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桜咲く頃

「構ってくれなきゃやー!」

「わかったから、お腹の上で暴れるのだけは辞めて!」

現在俺の腹の上で、地団駄を踏んで暴れまくる妹こと、唯智華は元々薄ピンク色の頬を真っ赤に染め上げ膨らましている。

「わかった、わかったから」

「ほんと?」

「お、おう。明日構ってやるから、学校終わったらだけど。」

「ほんと!?」

その言葉に、目を輝かせて顔を近づける。

「とりあえず起き上がれないから、そこどいてね」

「じゃあ、じゃあさ!2人でカラオケ行こうよ、よ!」

「あの・・・唯智華さん・・・?お家でゴロゴロするのはダメなんですか?」

「構ってくれるって言ったよね、ね?」

なんだか、唯智華の後ろから「ゴゴゴゴゴ・・・」と太文字で出てきそうな雰囲気が漂う。

正直言ってカラオケ自体は嫌ではないんだが・・・妹の前で歌う曲なんてないし、そもそもこの年になって妹と2人でカラオケって言うのもなんだが気恥しい。

ていうか妹の前とかで歌歌うのって恥ずかしくない?ねえ?

などと、一人で自問自答を繰り返すが、仕方がないと決意し行こうか!と返事をする。

「やったー!にぃ大好きちゅっちゅー!」

「うわ!やめろ、ちょ、唯智華!」

両手を広げて、飛び込んでくる唯智華。ふざけてキスを使用と唇を伸ばして来るが、俺は断固拒否して顔を全力で押し返す。

「興奮しすぎだ!」

そういい、唯智華にチョップをくり出すと「いたっ!にぃが怒ったー!」と言い部屋から飛び出る。

「はあ、一体何歳だよ・・・あいつは」

そう呟くと扉の向こうから、元気な声が聞こえてきた、

「ママー!にぃにが結婚してくれるってー!」

「ちょっと待てやぁぁぁぁぁあ!」


一夜開けて翌日

寝坊をしかけて、朝ごはんを抜きダッシュで学校へと向かう。

事故も何も無く、校門へ到着するとそこに立っていた先生に1分差で遅刻認定をされた。「くっそー、ついてないなあ」と呟きながら朝礼中の教室へと入る。

ガラガラガラと音を立てる扉、そしてそれに反応しクラスの全員がこちらへと目を向ける。

(この瞬間が地味に嫌なんだよな・・・)

そう思いつつ「おはようございますー」と頭を軽く下げ席へと向かった。

席が少し離れている、鈴森の方へと目を向けると「恥ずかしーーー」と笑いながらこちらを見ている。すかさず俺はフンっと頰杖を付き窓の外を見つめた。

朝礼が終わり皆が伸びたり、席から立ち友達の所へと動き始める。この瞬間の一斉に動き出す椅子や机の音は割と好きだったりする。

「おい、なんか顔やつれてねえか?どうした遅刻マン」

「勝手に遅刻マンにするな、昨日ちょっと寝不足でなあ」

「あ、もしかしてゲームのやりすぎか?おいおいどハマりじゃん。」

「ちげーよ、それもあるけど。妹が心配なんだよ」

「なーんだ、そんな事か。」

「そんな事とはなんだ、そんな事とは」

走行してるうちに、早速一時間目の授業が始まる。

(今日は早く帰ってゲームしよう)

と心に決め、鐘の音がなり始める。


そして昼休みの出来事だった。


ドンッ!

扉が思いっきり開かれた音が、教室中へと響き渡る。

全員がその方向を見ると、隣のクラスの男の人がまるで、軍兵達が窮地に責められたと報告に駆けつけてくる、報告隊のような勇ましい剣幕をしていた。

「おい、お前ら・・・」

名前は分からないが、多分割と顔のしれてる人なんだと思う。

静かに放ったその言葉に、友達であろう人たちが集まってきた。

「どしたの、喧嘩?」

「なんかやらかしたん」

「ていうか誰よ」

などと有象無象の声が湧き出す。

「いや、違うんだ。むしろ朗報・・・?」

その言葉にざわざわと教室が湧き出す。

「いいか、よく聞け。」

ごくんと皆が生唾を飲むと、真剣に聞き入れようと一気に静まり返る。

「なんと、今度の桜まつりに橘 苺恋ちゃんがくるんだ!」

俺は「・・・は?」と理解出来なかったが、周りの人達は「「うおおおおおおおお!!!」」と叫んだ。

流石に橘 苺恋という人は知っている。ちょくちょくテレビで見ていたし、濃綺さんが鏡の前で取っていたポーズが、その人のポーズだと言う事にも気づく位には知っている。ただ、そこまで湧き上がる理由が分からない。

そう思い、鈴森へ問いかける。

「なあ、何で皆こんなに騒いでるんだ?」

そう聞くと、鈴森の顔が一瞬で青ざめたのが目に見えてわかった。

「は?おま、いちごたそ分からないの!?」

「いちごたそってなんだよキモいなっ!?」

「あーこほん、失礼しやした。苺恋ちゃんは今一番人気のアイドルで、人当たりもよく家事スキルも凄くて、ぜひ彼女にしたいランキングと結婚したいランキングの女性部門で二冠とった人なんだぞ!」

「へ、へ〜・・・。」

ついていけないわ、と心の中でつぶやき盛り上がってるクラスを見る。

まあ、楽しそうだしいっか!とまた外を見つめ直すのであった。


にしても桜まつりかあ、弘前城でやるんだよね・・・

そう思うと、何故か懐かしいような気がしてくる。ゲームの話だが、まだ弘前城の城主になって数日しか経ってないのに、色々あったりして長い日々を過ごしたような感覚が身を包む。

大体桜まつりは、GWに合わせて開催されるのだが・・・今回は桜が咲く時期が早く、GW前に開催されるという予想がされている。

あのゲームでは、今ほど桜が植えられてなかったと思う。

桜は死体を隠すために植えたという説もある、それが本当なら弘前城は沢山したいが埋まってるんだろうなと考えざる負えなかった。

当時の人たちはどういう思い出桜を植えたのだろうか、単に隠す為なのか、それとも桜で飾って上げたかったのか・・・。

どちらにしても、本当だったら悲しい事実でしかない。

そして昼休みが終わる鐘の音が、校内を響き渡るのであった。

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