すっかり事情がバレる
なんとか一周し終えると、メイディはそのまま町へ入っていく。
遅れまいと後をついていくが疲労でキツイ。
すると一軒の店に入っていくので後を追うと、どうやら食堂のようで奥のテーブルにメイディはすでに着席していた。
「……昼飯」
「あのさ、もう少しコミュニケーションとりませんか? 師匠」
何故か驚くメイディ。何か言ったか?
「……師匠!?」
「いや、弟子入りしたから」
フードをとるとマジマジ俺を見る。
「……師匠」
「そう! 師匠だから!」
ひょっとして気に入ったのか? メイディは少しニマニマしている。いや、そっちじゃなくコミュニケーションの方を取って欲しかった。
それから軽く食事をしたが疲れすぎてあまり喉を通らなかった。そのぶん、ムランが食べまくっていた。いったいどこに入るのか? 頭?
食堂を出るとメイディは上機嫌で町にある広場に連れてきた。
学校の校庭ほどの広さで特に遊具はない。草がまばらに生える場所でくつろいでいる者や訓練している者など、思い思いにすごしているようだ。
メイディは周りに人のいない場所へ移動すると歩みを止め振り向く。
「……座る!」
言われた通りに全員が座る。何するの?
「……魔法はまず感じるの」
「ちょっと待った!」
慌てて止めると怪訝な顔で見つめる。わかってないのかよ!
「いや、師匠。はじめる前に一言、欲しいんですけど! 突然すぎる!」
「……はじめる」
「……」
この人、俺の話し聞いてるの? メイディはフードを外しそっと目を閉じる。
「……まず感じるの。目を閉じて」
いろいろ突っ込みたいが言う通りにしよう。と、その前にムランを隣に降ろし目を閉じる。
「……身の回りにある魔力を感じるの」
……。
「……そして魔力を体に取り込むイメージをして」
………。
「……その取り込んだ魔力が身体中をめぐるのを感じて」
…………。
「……次に魔力を身体から放出するイメージをするの」
……む、なんか熱くなってくる気がする。
「……目を開いて」
目を開けると目の前のメイディの体からなんか緑色の光が淡く放出している。これが魔法?
「……すごい!」
メイディは目を見開き驚いて見つめる。俺、じゃなくてムランを。
ムランを見ると頭が光り輝いている。まるで後光のよう。思わず拝みそうになる。
「ハハハハ! どうだ! オレには才能があるんだな! どうしたんだ落ちこぼれ?」
勝ち誇るムラン。あああ! ムカつく! 思わずムランをつかもうとするとメイディが止めてきた。
「……ダメ!」
「これはどういうことなんだ師匠?」
メイディを見ると困惑しているような雰囲気。
「……この使い魔は魔法の才能がある。でもおかしい。なぜなら使い魔は魔力を元々持っているものだから」
「へぇ~。そうなんだ」
ギロリと俺を見るとメイディは思案しだす。何か思い立ったのか? しかし最長のセリフだったな。いつもこうだといいけど。
ムランはドヤ顔で俺を見下している。くそー!
しばらくするとムランやメイディの光は消えてしまう。は! 自分を確認するのを忘れた!
「……来て」
おもむろに立ち上がるとメイディが歩き出す。
慌ててムランをつかまえて後を追う。
しばらくメイディについていくと住宅街へ入って行くようで同じような形をした家が多く見られた。
その中の一角。二階建てアパートのような建物の外階段を上がり四つ並んだ扉のうち、最奥の扉に向かう。
「……入って」
メイディが鍵を取り出し扉を開ける。
「これって、師匠の部屋?」
「……そう」
マジかよ! すっごい久しぶりの女子の部屋。なんかドキドキするな。
玄関で思わず靴を脱ぎそうになるが、なんとかそのままついていく。
メイディの部屋は十二畳ほどの広さがあり、ベッドや机など必要な物以外は置いていないシンプルな部屋のようだ。
棚には様々な道具が置いてあるが整然としており清潔な感じ。
心なしかいい匂いもする。メイディは杖を立てかけローブを脱ぐと簡素なハンガーへかける。
脱いだメイディは袖なしの上着に膝上ほどのスカートを着ていた。おお! なんかエロイ。
「……座って」
丸イスを勧められ、お言葉に甘える。
メイディは窓際のキッチンに向かいお茶の準備をしている。
こういうのを待つ間は少しソワソワしてしまう。なぜかムランが頭を叩いている。
「……飲んで」
淹れたお茶を渡してくるので受け取り、一口すする。紅茶っぽい味だ。
メイディもお茶を持ちイスに座る。
全員で一息つけるとメイディが身を乗り出し見つめてくる。
「……私、見てどう思う?」
「え? えと、まつ毛が長い。そして美人」
少し頬を染め、なぜか睨んでくる。違うのか? ポコポコ叩かれる。ああ、うざいタコが。
「そうだ! 耳がとがっている?」
「……やっぱり」
確信したようにうなずくとお茶を机に置き、厳しい目を向ける。何かしたっけ? まるで覚えがない。
「……どこの世界の人?」
「そういうことか! 別に隠していたわけじゃないけど、俺は地球人、コイツはえーと、ナポリタン星人?」
俺の説明に突然ムランがブチ切れる。
「ふざけんな! イプシロン星人だ! 今度間違えたら舌を引っこ抜くからな!」
「ハハハ! その手で? 引っこ抜く? ワハハハ!」
「くそったれの地球人め!」
怒ったムランが襲いかかってくる!
頭をつかもうとすると上手く逃げ、手に絡まってきた! そのまま捻りつぶすつもりか?
空いた手でデコピンしようとすると一本の触手で邪魔してくる。やるな!
「やめなさい!!」
メイディに怒られ、動きが止まる。ムランは俺をひと睨みすると、しぶしぶ離れた。
「……静かに」
「ごめん、メイディ」
いったんお茶を飲み落ち着く。はー。
「……話して」
いきなりこれ。なんか主語とか抜けてるよね? だんだん、この人との付き合い方がわかってきた気がする。
とにかくメイディに俺達が出会った切っ掛けから、この世界に来た経緯を説明した。
ムランは口出しすることなく聞いていた。つか、お前は当事者だからな?
話しの途中、メイディはあきれたような、困惑するような表情をしていた。理解できたか?
「と、いうわけで今にいたるのさ」
「……信じられない」
メイディは目を見開いて俺とムランを交互に見る。そりゃ、俺だって最初は信じられなかったからな。
「師匠! 気持ちはわかるが現実なんだ。そして魔法を教えて欲しい!」
「……置いといて。証拠は?」
証拠かぁ。そんなのあったか? あ!
財布を取り出し免許証を見せる。
「これは俺の国の身分証明みたいな物かな? ギルドのプレートみたいな」
俺の手から免許証をひったくるとメイディはマジマジと観察している。
「ムラン。あの武器を見せたら?」
「あ! ホント、たまに気がつくなヨシオ」
余計な一言をのべて、ムランが後ろからリモコンを取り出しメイディに見せる。
リモコンを受け取り免許証と両手に持ち観察するメイディ。大丈夫かな?




