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酒場で酔いが吹っ飛ぶ

 

 とりあえずクマを退治し、皮など荷物が多くなったため、一旦町へ戻ることに。

 あんだけ怒っていたのに軽い足取りのメイディは上機嫌。意味がわからない。

 ギルドに入りシンシアの前に獲物を置くと目が点になっている。

「ん!? 薬草がなんでフォレストベアーになるわけ?」

「……私がやった」

 おい! さりげなく嘘ついてんじゃねーよ!

 びっくりしてメイディを見るとめちゃくちゃ凄んで威圧している。えぇええ? し、師匠?

 頭のムランがポコポコ叩いている。あーうざい!

「そ、そうなんだ! やったね、メイディ! 初めてだね!」

 やっと理解したシンシアがメイディの手を取って喜んでいる。まんざらでもなさそうなメイディ。って、違うだろ!

「師匠! あん…ぶぁらああぁぁ」

 冷たい目をしたメイディに杖で吹っ飛ばされる! ひでえ。

 ギルドの床に転がている俺を置いて勝手に話しが進んでいる。

「アハハハ! 面白~~い! いい気味だ!」

 タコがポコポコ頭を叩きながら嬉しそうにしている。そうかい、お前はいつもそう。

 おもむろにムランをつかむとシェイクする。

「バ、バカーー! やめろ~~~!」

「ワハハハ! どうだ! 八つ当たりだ!」

 叫ぶムランに高笑いの俺。

 ボカッ!!

「いてぇえ!」

 後頭部を殴打された! 頭を押さえて振り返ると怒りのメイディが杖を振りかぶっているところだった。

「ま、待て! すまなかった!」

「……うるさい!」

 ひと睨みしてシンシアに向き直るメイディ。シンシアは口に手を当てて笑いをこらえている。そりゃないよ……。

 いつの間にか怒りのムランが頭に登ってきてポポポポと連打している。ああ、視界がぶれる。

 ヨロヨロと受付カウンターに向かとシンシアが呆れていた。

「ホント、あんたって普通にできないのね。ここでは大人しくしてなさい」

「いや、いろいろ言いたい事があるけど静かにしてる」

 メイディの視線を感じつつ引き下がった。俺の対応が大人じゃん!


 ギルドでは一波乱あったが、今は安宿の食堂でメイディと飯を食べているところだ。

「……ヨシオの分」

 メイディが懐から袋を差し出す。硬貨がこすれる音から、それなりに入っているようだ。ブロンズでない事を祈る。

「お! ありがとう! てっきり無いかと思ったから嬉しいよ」

 ふいと顔を逸らすメイディ。照れてんな。でも、俺は忘れないぞ。クマを倒したのは俺だ!

 ちなみにクマとの戦いで負った傷は例のポーションを飲んで治している。嫌だがあの味にもなれてきた。

 黒いパンをスープに浸しながら柔らかくして口に運ぶ。その合間にこれからのことを話し合う。

 メイディはもう少し修行してから本格的にギルド依頼を受けていきたいとのこと。

 俺としては一刻も早く金を稼いで生活を安定させたい。できればもう少しグレードの高い宿、一部屋ベッド一床がいい。

 とりあえず今日出会ったクマには、俺の持っているマトックでは歯が立たないので武器と防具を新調しようということになった。

 散財してばっかりだがしょうがない。ムランは一言も発せず飯を食い続けていた。意見はないのか?


 そんなわけで、メイディと雑貨屋向かいの武器屋にお邪魔する。

「こんにちはー」

「ああ、知ってるぞ。ブロガンの所に入り浸ってるやつか。久しぶりだなメイディ嬢ちゃん」

 扉を開けると直ぐ目の前に背の小さいひげもじゃの厳ついおっさんが頬杖ついてこちらを見る。

 メイディは頭を下げ挨拶を返す。

 店内は六畳ほどでカウンターの他には壁に盾や鎧が飾られており、店主の後ろには様々な剣類が立てかけられていた。

 生々しい武器の感じに少し引く。違う世界だということを重く知らしめているようで再認識する。

「ヨシオです。いきなりで悪いけど武器を探しているんだけど。安いやつ」

「ヤバロだ。どんな武器が希望だ?」

 カウンター越しにヤバロが俺の体を確認しているようだ。

「素人が扱える丈夫なやつとか?」

「ふむ。その腰にぶら下げてる物に近いのがいいか。ちょっとまってろ」

 ヤバロがカウンターから奥に通じる扉へ入っていく。

 ふとメイディを見ると立てかけてある杖を物色している。買うのか?

「おう! 持ってきたぞ」

 戻って来たヤバロは三本ほどの長さが違うオノのような武器をカウンターに置く。

「これはハルバートといって、お前の腰にぶら下げてるやつのでかいやつだな。こいつなら丈夫だ」

 なるほど、確かに似ている。ヘッドの部分は金属製で先端が尖っていて、その横にはオノがついている。その反対側には引っかけるような形状の物がついていた。絵の部分は木でつながっているタイプと全てが金属でできたタイプがあった。

