ポーション凄い
きつい筋肉痛を押して朝食を済ませた後、ギルドへ向かう。
学習したのかムランはちゃっかり朝一番に起きると一緒に食べた。
硬い体でギルドに入るとシンシアのカウンターへ行く。
俺に気づくとうつむいて顔を合わせない。何故だ?
「シンシア?」
「何?」
もの凄い怒った顔を向けてくる。ちょっと引くぞ!
「い、いや、あのさ、メイディは来た?」
「今日は来ていないみたいね。何か用なの?」
少し和らいで普通の怒り顔になった。ホッ。良くはないけど、さっきよりはマシ。
「昨日、魔法の修行したんで今日も続きをしたいからさ」
「は? 覚えたって言うの? 魔法を?」
「そうだけど?」
めちゃビックリしている。口が開いてるぞシンシア。
「だけど、俺よりムランの方が上手いかな。悔しいけど」
「お! 認めたのか! オレの方が上なんだよ!」
ムランが頭の上で自慢している。くぅー。ムカつく!
「使い魔はともかく、普通そんな一日では無理でしょ。ウソね!」
「嘘じゃないって!」
薄目のシンシアは疑っているようだ。そんなん?
「ま、いいか。それじゃ自宅へいくから」
「え? メイディの家を知ってるの!?」
シンシアが驚いて席を立つと俺の服をつかむ。
「知ってるっていうか、昨日行ったよ」
「ええー! 何もしなかったでしょうね?」
めちゃ睨まれる。俺ってそんなキャラなのか?
「プッ! アハハハ! このアホはそんな事考えてないよ! ヒ~ヒ~!」
たまらずムランが大爆笑している。なんだろ、バカにされた感がある。
おもむろに頭のムランをつかむとシェイクする。
「あぁああああ! やめろーーー! クソがぁあああ!」
「やめなさーーーい!!」
シンシアに怒鳴られギルドを追い出された。
怒っているムランは頭をポコポコ連打している。全然気にしない。
「なんでシンシアも追い出されるんだよ」
「知らないよ!」
何故かシンシアもいるし。ムスッとして隣を歩いている。
「あ、ちょっと案内してもらっていいかな?」
「何を?」
睨んでくる……やりにくい。かといって、メイディみたいに言葉足らずもつらい。
「市場に行きたいんだ。靴を買いたくて」
「ふーん。いいけど」
プイっと顔をそらしてシンシアが先を歩く。ついていけってことかな。しかし、いまだ頭を叩いているムラン。いい加減うざい。
案内してもらい初めて市場についた。
露店や普通の店舗などが並んで人もあふれている。とても活気のある場所だな。
「靴ならこっちよ」
シンシアが連れてきたのは露店の靴屋のようだ。荷車にさまざまな種類の靴が所狭しと並んでいる。
ひげもじゃの店主が並んだ商品の横に座っている。俺達が近くに来ると気がついたよう。
「いらっしゃい。何か探しているのか」
「底の厚い、荒れた道でも大丈夫なのはある?」
「ふむ。ちょっと待ってろ」
店主が荷車に上がって探して三種類の靴を持ってきた。
「たぶん、これのどれかだな」
渡されて確認すると希望のがあったので足に合うサイズを購入する。はいていた靴を店主に売り、差額がアイアン一枚だった。
買い終わると何故かシンシアが別の店へ連れていく。
今度は店舗のようで金属製の鎧などが飾ってある。
「あんた、その軽装だとケガするよ。皮鎧でも買いなさい」
シンシアが迫ってくる。金がないから嫌とは言えない。
しぶしぶ安い皮鎧を買い装着する。これもアイアン一枚で何とか納める。ヤバい、残りが少ない。
やっとメイディの家に着くとドアをノックする。
……動きなし。
なんだ? シンシアを見ると両肩を上げてわからないと主張している。
「師匠! いるんだろ? シンシアもいるぞ」
声をかけ、しばらくするとドアが少し開く。
「……帰って」
ドアから顔半分だけ覗かせて一言。何があったんだ、師匠!
「大丈夫? 悩んでるなら、あたしでよければ相談にのるよ」
心配そうなシンシアが説得している。というか、俺と態度が違い過ぎるだろ!
「……シンシア」
嫌そうにドアを開けると俺達を中に入れた。
部屋に入るとすでにメイディはベッドで毛布をかぶっている。落ち込んでるの?
「師匠。どうしたんだ? 今日も魔法を教えてもらおうと思っていたのに」
「……教えることはない」
丸く盛り上がった毛布が答える。
「ねえ、本当にヨシオが魔法を覚えたの?」
いまだ信じていないシンシアが聞くと毛布がうなずく。今は毛布と会話してるのか。早く戻ってこい!
「師匠! 俺達はまだまだ未熟だ。教えがないと上達しないし使い方も誤るかもしれない。だからお願いだ!」
「……未熟?」
ピクリと毛布が反応する。おお、イケるか? 営業の経験が活かせる?
「そう、未熟だ。師匠の教えがないと俺達は自滅しそうだ。頼む!」
すると毛布が開き顔をのぞかせ見つめる。あと一歩!
「俺達を導けるのは師匠だけだ!」
「アハハ! バカだなぁ。メイディしか魔法使いを知らないだけだろ? 他に行く当てないしね」
頭の上のタコが余計な事を言うと、頭が毛布に引っ込んだ。ああ、このバカ!
「余計な事を言うな! タコが!」
「ホントの事だろ! アンポンタン!」
ポコポコ頭を叩いてきた。くそが!
「あんたたちは止めなさい! ホントどこでもケンカして!」
怒ったシンシアにとがめられる。したくてするわけじゃないんだけど。
「な、なあ、確かに他の魔法使いは知らないけど、俺達にはメイディしかいないんだ。約束したろ? 師匠!」
するとまたメイディが毛布から顔だけ出してきた。
「……約束」
「そう! 知らない事が多すぎるんだ。事情がわかるのは師匠だけだし。お願いだ!」
「……わかった」
メイディは毛布を抜け出すとハンガーにかけてあるローブを着る。
「ホントに大丈夫なの?」
シンシアが心配そうにメイディに近寄る。表情が普通だぞ! 初めて見た。
「……大丈夫」
メイディはシンシアの肩に手を乗せ微笑むと、棚に向かい陶器でできた小瓶を取り出すと俺に差し出す。
「……飲め」
「なにこれ?」
「……ポーション。傷を治す」
受け取り、蓋を開け中をのぞくと緑色の液体が満たされている。いや、ゲームとかで知ってるけどマズそう。
視線を感じ顔を向けるとメイディと目が合う。早く飲めと瞳が語る。くそー。
決心して瓶を口につけ一気にあおる。
「ぐぅえ~~! マズイィ!!」
飲んだ後も草の苦みとえぐみが口の中に残っているが、なんか体が軽くなる!
「……筋肉痛にも効く」
「おお! 痛くないよ師匠! ありがとう!」
メイディの手を取り振って感謝をするが嫌そうな顔をしている。師匠……。
何も言っていないのに俺が筋肉痛なのがわかるなんてさすが師匠だ。どっかのタコとは違う。
しかしポーション凄い! これは何本も欲しいところだ。




