
もうゴブリンの盾が目の前だ!
前はクマに跳ね飛ばされたが、今日は逆にしてやる!
思いっきり盾にタックルをかます!
「ギェエエエエーーー!!」
ひしゃげた盾を身体にめり込ませデカいゴブリンが悲鳴を上げて吹っ飛んでいく!
おおー! やればできるもんだ。




