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念願のパーティーで冒険する

 

 酒場のマスター、アンジェロの話しに私は驚愕した。

 聞いたことをまとめると、ヨシオはどうやら移動魔法を使ってマスターを呼び寄せたらしい。

「きっとメイディちゃんの教え方が上手いのね」

 と、アンジェロが褒めてくれたが違う。私は最初の魔法の具現化しか手ほどきしていない。

 むしろムランの方を教えているのだ。

 移動魔法なんて出来るのはプラチナ級の魔法使いだけだ。それを何の準備もせず町中で使うなんて……。

 待て、ヨシオはいつも行き当たりばったりだ。だから前から計画して行ったわけじゃない。

 他の事をしようとして偶然に発動したとしたら?

 だとしても、そのポテンシャルは既に私を抜いている。知ってたけど。

 だが絶対にその事を本人には言わない。なぜなら私が師匠だから。



「なんでこういう時は遅いの? あの男」

 ギルドのカウンターでシンシアが愚痴ている。

 とりわけ昨日は大変だった。ヨシオがギルドに来るとシンシアに土下座をしはじめ、周りが引いた。

 真っ赤になったシンシアは何故かヨシオに当たり始めると反撃にあい、ムランを使って嫌がるシンシアの顔にくっつける。

 抵抗するムランはヨシオを叩き始め、シンシアと共闘し始めた。

 当然、そんな騒ぎを起こしているとギルドから追い出される。

 私は呆れてあの二人と一匹をただ見ているだけだった。

 その後、落ち着いたシンシアは受付へ復帰し、ヨシオたちは修行を続けた。

 だが、私はひっそりとある依頼に目をつけていた。


『ゴブリンの巣を壊滅する』──

 バンガラの町近くにある森の浅い所に、最近ゴブリンの小さな巣が発見された。

 奴らはほっておくとネズミのように増えていく。だから見かけたら早めに潰さなければならない。

 たぶんあいつらはヨシオたちが最初に出会ったゴブリンのグループだろう。

 修行をつけてだいぶ経ったから大丈夫なはずだ。

 これで憧れのパーティーになれる!

 依頼を受けギルドのカウンター前に集合なのに、いまだヨシオたちは姿を見せていない。


 ふてくされているシンシアと二人で待っているとやがてヨシオたちが現れた。ん? 一人増えてる?

「やあ二人とも。早いね!」

「バカなの? あたしは受付してるの!」

 ヨシオの軽口にシンシアが怒っている。いつものことだ。

「ほぉ、こりゃホントだな。よお、メイディ。今日はよろしくな!」

 あのマルイドが挨拶してきた。一体、どういう風の吹き回し? ヨシオを見る。

「いや、さっき話しをしたら一緒に行きたいってさ。いいだろ師匠?」

 どこでこの男と知り合ったんだ? だがパーティーが増えるのは賛成だ。

「……いいよ」

「ハハハ。ありがとよ! 面識はあったが初めて組むな、ヨロシク!」

 マルイドがキザったらしく二本指を頭につける。

 その細い体から想像できないほど俊敏な動きで斥候などをこなしているとの噂を聞いている。

 まさに今回の依頼にはうってつけだ。ヨシオや私にはできない事だ。

 手続きを済ませ、二人を連れ立ち町の門に向かう。

 さすがに今回の依頼は私達だけでは無理なので、他のパーティーと合同で行う。

 門にはすでに複数の影がある。どうやら私達が最後のようだ。


「来たな。これで全員揃ったな?」

 シルバーのプレートが胸で光るのは、今回のリーダーに指名されたハイライン。優男風だがベテランの冒険者だ。

 少なくともこの町では名の知れている男。ヨシオたちは知らないだろうが。

 手を上げると了解したようにうなずく。

 他を見渡すとアイアンの中堅冒険者達一五人がひしめていて、皆の視線はヨシオに集まっている。

 本人は知らずにムランとマルイドを交え話しているが、ギルドの受付でいつも騒ぎを起こすヨシオは目立つ。

 今回の成果でヨシオ達の評価が決まる。そして、私が上手く導かないと自身の評価にもつながる。少し焦ってきた。

 初参加の私を交え今回の作戦を簡単に決める事になった。軍隊ではないので各々の力量が物を言う。

 今のところ、私の評価で前衛のグループに入れられた。まあ、攻撃魔法が得意の私なら当然だ。

 少なくともヨシオはフォレストベアーを倒したので実力はあるだろう。

 だが、ムランと一緒にいる時にどう行動するかまったくわからない。

 この一か月以上行動を共にしているが、あいつらはいつも仲たがいしたり無茶苦茶ばっかり。

 その癖、私に気を使ったりと何故か憎めない。彼らの事情を知っているせいもあるが。


 やがてゴブリンの巣まで移動することになった。

 斥候をするグループは既に出ているようだ。

 今は緊張感もないヨシオ達と共に森の中を進んでいる。ああ、これがパーティーなんだ! 胸がワクワクする!

 ふとマルイドが隣に来る。私に用か?

「よう! ありがとな。お互い“元”一匹狼だけど、遠慮なく言ってくれよ」

「……わかった。その時は相談する」

 何故か意外そうな顔で私を見るマルイド。何かついているのか? 今はフードを被っているので顔は見えないはずだ。

「ハハッ、これは! ずいぶんしゃべるようになったな。やっぱり入ってよかったぜ!」

 マルイドは楽しそうに私の肩を叩いて先を歩き出す。

 そうか? 私は話せるようになったのか? 少し嬉しい。口下手が改善されているのか…。

 ちらりとヨシオ達を見ると何やら言い争っていて、回りを歩く冒険者が引いているのがわかる。

 まあ、そんな彼等には、わずかに、すごく少なめに、絞りかすの分ぐらいは感謝したい。

 少なくとも飲ませたポーションの分は頑張って欲しい。あれはお前に貸した金よりも高いから。



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