 長さも二メートル、一・五メートル、一・二メートルぐらいのが並んでいる。ちなみに一・二メートルの物が全て金属製だ。

 それぞれ長さに応じてオノのサイズも違っている。

 試しに全て金属製のハルバートを持ってみると辛うじて持てる重さだった。ダメだ、使い物にならん。

 残りの二つを持ったり軽く振ったりして短めの一・五メートルの物に決めた。

「これに決めた!」

「そうか。ならベルトもどうだ? 背負うだろ?」

 ついでヤバロがカウンターにベルトを出してくる。まあ、必要だよね。

「あ、お願いします」

「よし! じゃあシルバー三枚」

「ええ!? 高けぇ!」

 値段にビックリすると後ろを小突かれる。振り向くとメイディが厳しい顔でうなずいている。買えってことか。

 そんな様子を見ていたヤバロは、片眉を上げて確認してくる。

「どうする? ま、確かにちと高いが」

「おまけに小さい盾をつけて欲しい。アイアン三枚追加で」

 少し考えていたようだがうなずき、丸いお盆ぐらいの大きさの盾を出してきた。

「よし、良いぞ! ま、初めてだからな、サービスしてやるよ」

「ありがとう! 助かった。金銭的に」

「ワハハ! 貧乏だな! 儲かったら、また来てくれ!」

 ヤバロは愉快そうにベルトと盾を差し出してくるの受け取り、金を払い礼を言って外に出た。

 はー。金が入ったその日に出て行くのはキツイな。

「……明日」

 通りに出るとメイディが手を上げて別れを切り出してきた。師匠、突然だな。

「わかった。じゃあ明日!」

 手を振って別れる。何だかんだですっかり夕方だな。


 繁華街に向かって歩みを進めているとムランが頭をポコポコ叩いてくる。

「そっちは宿じゃないよ? どこいくんだ?」

「いや、久しぶりに酒を飲みたい。実は少し余裕ができた」

「ホント、お前って欲望に忠実なのな」

 ムランが肩まで降りてきて半目で見てくる。お前もだろ!

「違う! これは自分にご褒美なんだ!」

「ふぇ~~。早いご褒美だねぇ~」

 嫌みを言いつつ、信じられないって目で訴えるタコ。いいんだよ、俺は飲みたいの!

 そんな会話をしつつ通りで目についた酒場らしき店へと入る。

 酒場はテーブル席がそこそこありいくつもの人影の輪ができている。カウンターにも人が座って飲んでいるようだ。

 空いているテーブルを見つけ席に着く。

 メニューが置いてあるので手に取ってみるが全然読めない。今更ながら気がついた。

 手を上げて店員を呼び安い酒とちょっとしたおつまみを頼む。なんとか通じたのでホッとする。

 やがて運ばれてくると金を渡す。店員のおねえちゃんはそのまま他のテーブルに呼ばれていった。

「よっしゃああ! 久しぶり~!」

 コップに注がれているビールっぽい酒を一口飲む。

「ぬりぃいい! あと、ビールじゃねぇ……」

「ビールって何だ? マズいのか?」

 俺の苦々しい顔を見てテーブルに置いたムランが不思議そうにしている。

「ま、飲んで見ろ」

「ええ!? んぐ、んぐ」

 無理やりムランに少し飲ます。

「うぇ~~。マジぃいい! 変なもん飲ますな、アンポンタン!」

 なんかゆでダコみたいに真っ赤なムランが文句を言い始める。

「ワハハ! 真っ赤だ!」

「うぅう~、体がフラフラする~」

 ヨロヨロしてムランがテーブルをさまよう。面白いので酒のつまみに観察しながらチビチビ飲む。

 そろそろ違う酒かお替りをしようと思ったときに、不意に人影がテーブルに落ちる。

「あら、初めまして。ひょっとしてあなたが有名なヨシオかしら?」

 その声に顔を向けると、胸の自己主張が激しいポニーテールをした美しい年上っぽい女性が立っていた。

「有名? それは知らなかったが、良雄は俺だけど」

「やっぱり! フフ、うちに来てくれて嬉しいわ」

 なんだこの女は。俺は知らないぞ。

「おい! なんでそんな大っきいオッパイしてるんだ! 近づくな!」

 酔ったムランが威嚇して叫んできた。お前! 確かにそう思うけどハッキリ言うな!

「やめろ! そういうことは心に留めろよ!」

「ハァ!? このスケベ野郎が! さっきからオッパイに釘付けだろ!」

 今度は俺に突っかかってくる。いや、合ってるけどハッキリ言うな!

「やめろー! しょうがないだろ! そこにあるんだから!」

「アハハ! 認めたよこのバカ地球じ…ぷっぷぷ」

 慌ててムランの口をふさぐ。こいつ、もう絶対に酒は飲ません!

「フフフ、面白いわね。シンシアちゃんが言ってた通りね。またね!」

 ニコリと微笑んで俺たちのテーブルを後にする謎の女性。うむ、大人の色香だな。いや、シンシア?

 あ、名前聞くの忘れた。


 酔いつぶれて寝ているムランを眺めつつお替りを飲んでいる。ま、確かにマズいがポーションほどじゃない。

 そろそろ帰ろうかと考えていると再び影が生えてきた。

 ダン!

 テーブルにコップが音を立てて置かれる。なな、何?

 驚いて振り返ると、そこにはシンシアがいた!

「え!? し、シンシア?」

「聞いたわよマスターから。あんたこの店にさっきからいたみたいね?」

 鋭い視線で聞いてくる。なんで楽しく飲んでいたのにこの女に会うの?

 シンシアの険しい表情を見て、一気に酔いが冷めた。



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